PCからハードディスクが消える日

メールが散らかって困っている。 会社のPC、自宅のPC、外出先では WorkPad に携帯電話。 どこでもメールが読めるというのは、メールが散らかるということでもある。 スケジュール帳や住所録も一ヶ所にまとめておきたいものだ。 また、あちらこちらに分散しているデータのバックアップをとるのも大変だ。

PCからハードディスクが消えると

PCからハードディスクがなくなり、 すべてのデータをインターネット上のディスクに置ければ、こんな面倒もなくなる。 こんなインターネット上の記憶装置(ストレージ)を提供するサービスを、 ここでは仮にインターネットストレージ(IS)と呼ぶことにしよう。(※)

※ Data Vaultingという、バックアップ用途に注目した呼称もある。

ISを使えば、データの共有も簡単になるし、 データのバックアップもISのサービスプロバイダがやってくれるかもしれない。 こうなれば、自分でテープやCD-Rにバックアップを取る必要はなくなる。 必要に応じて記憶容量を簡単に増やせるのもいい。

ISの実現には大容量のハードディスクと高速のインターネットアクセスが欠かせない。 だが、すでに40ギガバイトのディスクが3万円で買える時代だ。 次世代携帯電話(W-CDMA)やインターネット常時接続サービスもISの追い風になるだろう。

もう始まっている!?

これは決して夢物語ではない。すでにサービスは始まりつつある。 アップルの iDisk は、 Macユーザに対して無料で20MBのディスク領域を提供し、 ユーザのローカルHDのように利用できるサービスだ。 データ共有にも使えるらしい。

アドビのソフト ActiveShare を使えば、 15MBまでの画像アルバムを専用サイトに置いておける。 パスワードを渡した家族や友達だけが、このアルバムにアクセスできるというものだ。

データ保障に重点を置いたサービスとしては、 米国の @Backup がある。 その名の通り、500MBのリモート記憶装置を年$299.95で提供している。 このサービスでは、毎日、自動的にデータをバックアップしてくれるので、かなり安心だ。

新しくはないけれど

実のところ、これらのサービスは技術的にはまったく新しくない。 インターネットプロバイダのホームページ用のディスクも、 似たような使い方ができるからだ。

ここまでくると、いくつかの疑問が出てくる。 アプリやOS、動画などの大容量データもインターネット上に置くべきなのか、 という疑問は代表的なものだろう。 これらはローカルHDに置くのが当面は妥当なのだろう。

白状すると、PCからHDが本当に消えてなくなるとは考えていない。 使い道や目的に応じて、HDとISの棲み分けが進んでゆきそうだ。 また、ISそのものも、データ保障に重点を置いたものや、 データ共有に重点を置いたものなど、たくさんのバリエーションが現れるだろう。

ISは、ジミではあるが、 個人のコンピューティング環境を一変させる可能性を秘めている。 いずれにせよ、こんなものがあれば、 あちらこちらに分散するデータの管理を面倒だと感じる私のような人間にはうれしいサービスだ。 ただし、一般に利用されるには、いくつかのハードルをクリアする必要がある。 コストや、セキュリティ、そしてデータの標準化などである。 このハードルをどうクリアするかが実現の鍵を握っている。