今年もエープリルフールRFCの季節がやってきた。今回は2つ出されたようだが、そのうちの一つ「ルーティング領域の草案におけるモラルに関する記述に対する要件」を読みながら、モラルについて考えてみよう。
RFC4041
今年のエープリルフールRFCは 4041 と 4042 の2つだが、「RFC4041 ルーティング領域の草案におけるモラルに関する記述に対する要件(Requirements for Morality Section in Routing Area Drafts)」は大変興味深い。RFC を記述するにはいくつかの決まり事があって、例えば「セキュリティに関する考察(Security Considerations)」という章がすべての RFC に付けられている。RFC4041 では、これと同じように、「モラルに関する考察(Morality Considerations)」という章を RFC の決まり事として採用しようと提言している。
特に「ルーティング領域」に関心を示していて、例えば新しいプロトコルが開発されたり、既存のプロトコルが拡張された場合に、それらがインターネット上のモラルにどれくらいのインパクトを与えるのかといった考慮に欠けている場合が多いと言っている。その結果、そのプロトコルが作られた後では、モラルに気をかけることが少ないので、RFC にきちんと記述しておくべきだと主張している。
モラルを誰に求めるか
RFC4041 では、RFCの著者に「モラルに関して考察すること」を求めているわけだが、ある意味で昨年紹介したエープリルフールRFC「RFC3751 全知プロトコルの要件(Omniscience Protocol Requirements)」と似ていておもしろい。なぜなら、インターネットの世界では常に「個人」にモラルを求め、個人が責任を持つことを推奨しているからだ。これは、インターネットが元々P2P(Peer to Peer)の通信を原則として発達したためだと思われる。あらかじめ組織ありきではなく、個人の集まりとしてのインターネットなのである。
こうした考え方は、インターネットの世界だけでなく、我々が生活している実世界でも適用可能である。社会システムとしてモラルを保つだけではなく、個人が常にモラルについて考え、それに従って行動することが、成熟した社会に暮らす人たちに求められるわけである。
今年の4月からいわゆる個人情報保護法が施行され、社会システムとして個人情報を守る仕組みができた。会社組織としての対応を求めているわけだが、個人がモラルを守ることによって個人情報が守られる社会こそが理想的な姿である。
本文中のリンク・関連リンク:
- RFC4041 ルーティング領域の草案におけるモラルに関する記述に対する要件(Requirements for Morality Section in Routing Area Drafts)
- RFC4042 UTF-9 と UTF-18 ユニコードの効率的な変換フォーマット(UTF-9 and UTF-18
Efficient Transformation Formats of Unicode)
現在のコンピュータが使っている8ビット単位ではなく、9ビット単位での処理系で効果的に扱える文字コードの変換フォーマットを提唱している。 - Take IT Easyで紹介したエープリルフールRFC