顔文字をビジネスメッセージに

今年もエープリルフールRFCの季節がやってきた。今回は先日発行されたRFC5841を紹介しつつ、その背景にある顔文字の利用について考えてみたい。

RFC5841「パケットの感情を伝えるTCPオプション」

今年発行されたエープリルフールRFCは、RFC5841「パケットの感情を伝えるTCPオプション」 (TCP Option to
Denote Packet
Mood)である。元来データを淡々と伝送するべきTCPパケットに、その内容に応じた「感情」を付けたらどうか、という提案になっている。

TCP のオプション番号は IANA で採番されているが、使われなくなった 25
番を使って、感情を表す「エモーティコン(emoticons)」(いわゆる顔文字)をパケットに付ける、というのがその仕組みである。感情としては、「幸せ」「悲しみ」「怒り」「無関心」など12の例を挙げており、パケット毎に次のような感情を付与すべきであるとしている。

  • 幸せ: ACKパケットが 10ms 以内で返ってきた場合
  • 悲しみ: パケットの再送が20%以上の場合
  • 怒り: ACKパケットが返ってこない場合の再送パケット
  • 無関心: リセットパケット

テキストメッセージで感情を伝えるには

インターネットでは古くから、メッセージに感情をどのように付与するかは重要なテーマであった。メールは典型的な例だが、例えば電話と比較すると、声という要素がないために感情が相手に伝わりにくい。相手が怒っていることをとらえきれずにクレーム対応が後手に回るなど、コミュニケーションギャップが業務上の問題に発展することもよく起こる。

このようなテキストによるコミュニケーションギャップは、ビジネスメールの書き方などのハウツー本に必ず書かれている事項だ。だが、それを防ぐ手段として、顔文字を使うことは決して推奨されていない。不真面目だと受け取られるのを防止するのがその理由だ。一方、プライベートで使うメールでは、積極的に顔文字を使おうとする風潮がある。特に携帯電話のメールの場合、文字だけだと素っ気ないと感じる若者が多いようだ。

インターネット黎明期に考え出された顔文字も、今ではTPOをわきまえて使い分けるというマナーが定着した。しかしそうしたマナーも、昨今のTwitter
の普及により変化してゆくかもしれない。企業によるTwitterの利用は、広告や顧客サービスの一環として定着してきているが、そこでの表現はまだ硬く、ビジネスメールと同じルールに縛られている。しかし、140文字という制約の中で感情を伝えるのに、顔文字はかなり効果的だ。今後は
Twitter を中心に、ビジネスでの顔文字利用も増えてくるのではないだろうか。

マルチメディア vs 顔文字

マルチメディアを使えば感情など容易に伝えられるという考え方もある。例えばメールではなく、ビデオチャットをすれば、相手の表情が判るからコミュニケーションが進みやすい、という考え方だ。また、日本ではあまり利用されていないが、ボイスメールという手もある。怒りを含んだ口調で語られれば、誰が聞いてもそれがクレームであることは判るだろう。

しかし、マルチメディアの難点は、情報の授受にコストがかかる点だ。データ量の点から言うと、昨今のネットワーク事情からかなり解消されているが、やはり出張先などでモバイル利用している際には、マルチメディアデータの利用は厳しい。さらにいうと、ビデオにせよ音声にせよ、それを見聞きする際に時間がかかる点は問題である。テキストメッセージのように斜め読みするのが難しいので、受け取る側でも時間がかかってしまう。

その点、テキストメッセージはデータ量も少なく、さらに検索技術も進んでいるので、大量のメッセージを受け取っても、効率よく情報を受け取ることができる。課題である「感情」の表現については、積極的にメッセージ内に埋め込むようにすれば、それに合わせた検索も可能になるだろう。

顔文字は各国で様々な発展を遂げており、特に日本ではアスキーアート(AA)と
いう独特な文化を形成している。しかし、メッセージに感情を込める手段として顔文字を使うのであれば、複雑な顔文字やAAは避けた方が賢明だろう。特にビジネスメッセージにおいては、万国共通の顔文字を利用することが望ましい。