ROBODEXに見る近未来ロボット事情

ROBODEX2002に行ってきた。 話題の SDR-4XASIMOHRPPINO といった二足歩行ロボットを間近で見ると、 ついにここまで来たかと改めて感慨深いものがあった。 いかついガードロボや地雷除去ロボットを見た後に、 癒し系の Q.taro、PARO、 Posy にはホッとする。 ロボットの完成度は年々向上し、今にもロボットが歩きまわる生活が始まるのではないか、 という錯覚さえ覚えかねない。 しかし、実用レベルは少し先だというのも出展者の一致した意見であろう。

次なるエンターテイメントロボットの行方

ソニーはエンターテイメント・ロボットに賭けると言っている。 既に十数万台の AIBO が販売され、 玩具メーカからは数千円のオモチャロボットが数多く発売された。 ペットロボットは一つの市場として確立されつつあるように見える。 しかし、一時の熱狂的なブームは醒め、売上げ増に苦心しているとも聞く。 人間型二足歩行の SDR-4X が発売されたら、また大ヒットとなるだろうか?

エンターテイメントロボットの中心機能は当面二つありそうだ。 一つは『触合う』『対話する』『癒す』といったコミニュケーション要素である。 バンダイの BN-7、 トミーの MUTSU、 ソニーの Q.taro は、 ロボットとの新しい触合いの形を予感させてくれる。

もう一方は『鍛える』『戦う』『操縦する』といったロボット対戦的な要素である。 タカラのドリームフォース01 やツクダオリジナルの PINO は、 今のところ動きにチープ感が否めない。 とはいえ、いずれ登場する進化型 PINO や SDR-4X クラスの性能を持つ リモコンロボットの原型を見ることはできた。 いずれも今後の技術進展に従って、リアルな対話や動作が実現すれば、 爆発的なマーケットを築くことが十分予想されるだろう。

実用化間近の警備ロボット

ROBODEX では華やかなエンターテイメントロボットに注目が集まったが、 他にも実用化の方向性を占うロボットが展示されていた。

まずは、総合警備保障のガードロボC4型である。 ビルを自動巡回し、火災や侵入者をセンサで検知する。 何かあれば監視センタに画像を送り遠隔操作することもできる。 20年の研究を経てガードロボC4型はついに発売される。 松下の掃除ロボットと並ぶ本格的な実用ロボットである。 コスト面でも人間の警備員を脅かす日も近いかもしれない。

警備ロボットでは、 他にホームユースの番犬ならぬ番龍ロボット T7S Type1/2 があった。 こちらは見た目はファニーだが、実用性では今一歩である。 留守番用ならキャタピラが現実的とは思うが、歩行にこだわるのが日本流である。 2〜3年後なら階段も登り降りして、実用化できるだろうか。

接客ロボットは産業応用の突破口となるか

産業ロボットの本命はもちろん警備ではない。 産業技術総合研究所の HRP-1/2 にその一端を垣間見た。 HRP-2 はほぼ完全体の二足歩行ロボットである。 単に歩くだけでなく、 留守宅管理、建設機械の代行運転、プラント保守・点検など、 いくつかの応用プロジェクトが進行している。 この中で筆者が最も重要と感じたのは介護サービスである。 デモでは食事の受け渡しや話しかけをするに過ぎなかった。 だが、対人サービスにおいて、 人の温もりは何者にも代え難いけれど、 ロボットで十分なシチュエーションも現実には多い。

ホンダの ASIMO ブースでは近未来のイメージビデオを上映していた。 そのビデオの中にホテルのコンシェルジェやレストランのウエイターをしている ASIMO の姿があった。 最初はデモ効果も狙った遊園地やショールームに導入されるケースがほとんどだろう。 しかし、技術の進歩や量産効果によって価格が下がれば、 いろいろな接客業でロボットが活躍できる可能性は高い。

ファーストフードの接客ならば、 注文を受ける、ハンバーガーと飲み物を取りにゆく、 お盆に載せる、お金を受取りおつりを渡す。基本的にはこれだけである。 限定的な実用化なら3〜5年で不可能とは思えない。 全部が難しいなら行列したお客さんの注文取りだけをロボットに任せてもいいのである。 ある程度の機能が確立されれば、本質的には値段の問題になる。 すると接客ロボットに足りないのは、スマイル¥0だけということになるのだろうか。