DSL の加入者数が伸びている。 昨年12月末で加入者数は、約152万回線となり、 CATV を越え、国内の高速通信ではもっともポピュラーな方式となった。 一時は、光ファイバーが整備されるまでのつなぎ役でしかない、 という見方もあったが、8Mbps といった高速化の実現、 Yahoo!BB の参入により火がついた低価格競争、 少なくともあと数年以上かかる FTTH 計画に比べて急速に全国展開が行われたこと、 などが普及の大きな要因であろう。
気になる実効速度
かくいう我が家でもこの 1月に ADSL (8Mbps) を導入した。 CATV や光ファイバなどのインフラがない(いなかの)我が家にとっては、 ADSL は高速化の唯一の手段であった。 とりあえず体感速度は速い。 今までのダイヤルアップでは到底やる気が起きなかった大容量ソフトのダウンロードも快適である。 ストリーミングも軽い。 9600bps や 54Kbps でのダイヤルアップ接続が長かった私にとっては、 月々3000円未満で数メガビットクラスが手に入るとは、まさに隔世の感がある。 電話料金の高さがインタネット普及を阻害している、といわれたものだが、 少なくとも高速回線についていえば、世界をリードする安さだ。
さて、料金が安いのは結構なことだが、ブロードバンド接続をして最も気になるのは、 果たしてどのくらいの実効速度がでるのか(でているのか)、 といったことである。8Mbps の ADSL でも状況によっては ISDN より少し速い程度(200〜300Kbps 程度)しかでない、などという話も聞く。 最も影響があるといわれているのが、電話局との距離(線路長)である。 特に、8Mbps の ADSL 規格である G.dmt 方式では、 2km を越えると急激に速度が低下するといわれている。 (参考 : アッカの評価結果 、 「ブロードバンドスピードテスト」の統計情報)
わが家の場合、 最寄り電話局より、推定線路長で2km以上離れているため、 どのくらいの実効速度がでるのか心配されたが、 いくつかの実効速度測定サイト(下記リンク参照)で測定したところ、 平均で2〜2.5Mbps 出ており、線路長を考慮すればおおむね良好な出来である。
安定しない速度品質
さて、私の場合はまずまずの結果が得られたわけだが、 事業者別のスループット分布を見ると、 同じサービスでもかなりの速度の差が見られることがわかる。 たとえば Yahoo!BB では、 8Mbps のサービスでも20%近くが 500Kbps 以下となっている(※)。
※ これは、 線路長による分布を見ればわかるように、 Yahoo!BB では、2km 越えの加入者が相対的に多い。 このことも要因の1つと考えられる。
せっかく一大決心をして、ブロードバンドを導入しても、 ほとんど速度がでないとなると、これはかなり悲しい。 実効速度は、さきにのべた線路長のほか、 ISDN との干渉やその他の家庭内機器や電話線の配線具合の影響、 また、端末側の TCP/IP の設定など、 さまざまな要因により影響をうける。 このため、導入前に自分の環境でどの程度の速度が出るのか、 正確に把握することは困難である。 とはいえ、できることなら、導入までにせめて大体の目安を知りたいものである。
NTT 東日本では、 アナログモデムからのダイヤルアップ接続により、 ADSL の伝送速度を推定するシステムの実験を 2月12日から開始すると発表した。 ただし、これも推定値に過ぎないので、 今後、推定値と実際に導入後の数値を解析し、 より精緻な推定が行えるように精査していく必要がある。
ADSL 事業者に望むこと
ADSL は今後どのようになっていくだろうか。 今後ブロードバンドコンテンツが充実してくるにつれ、 8Mbpsでは物足りないという局面もでてくるだろう。 有線ブロードネットワークスなど、 一部の事業者で、コンテンツとセットにした100Mbps のサービスも出始めている。 しかし、一般の WEB サイトでは、 ここまでの広帯域を必要とするコンテンツ、 特にキラーコンテンツと呼ばれるものはほとんどないといってよい。 ADSL である程度の速度がでれば、 通常のインターネット使用で不便を感じることはないし、 インターネット電話への期待も大きい。 既存の回線インフラがそのまま使えるなど利点も多く、 現状では当面 ADSL が主流となることは間違いないだろう。
急速に拡大した ADSL は、事業者の体制や設備が追い付かず、 さまざまなトラブルも発生している。 こうした点は今後次第に改善されていくものと思いたいが、 アナログ技術である ADSL 自体は、本質的に外部環境の影響を受けやすいなど、 安定した品質保証は最終的には期待できない。 速度面や安定性の向上も含めて今後の技術改良を望みたいが、ある程度の限界もあろう。 ユーザ側の過度な期待も禁物だが、 事業者側にも、新規加入の際の想定される速度範囲や 速度を向上させるためのハウツーなどの情報公開が一層求められる。 日本が今後ブロードバンド先進国となるためには、 誰もが手軽に、また安全にブロードバンドの恩恵を享受できなければならない。 セキュリティ、コンテンツの問題のほか、 線路長が 2km を越える加入希望者に対する代替案の提供など、課題も多い。 価格面だけでなく、今後はサービス面での向上も期待したいところだ。
本文中のリンク・関連リンク:
- DSL 関連統計データ
- インターネット接続サービスの利用者数等の推移【平成14年1月】(総務省)
DSL 加入者は1月末時点で178万人 - DSL 普及状況公開ページ(総務省)
- インターネット接続サービスの利用者数等の推移【平成14年1月】(総務省)
- ブロードバンドの実効速度を測定するサイト・ソフトウェア
- ブロードバンドスピードテスト
あらかじめきめられた2つの測定ホストとの3秒間のスループットの 算術平均により、速度を測定。その他、統計情報など。 - Broadband Networking Report
大手プロバイダー6社のサーバを用いて、データ転送速度を計測 - インターネット回線速度調査
- Oso’s Modem Site
- Line Speed Tester
インターネット接続スピードを測定するベンチマークソフト。 2つのファイルの差動測定により、接続先サイトの影響を極力排除。
- ブロードバンドスピードテスト
- 有線ブロードネットワークス
- Yahoo! BB
- Take IT Easy 「そろそろ使えるインターネット電話」(2002.01.22)