ロボットが動き回る生活

「うちのポチが見当たらないけど、どこ行ったんだ。」
「最近ちょっと目を離すといなくなっちゃうの。
  でも、お腹すいたらちゃんと帰ってくるから大丈夫よ。」

昨年夏の発売から大人気のロボット犬 AIBO。 とても愛敬はあるけど、こんな機能はない。
だが、これがホームロボット実用化への大きなハードルになっているとは、 意外と知られていない。

「ここはどこ」が難しい

自分一人で考えて動き回るロボットを自律移動ロボットという。 自律移動ロボットにとって、まず自分がどこにいるかを知ることが必要だ。
ところがこれが実に難しい。 今の技術ではゴチャゴチャした風景の中に埋もれた目標物が、 まだうまく見つけられないからだ。

筑波大の自律移動ロボット 「山彦」は、 カメラの代りに超音波ソナーで周りを見る。
「山彦」は車輪の回転を数えて自分のいるところをだいたい知っているが、 どうしても少しずつずれてしまう。
そこで、超音波で平らな壁を見つけては、 地図上の壁と照らし合わせて自分の位置を修正している。
これで数百メートルの曲がりくねった道も走ることができるようになった。
目をつぶって、歩数をかぞえて、手探りで校舎を一周して戻ってくるようなものだからすごい。

一人立ちした警備ロボット

「山彦」を応用して開発されたのが、警備ロボット 「ガードロボ」だ。
お台場のフジテレビで火事や水漏れがないか、泥棒がいないか、 毎夜ひたひた巡回しているそうだ。
「ガードロボ」は身長160cmの巨大な円筒形でかなり威圧感がある。 安全のために進路に人を見つけると自動的に止まるのだが、
前に立つのは少々怖かった。

このロボットは巡回から帰ってくると、自分でコンセントにドッキングしてしまう。 たっぷり充電して次の定時の巡回に備えるのだ。
つまり、トラブルがない限り半永久的に動き続けられる。 実際、月単位で動き続けた記録もあり、
本当の意味で一人立ちした数少ないロボットだろう。

放っておけば大丈夫なロボット

勝手に動きまわるロボットで一番怖いのが、人間に怪我させることだ。
そこらにぶつかって家具に傷をつけたり、ロボット自身が壊れてしまうもの困る。 AIBOが優れている点の一つに小さく軽いために、
滅多なことでは人や物に危害を与えないということがある。 それに少々落した位では壊れない頑丈さもあるので、
しばらく放っておいても大丈夫という安心感がとても重要だったのだ。

AIBOより多少は役に立つロボットを作ろうとすると、 この「放っておけば大丈夫」という感覚をいかに与えられるかが、
実用性の分かれ目になりそうだ。 そのためには、

(1)独力で動き回って戻ってこられる移動能力
(2)自分と人間の安全のために障害物を避ける能力
(3)電池切れで止らないように自動的に充電する能力
という三本柱が揃って、はじめて一人立ちしたといえる。

働き始めた移動ロボット達

自律移動ロボットは何をしてくれるのだろうか? 遠く南極火星 で働くロボットもいるが、 オフィス内を案内したり病院で食事を運んだりフロアの掃除をしたりお年寄りの手伝いをしたり、 等々、いろいろと考えられている。
オフィスに一台、家庭に一台、何をしてもらおうか。

ところで、ロボットが周りをうろうろしてたら気にならないのかと、 ロボット研究者に尋ねたことがある。
最初は皆おっかなびっくり避けていたけど、 何ヶ月も経つと誰も気にしなくなったそうだ。
ロボットが動き回る生活もいいかもしれない。

◇自律移動ロボット

  • 自律移動ロボットとは言難いが、一応ソニーの AIBO も半分一人立ちしている。
  • 筑波大学 油田研究室の自律移動ロボット「山彦」シリーズには、 数多くのバリエーションがある。
  • 総合警備保障の 警備ロボット「ガードロボ」はエレベータにも自分で乗れるし、 昼間は音声で館内案内もしてくれる。
  • カーネギーメロン大学の 南極で隕石を探しまわるロボットは最近実際に南極に持ち込まれた(英語)。
  • NASAの火星探査機パスファインダーには 自律移動ロボット Sojournerが搭載されていた(英語)。
  • 電総研の 「事情通ロボット」はオフィスを動き回って、情報を集めて、
    みんなに教えてくれたり、お客さんを案内したりする。
  • 安川電機の 「ヘルプメイト」は看護婦に代って、 食事やカルテを運ぶのが仕事だ。
  • 英国ダイソン社製の掃除ロボット
    DC-6
    は、 約25万円で市販されており、個人向けとしては先駆的製品といえる(英語)。
  • 米国製の 「サイ(cye)」も掃除がメインの仕事だが、拡張性に優れており、
    ユーザがパソコンから指令を送ることもできる(英語)。
  • カーネギーメロン大学の高齢者サポートロボット 「ナースボット」は老人の話し相手になったり、 薬や食事の時間になると知らせてくれる(英語)。