パソコンサポーター体験記

先日、息子が通う小学校の「パソコンサポーター」に参加した。1年生に初めて
パソコンの使い方を教える授業で、児童が困ったときに手助けしてあげるという役
回りである。最近の子どもはパソコンに触る機会も増えているだろうから、「さす
がにマウスの握り方からは教えないんだろうな」と予測はしていたが、先生が手順
を簡単に説明しただけで、ほとんどの児童が自由に絵を描いていたのには驚かされ た。

今回は、2年半ほど前にも取り上
げた
情報リテラシ教育について改めて考えてみる。

授業風景

まず先生が10分ほどでアプリケーション(一太郎スマイル)の立ち上げ方から絵の描き方、印刷の仕方を簡
単に説明した。プロジェクタではなく、19インチほどのディスプレイに映しながら
の説明なので、児童からは「小さくて見えない」などの声が挙がる。児童による実
習は、9台のノートパソコンを使って行われる。児童数が36人なので、ちょうど4人
が1グループで順番にパソコンを操作することになる。

私は一つのグループを担当することになった。最初はなるべく先生が実演した
通りにやらせてみようとしたが、黙って見ていてもすぐに自由に絵が描けるという
ことに気がついた。そこで、「そこの▼を押すと、もっとたくさんスタンプが出て
くるよ」とか、「筆の太さはここを押すと替えられるよ」といった最小限のアドバ イスをするのにとどめることにした。

一番気を遣ったのは時間配分だ。限られた時間内で4人が交代して行かないとい
けないので、切り上げさせるタイミングが難しい。急かしてはいけないと思いつつ
「あとちょっとやったら名前を書いて印刷しようか」と声をかけたが、4人とも素
直に従ってくれたので何とか時間内に4人とも仕上げることができた。

パソコンはやはり単なる道具だった

子どもたちがパソコンを使う姿を見て私が驚いたのは、単純にマウスでダブル
クリックやドラッグといった操作ができることではない。それらの操作に気を取ら
れることなく、普通の紙に色鉛筆やクレヨンで絵を描くのと同じように、自分の好
きな絵をスイスイと描いていたことだ。画面の上の方に飛行機やトンボを置いて、
ブラシで背景を青く塗り、ペンで赤い太陽を描いたりする。また、下の方には家や
花を置いて、背景は茶色にする。こうなると、パソコンの授業というよりも、絵を
描く授業にたまたまパソコンを使ったと言った方が正しいだろう。パソコンはやは
り単なる道具でしかないことを、改めて実感させられた。

1人1台時代への課題

今回の体験を通じてまず始めに考えたのは、「1人1台使える環境だったらどう だっただろう?」ということだ。実際、ミレニアムプロジェクト「教育の情報化」では、2005年度まで
に、小学校に42台(児童1人に1台、教員用2台)の教育用コンピュータを整備するこ
とを計画している。1人1台になれば、ひとりが操作できる時間が増えるわけなので、
限られた時間内により多くのことが学べるようになるだろう。しかし、小学校の授 業となると、うれしいことばかりではない。

今回のパソコンサポーター参加者は10人以上いたため、確実に1台に1人が
サポートにつくことができた。しかしこの体制を維持しようと思ったら、台数が増
えた分だけサポーターの数も増やす必要がある。高学年の場合や授業の形態にもよ
るが、少なくとも低学年が絵を描くなどの表現にパソコンを使う授業の場合、やり
方がわからなくなった時にすぐに教えてあげられる体制が望ましい。

サポーターの必要性の背景には、現在のパソコンの未熟さが根底にある。突然
フリーズして再起動が必要というのは論外だとしても、ソフトウェアの改善の余地
はまだまだたくさんある。今回の授業に使われたソフトは、低学年用に機能を絞っ
たり、メニューをひらがなにするなど、レベルに応じたインタフェースの提供をし
ていてわかりやすかった。しかし、小学校低学年向けの「直感的なインタフェース」
「自習用のガイダンス機能」などが不足していると感じた。

教育の情報化は家庭から

今回私が参加した授業は、とても例外的にうまくいったものなのかもしれ
ない。児童の多くがすでにパソコンに対するリテラシあったこと、サポーターの人 数が多かったことなどがその要因ではないか。

先日三菱総研が発行した「イン
ターネット利用者基礎データ2001」
によると、この小学校がある横浜市青葉区
は、全国一位のパソコン・インターネット利用先進地域であるらしい。つまり、家
庭でパソコンに触れる機会が多く、その結果、児童やパソコンサポーター候補者で
ある親のリテラシが全国的にみて大変高かったのだろう。

このことから考えると、教育の情報化の推進には、学校での機材や環境の
整備だけではなく、家庭の情報基盤の整備が大きく寄与するといえるだろう。児童
とパソコンサポーター候補者の両方のリテラシ向上により、家庭から教育の情報化 を支えることになる。

教育の情報化を全国に広めるためには、家庭の情報化の水準も全国で底上げす る必要がある。幸いなことに、現在推進中の
e-Japan戦略 e-Japan 戦略では、家庭への通信インフラ整備計画の中で、「条件不利地
域における高速インターネット整備」を謳っている。このような国家戦略の後押し
を借りつつ、より多くの地域で家庭レベルの情報化が進むことが、教育の情報化を 成功に導く重要なポイントであろう。