ブロードバンド、何に使ってる?

総務省の発表によれば、ブロードバンド(xDSL,CATV,FTTH)ユーザは500万を超えているそうである。 また、個人向けブロードバンド環境は世界で最も安く手に入るという 調査結果も発表されている。これまで支払っていたISPの接続料金と通話料とほぼ同じ金額で深夜に限定されていた使い放題のサービスに変わり、 ブロードバンドかつ常時接続環境が実現できる。

ブロードバンドユーザは確実に増えているが、一体に何に使っているのだろうか。 常時接続性を生かして、 WEBやメールを頻繁に使うようになっていることは間違いないだろう。 また、ダウンロードにかかる時間が短くなり、待ち時間が減ることは確かに利点だ。 しかし、広帯域という特性を生かした使い方はあまりされていないのではないだろうか。 実際、回線のスループットを測定することが主な目的だというという笑えないアンケート結果もある。

キラーアプリケーションは?

IP電話はキラーアプリケーションであることは間違いないが、 遅延を無視すれば100kbpsもあれば十分高音質な通話が可能であろう。 数Mbpsもある帯域にはまだ十分余裕がある。 そこで、数千円で購入できるUSB接続のカメラがあれば、 Windows Messanger やYahooメッセンジャーなどを使って PC-to-PCのテレビ電話やテレビチャットも実現できる。 また、ダイアルアップ環境では見る気にもなれなかった、 オンラインショッピングも多少画像が多くても操作性がよければ、 十分実用的だ。 さて、ビジネス的には以前から有力視されているコンテンツ配信はどうだろうか。

VOD(Video on Demand) の挫折

実は、5年以上前にも似たような状況があった。 FTTHのあり余る帯域をどう使うかという研究開発の一環として、 NTT、マイクロソフト、タイムワーナーなどが共同して、 横須賀などでVODの実験が行われた。 その際には、専用の端末を用意して、映画や音楽配信をしたのだが、 高画質である以外にはレンタルビデオと大差ないのでは、 特別にお金を払って見ることはないという結果が出ていた。

確かに、当時はインターネットはそれほど一般的ではなかったし、 CS放送も一般には受信できなかったため、そのような評価になったとも言える。 しかし、現在のインターネットやFOMAでの映像配信に対する 一般的な評価は似たようなものではないだろうか。 特に、現状の高額な回線使用料を払ってまで有料のコンテンツを見るとは考えにくい。

P2Pの盛隆

コンテンツ配信の低迷とは裏腹に、ブロードバンド化が進むにつれ、 音楽CDから作ったMP3ファイルの交換が大流行している。 その対策のために作られたCCCD(Copy Control CD)は 厳密に決められているCDの規格を逸脱しており、 購入したCDが再生できない、音質が悪いなどの新たな問題を引き起こしている。

こうした現象は、MP3がCDの音質を比較的劣化が少なく1/10程度に圧縮できたことで、 簡単にネット越しコピーできるサイズであることが原因であろう。 また、新作が出ればすぐに流通するという状況はまさにオンデマンドだ。 最近では、 ギガバイト単位の映画やアニメなどの映像ファイルがやりとりされていると聞く。 確かにブロードバンドとしての非常に有効な利用方法である。

もちろん、これらの行為は著作権という観点から許容できることではないのは いうまでもないことだが、 それだけ映像や音楽コンテンツの需要があることを示している。

地上波テレビ放送を超えられるのか

実質無料で見られている地上波放送がある限り、 映像コンテンツ配信ビジネスはうまくいきそうにない。 同様に、Webコンテンツが無料であることにも慣れてしまっている。 もちろん無料で続けられるものではないことは、 著作権や設備の点からも明らかである。 番組ひとつで1回で数百円というような課金方法は、 ユーザの負担感や課金にかかるコストを考えると、 特殊なコンテンツ以外にはあまり成功していないようだ。 さらに、お金を払ったのにきちんと見られなかったユーザを救済するのは難しい。 となると、現在のテレビのチャンネルに相当する月間アーカイブを 月々1000円程度で何度でも見られるようにするのが正しい戦略なのではないだろうか。

P2Pによるデータのやり取りを単純に悪と決めつけているだけでは進歩がない。 逆に、無料で放送している地上波をそのまま配信して、 自由に流通させてしまうのはどうだろうか。 特に、海外や地方に住む人にとって 放送されていないドラマやニュースを見たいという要望は意外と多い。 ただし、これだけでは費用負担を広告収入に頼ることになるため、 CMをカットされないようにするなどの何らかの対策が必要になるだろう。

テレビを見る時間が減っていることを考えるとブロードキャスト型の 映像配信が流行るかどうかは、 適当な価格かつコンテンツが魅力的であることが最低限の条件であり、 加えて、ハードディスクレコーダに連動したり、 DVDやテレビを見るのと同じように簡単に扱えるようになるかどうかに かかっているのではないだろうか。