ネットワーク・ゲームの人気と裏側

ここのところ、ネットワーク・ゲームが人気を集めている。 ネットワーク・ゲーム自体は10年近く前から存在しているが、 ブロードバンドの普及と、家庭用ゲーム機向けのゲームソフトが登場したことで、 新たなブームとなっている。 先日発売されたFINAL FANTASY XIは、 既に9万本以上が販売され、 4万人以上が登録を済ませているという。 はまる人は1日中遊んでしまうほどのネットワーク・ゲームだが、 なぜここまで人気があるのだろうか?

人気の秘密

ネットワーク・ゲームが人気を集める最大の理由は、 人間が対戦相手や対戦仲間であるためだろう。 従来はコンピュータが敵であったゲームだが、 通信環境の向上にともなって、 離れた場所同士での多人数による同時プレイが可能となり、 ゲームの遊び方に深みが増したのである。 たとえば、複数の参加者が操るキャラクタ同士でパーティーを組み、 現れる敵や他のパーティーと戦うスタイルは、 今までに見られなかった遊び方である。 参加者によるチャットでのコミュニケーションも、 その一つだと言えるだろう。

もちろんゲーム本体の完成度も高い。 ネットワーク・ゲームの主流を占めるロールプレイング・ゲームでは、 現実世界と変わらない仮想世界が作り上げられている。 利用者は自分のキャラクタを操り、その仮想世界の中で、 実世界とは異なる生活を送る楽しみがある。この構造が逆転して、 ゲーム内のアイテムやキャラクタが、 実世界のオークションで取り引きされるケースも起こっている。

人気の裏には問題もある

このように人気のネットワーク・ゲームだが、 遊ぶための料金がかかるという事実を忘れてはならない。 FINAL FANTASY XIでは、ゲームソフト本体は7800円であるが、 その他に毎月の利用料が1280円かかる仕組みになっている。 今までのゲームソフトが売り切り制だったのに比べると、 これは大きな違いである。 センター・サーバの運用・管理のためにコストがかかるとはいえ、 利用者には気にかかる問題だ。

もう一つ忘れてならないのは、 あまりの人気にセンター・サーバ側の設備や通信環境が追いついていないという問題である。 残念ながらFINAL FANTASY XIでも、 既に多くの障害が発生している。 また、サーバ側のセキュリティ・ホールを突いて、 キャラクタ・データの書き換えも行われているという。 稀にしか手に入らないアイテムでも簡単に入手できてしまい、 ゲームバランスも崩れるため、メーカ側は厳重な対策を迫られている。

このように、ネットワーク・ゲームでは、 センター・サーバの運用・管理を切り離しては考えられない。 また、毎月の利用料金がかかるために、常に新しい要素を盛り込んでいかないと、 利用者が飽きて離れていってしまうという不安も抱えている。 したがって、メーカ側ではこれらの問題に対応するために、 多くのリソースが費やされているに違いない。

メーカ側の論理

このように問題を抱えつつもネットワーク・ゲームが流行る背景には、 利用者側の期待やブロードバンド環境の普及という以外に、 実はゲームソフト開発の行き詰まりがあるのではないかと思う。

新しいゲーム機は毎年続々と登場するが、ゲームソフト開発環境は扱いにくいものが多く、ゲーム機本来の性能を発揮させるためには高度かつ緻密なプログラミングが必要となる。また、既に多くのゲームタイトルが販売された結果、ゲーム市場が飽和状態に達しており、画期的で面白いアイデアも生まれにくくなっている。

その一方で、違法コピーや中古ソフト市場の台頭により、メーカの利益が失われ、新規タイトルの開発費が確保できないという点も見逃せない。メーカ側は、旧作を廉価販売して対策を図っているが、根本的な解決には至っていない。

これらの行き詰まりを打開するには、ネットワーク・ゲームは格好の拠りどころだったわけだ。メーカ側からすれば、利用料金による毎月の安定した収入が見込めるため、とても良いビジネスモデルだろう。

過信は禁物

さて、我々はどうするべきか。確かにネットワーク・ゲームは面白い。新しいゲーム機やタイトルばかりに目を奪われず、一つのゲームに腰を据えて取り組めるのもいい点だろう。

ただし、過信は禁物だ。メーカの戦略に踊らされること無く、ネットワーク・ゲームを楽しんでいきたいものである。