2012は7インチタブレット
約1年半前の記事、「ちょうど良い画面サイズ」で当時一般的だった、4~5インチのスマートフォンと10インチのタブレットの中間のものが使い勝手が良さそうだ、と書いたのだが、昨年12月に発表された 2012年の日経MJヒット商品番付で7インチタブレットが堂々西の横綱を張った。1年半前に予測した6インチとは2.54cm外してしまったが、日本人の手には6インチのほうがしっくりくると、負け惜しみを言ってみる。
1年半前は、AppleがiPad miniを出してくるほどこのサイズが激戦区になるとは思ってもみなかったが、通勤電車や大衆の中で一人や二人タブレット端末を持っていることは珍しくなく、幅広いユーザに定着していることを実感する。
キラーアプリ不要のタブレット
新たなハードウェアを普及させる為にはそのためのコンテンツやソフトウェアが必要で、コンテンツを増やすためにはそれを養うハードウェアが必要であるという、鶏が先か卵が先かと言った議論があった。そのデッドロックを破る革新的なソフトやアプリをキラーアプリと言っていたが、タブレットのキラーアプリはなんだったのだろうか。
タブレットの利用状況を調べると、上位を占めるアプリはゲーム、電子書籍、SNS、メール、Webブラウジングと続くようである。ただし、タブレットの売れ行きを大きく促進する大ヒットゲームは見当たらず、欧米では電子書籍の利用は普及しているようだが、残念ながら我が国ではまだまだの状況である。
ヒット商品番付で大関だったLINEやそれに続くカカオトーク、commも基本はSkype、Viberなどのパケット通信上で無料通話を実現する仕組みにSNS的機能を付加した程度で、革新的なものとも思えない。
どうも昨今のタブレットへの流れは、キラーアプリやエコシステムの構築とは違った見方をしないといけないようだ。既存のアプリやコンテンツをいつでも、気軽に、便利に利用できる環境を提供できたことが勝因と言えよう。無線通信網の整備、中華padと呼ばれる安価な中国製端末の台頭、Androidの躍進も追い風になった。タブレットは良い所を淡々と取り込んだ草食系であると言える。
2013年の展望
昨年末に発表されたWindows 8にもタブレット型端末が多く含まれ、マイクロソフトはタブレット利用に特化したWindows RTをリリースするほどタブレットを重要視している。Apple、Kindle、Googleも第2弾、第3弾を用意しているであろう。ますますヒートアップするタブレット市場だが、今後の展望はどうだろうか。現在成長株のトピックスを取り上げ、将来を占ってみよう。
前述したLINEは革新的とまでは言えないが、コミュニケーションの形態にスタンプを取り入れ、より簡単かつ個性を出せる仕組みを導入した。FacebookのLike以上、チャット未満といったレベルのコミュニケーションだろうか。アメーバ piggのアバターが備える簡易的な喜怒哀楽を表現できるゼスチャー機能が示すように、簡略化されたコミュニケーションは言語の壁を取り払う。これとドコモが提供している話して翻訳を組み合わせたアプリがあれば、タブレットは外国人とのコミュニケーションをとるときの強力な助っ人になるだろう。
気軽に大画面を持ち運べることでブレイクした7インチタブレットのハードウェアとしての進化はどうなるか。軽量化、バッテリー稼働時間の延長はもちろんであるが、もっと身近に持ち歩き、使いたい。腕時計やメガネとのNFCやBluetoothを通じた連携が本格化しないだろうか。ドラゴンボールに出てくるスカウターのようなものはまだ無理だとしても、HMDと組み合わせたら面白くなりそうだ。
まだまだ多くの可能性を秘めているタブレットであるが、ともあれ、ガジェット好きな筆者としては楽しみな一年になりそうである。
本文中のリンク・関連リンク:
- 「ちょうど良い画面サイズ」 2010年7月13日 渡辺 毅
- 2012年の日経MJヒット商品番付 2012年12月4日 日本経済新聞記事
- iPad mini Apple
- LINE
- カカオトーク
- comm
- Skype
- Viber
- Windows RT マイクロソフト
- アメーバ pigg
- 話して翻訳 NTTドコモ