どうなるの?これからの図書館

今週は急な担当順変更により、またしても「メディア美学書」本編(対談)はお休みさせて頂きます
公共図書館では「失楽園」

を何冊揃えればいいのか、そんなくだらないように思える悩みの中に いまの公共図書館が抱えている数々の問題が内在している。

日本においては、公共図書館はほとんど「無料貸本屋」と見られてきた。 その結果、公共図書館は、本の価値基準(新しい/古いや貸出件数の多い/少ないなど) をどう考えるのか、大量の複本(同じ書誌を複数冊揃えること)による 市場貢献と民業圧迫のジレンマなどに答えを出せずに今まで来てしまった。 そして、本がメディアの一部として取り込まれていく、すなわち、知識や情報が 本という形態でなくとも流通が可能となってきている今、 公共図書館はこれからどう変わっていったらいいのか苦悩し始めている。

これまで図書館が、読書の楽しさを広め、習慣を作り出してきたことで、 教育文化と図書出版産業に大きく貢献してきたことは明らかであるが、 たとえば最近書店との棲み分けが難しくなってきた。 大きな市立図書館では、「失楽園」や「少年H」など人気のある新刊なら 複本を二百冊も三百冊も購入するそうだが、 果たしてそれが公共図書館が行うべき住民サービスの本流なのかは疑問だ。


電子図書館

という言葉は一般的に2つの意味で使用されていることが多い。 一つは、「本の検索、予約を電子的にサービスする図書館」、 もう一つは、「本に書かれた内容を電子的にサービスする図書館」である。

前者の典型的な事例は、ホームページによる図書館案内や検索サービス であろう。たとえば、岐阜県の 恵那市図書館のように、学校図書館の図書データベースの一元管理に乗り出す など、新しい試みを行っているところもある。 図書館と利用者、あるいは図書館同士をコンピュータ・ネットワークで つないでいくことによって、本、情報、利用者の循環が始まる。 本の所蔵・貸出施設というそこだけで完結している 従来のターミナル・ファシリティ(端末施設)から脱した、 次の世代の図書館の姿が見えてくる。

後者は、いわゆる「デジタル・ライブラリ」などとも言われているもので、 施設内の端末や自宅のモニタ上で ネットワークを経由して本やアーカイブデータを読むことを可能にする施設である。 たとえば、東京・初台にあるNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]では、 1992年以来「アーティストデータベース」の蓄積を続けており、 それらデータへのアクセスサービスとして 「電子図書館」の運営を行っている。先日この施設で少人数で講義とディスカッション 形式による「電子図書館特別講座」というワークショップが開催されて出席してきた。 話しは、「アーカイブデータをどう見せるか」という話から 「人間の記憶はトレール、すなわち場所、順序といったものを手がかりに記憶している」 というとても面白い内容に展開していった。


新しい図書館とは?

その問いの答えは日々変わるものである。なぜなら、図書館とは「人間の知的欲求を 満たしてくれる場所」であるとすれば、知りたい事柄は変わりゆくものであるから。 そして、知りたいという気持ちに「これで終わり」というものはなく、 必ずその次につながっていく。

だが、常に変わりゆき完結しない場所であるということを意識して 「新しい図書館」をつくっていくことはできる。 そんな知的/創造的活動や生涯学習に関する情報の、いわばナビゲート役であり コンサルタント役となる施設として、「(仮称) せんだいメディアテーク 」は2001年春の開館を目指していま準備が行われている。

(この施設の話はまた後日「メディア美学書」対談でも取り上げたいと思っています)



参照リンク

恵那市図書館

NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]

[ICC]電子図書館

(仮称) せんだいメディアテーク