アトム派とガンダム派、 ロボット大国日本に二つの流派があるのは有名な話である。 35歳以上のロボット研究者にはアトム派が多いのだが、 最近はガンダム派が主流だとか。
鉄腕アトム派とガンダム派
完全自律型の 鉄腕アトムは長らくロボット研究者の夢であった。 ホンダの人型ロボットP3がゆっくりしかし確実な二足歩行を見せたとき、 世界のロボット研究者に衝撃が走った。確かに一つの壁を突き抜けたのだ。 その後ASIMOやAIBOなど完成度の高い自律型ロボットが次々と登場した。 見て楽しむロボットではなく、実用的な自律型ロボットへの期待が高まっている。 その究極の姿は今話題の 「A.I.」であろうか。
一方、人が中に入ってロボットを操作するガンダム型については、 まだ現実的なロボットは登場していない。 しかし、ガンダム派の前身であるリモコン動作の鉄人28号は、 早くから現実世界にロボットハンドという実績を残してきた。 人間の腕と同じように物を掴み、機械を組み立てる産業用ロボットである。 このタイプのロボットハンドは、工場の中だけでなく、 人が直接触れない宇宙・深海・原子炉などの場所で既に大活躍している。
介護・福祉に活路を見いだすガンダム型ロボット
しかし、人が入るあるいは装着してこそガンダム型であろう。 ガンダム型ロボットは通称パワードスーツとも呼ばれるが、 正確にはパワーアシストロボットという。 人の腕の動きに従って操作できるだけなく、 自分より重い物を持ち上げる強化型であることが特長である。 ただ、残念ながら現在のロボットアームはあまりパワーが出ない。 人間の筋肉ほど効率のよいモーターがまだ開発されていないからだ。 動力源も問題だ。電池では重すぎるし、エンジンは排気ガスが汚い。 重量物を持ち上げようとすると巨大な装置になり、 自由に移動したり、人間が装着することができない。
そこで最近注目されているのが、 高齢者の自立や介護を支援するパワーアシストロボットである。 これには二つのタイプがある。 一つは弱ってきた身体でも日常生活が不自由無く送れるよう、 自分自身に装着して力を補強するタイプである。 これならパワーは小さくとも十分に役に立つ。 腕に取りつけて食事や読書などちょっとした手作業を補助したり、 下半身に取りつけて歩行を手助けする研究が行われている。 パワーアシストのもう一つの役割は、 介護する側の抱き起こしや移動を支援するものである。 人間は結構重い。 10kgの力で50kgを持ち上げる腕というのは、 まさにロボットは道具であるという発想である。 ポータブルな抱きかかえロボットアームなら、そろそろ実用化レベルにあるようだ。
ウエアラブルロボットの時代は来るか
パワードスーツはウエアラブルロボットという見方もできる。 必要な時に必要な身体機能をパワーアップする。そんなアイテムならば双眼鏡と同じである。 もちろん役にも立つが純粋に楽しそうだ。 スポーツもエキサイティングになるだろう。 パワードレッグで北アルプス縦走もいいし、 パワードアームで400ヤードワンオンにトライするのもいい。
ASIMOを連れて散歩するか、 パワードスーツで疾走するか、 未来のロボットはどちらが魅力的だろうか。 まずは自律型「PINO」と ラジコン「ザク」で比べてみよう。 でも、やっぱり「PINO」に惹かれてしまう私はアトム世代だ。
本文中のリンク・関連リンク:
- 誰もが夢見た完全自律型ロボット 「鉄腕アトム」
- 典型的パワードスーツ系アニメ 「ガンダム」
- 究極の癒し系(?)人型ロボットで話題の映画 「A.I.」
- 自律型二足歩行ロボット 「ASIMO」 (ホンダ)
- 肘運動補助用外骨格型ロボット (佐賀大)
- 手の動きを支援する ロボット装具 (立命館大)
- 下半身パワーアシストシステムHAL (筑波大)
- 介護用装着型ヒューマンアシスト・ロボットのHARO (電機大)
- 実用的なパワーアシスト系 介護支援ロボット「レジーナ」
- 「高齢者生活作業支援システム」基本計画によると 国家プロジェクトとしてもパワーアシスト機器の開発が始まった (NEDO)
- 北野共生プロジェクトが開発した 「PINO」 はツクダオリジナルから今秋発売予定 (asahi.com 2001/6/29)
- 東京おもちゃショーで発表されたバンダイの ラジコン「ザク」も年末発売予定 (ZDNet 2001/3/22)