ブロードバンド・サービス一考

NTTが東京と大阪の一部地域での 10Mbpsの光ファイバサービスを始める。 加えて、4月からは100Mbpsのサービスもメニューに追加するという。 また世田谷を中心に100Mbpsの実験を行っている 有線ブロードネットワークスとユーズコミュニケーションは、 4月からFTTHサービスを開始する という。 いよいよブロードバンド(広帯域通信)時代の到来が現実味を帯びてきた。

ブロードバンド時代のサービス

家庭向けのブロードバンド・サービスとしてどのようなものがあれば嬉しいかを挙げてみる。

  • TV電話/家庭向けビデオストリーム配信サーバ
  • ビデオストリームは、MPEG4形式なら軽いので、今の64KbpsのISDN環境でもホームページに載せて 配信することができるが、やはり、品質が悪い。 ブロードバンドでMPEG2でのTV電話やストリーム配信が行えれば、遠くの祖父母に孫の顔をみせるのにも ビデオテープを送る必要がない。 ビデオサーバの場合、一般向けには、配信者用にビデオをキャプチャしながらアップロードできるような機器が必要だろう。

  • テレビ局のVOD(Video on demand)
  • ブロードバンドで大きく変わると予想されるのはテレビの見方かもしれない。 全てのテレビ番組がVODとして、要求に応じて配信されれば、テレビをリアルタイムに見る必要はほとんどなくなる。 例えば、休日に、1週間分の番組から好きなものを選択してみればよいのである。 VHS画質を数十時間録画できる ハードディスクレコーダ でもよいのだが、ストレージが放送局側にあれば、録画の手間も要らないのである。

  • ASP(Application Service Provider)
  • ASPは、アプリケーションとデータを管理し、そのサービスを提供するプロバイダである。 企業向け業務システムがその中心であるが、 ブロードバンドともなれば、ASPが家庭向けアプリケーションまで対象にすることも考えられる。 つまり、ワープロや表計算のような頻繁に使うソフトはともかく、 年賀状作成ソフトやビデオ編集ソフトなど使用頻度の少ないものや 高価なソフトをASP側が用意し時間貸しすることも考えられよう。 しかし、これには、異なるアプリケーション間のデータ、異なるバージョン間のデータの互換性 という大きな障壁がある。 アプリケーションとまでいかなくとも 外部ストレージとしての機能 も考えられる。

  • 在宅勤務
  • 会社の環境(マシンパワー、アプリケーション、データ)で、家やリゾート地 で仕事をしたいということがある。 ネットワークの実効速度が10Mbpsくらいになれば、これは十分現実的な話である。 個人からみれば、会社をASPライクに使うことになる。

    コンテンツの集中 VS 分散

    以上のサービスは、いずれもコンテンツやサービスがどこかのサーバへ集中して置かれており、 ユーザはそのストリームをリアルタイムに見る、そのサービスをリアルタイムに利用するというモデルだが、 来たるべきブロードバンド時代に果たして、このコンテンツ集中モデルが中心に なるかというのは、実は少し疑問である。

    というのも、世の中を見渡すと、MP3しかり、PDAのデータしかり、レンタルビデオしかりで、 コンテンツは個人の手元に分散する傾向にあるからだ。 ブロードバンドだからこの傾向が逆転するという意見もあろうが、 これは通信料金次第なのである。 音楽を聞いたりビデオを見たりするのに結果として高額の通信料を払うとなると、 消費者はやはり躊躇する。 もっとも、音楽の場合は、1分1MB程度と容量が少ないので高額にはならないが。 この意味で、通信品質の維持と共に常時接続通信料をどこまで安くできるかが ブロードバンド・サービス普及の鍵となろう。

    しかし、ブロードバンドの普及初期から格安の環境が提供されるとは考えにくい。 そこで、例えば、「消費者からリクエストのあった番組を、 ブロードバンド・ネットワークで、 放送局などのコンテンツサーバから近くのコンビ二などに送り、 コンビニ内で、DVD-RAM/RW等に保存し、消費者にレンタルする」 といったビジネスモデルも考えられるのではないか? 即ち、コンビニや駅のキオスクをブロードバンドHUBにするのである。 もっともこのモデルではコピー時の著作権の問題をクリアする必要がある。 また、インフラ整備が進んでいない地域でも廉価にサービスを提供できる 無線ブロードバンドによるHUBモデルは、 ブロードバンド・デバイド(地域格差) を緩和する1解決策ともなろう。