が1月26日、仙台市街地の定禅寺通りにグランドオープンした。 伊東豊雄氏の設計による、50メートル四方、地上7階地下2階のsmtは まるで巨大なショーケースか水槽といった感じだ。 「チューブ」(織り合わせた鋼鉄パイプの束)が 「スキン」(ハニカム構造の薄い床)を支えていて 構造上の柱や壁がまったくない。
smt夜景
仙台市を母体とする財団法人が運営するこの施設が いったい何であるかを説明するのは容易くない。 このため、財団事務局もワークショップなどの プレ・イベント以外に どう広報を行ったらいいのかよくわからずにとうとう開館の日を迎えてしまった。 果たして市民は来てくれるのか。 情報システムの設計、施工管理を担当した私たちも不安だった。
オープン当日、
エスカレータのほかに 4基あるエレベータには押し寄せた市民の待ち行列ができた。 そしてもちろんいまも、評判を聞きつけて来る人と、再度訪れるリピータと、 さらにリピータが「いいでしょ!」と言いながら連れてくる人々で溢れている。
画期的な建物構造は建築界で注目を集め、すでに世界的にも有名である。 この建物のせいだろうか。人々は見学しに来ているのだろうか。
1階《プラザ》は公開空地。けやき並木の定禅寺通りから建物に入るときは、 ちょうど公園やお寺の境内に入っていくような感覚だ。カフェやショップがあり、 オープンな広場は巨大な可動間仕切りと昇降する大型プロジェクタスクリーンによって 300席のホールにもなる。
オープンスクエアから定禅寺通りを眺める
2階《インフォメーション》に上がると、 児童図書館、新刊の雑誌や新聞、 シニアから子どもまでが利用するインターネットブラウザ端末、 その隣に視覚障害者のためのバリアフリー端末や合成音声による活字読み上げ機がある。 そして、それらのサービスを行うゆるやかにカーブしたカウンターの奥には 半透明のカーテンに囲まれたスタッフオフィスがある。
雑誌を広げながらでもブラウジングできる
読み上げ機の使い方を丁寧に説明するスタッフ
3,4階《仙台市民図書館》は「ただ本を読むため」にしては美し過ぎる空間。 オフホワイトのふかふかのじゅうたんを歩いていると、 「さあて、自分のためにどんな本を読んでやるかな」ととても前向きな気持ちになりそうだ。
3階は高い天井とやさしい照明
4階デッキ部分からは3階も見下ろせる
5階《ギャラリー3300》は、固定壁で仕切られたアートギャラリー。その上の 6階《ギャラリー4200》は、 フロアを自由に仕切ることができるアートギャラリーとなっている。
開館記念展より
7階《スタジオ》は、フロア中央に映画館、会議室、試写室、録音室、 サービスカウンター、スタッフオフィス、サーバ室などの サービス施設が集められている。その大きな島の周りに 映像音響視聴ブース、スタジオ環境、美術文化ライブラリなどが 回廊のようにつづく。
7階フロア平面図
スタジオシアターは180席の本格的な映画館
スタジオa,bはレイアウトフリーな連続空間
機材は2種のワゴンに格納しすぐに移動可能
机に被さるワゴンは電源と情報コンセント内蔵
美術文化ライブラリに情報端末が溶け込む
伊東豊雄さん(左)らとガラス張りのサーバ室前で
情報を獲得すること、
表現すること、記録すること、人に伝えていくこと。 それらは万人が等しく与えられる権利であり、 生きていく上でとても大切な活動だと思う。だからこそ、smtはバリアフリーにもこだわる。
さて、開館によってオープン準備が終わったわけではない。 最上階のスタジオオフィスでは、 この4月よりいよいよ始まる情報技術に関連する活動の支援サービスの準備であわただしい。 その「プロジェクト」は基本的に市民から公募する。
バリアフリー情報提供支援といった公的活動ばかりでなく、 プロジェクトの成果(ノウハウやテンプレートとなる資料なども含む)を 他の市民にも公開利用できるようにすることを条件に、 私的活動でも公募を受け付ける方針だ。 もちろん、行き過ぎたものや目的があいまいなもの、 明らかに個人の利益を追求するようなものは論外であろうが。
提案や審査、運営など試行錯誤の連続だろうが、仙台市民とsmt事務局による この「挑戦」を是非私も応援してゆきたい。 日々訪れる人々はこの施設に何かを可能にしてくれる空気を感じているに違いない。
参照
『せんだいメディアテーク コンセプトブック』
sendai mediatheque project team著(NTT出版)
(2001年3月下旬発刊予定)
1999.11.24「コネクティド図書館」
(Take IT Easyバックナンバーより)
1999.03.30「どうなるの?これからの図書館」
(Take IT Easyバックナンバーより)