シンプルなデスクトップを

Windows 7が2009年10月に発売されて早5ヶ月になるが、昨今の経費削減のためか、企業向けにはあまり導入されていないようだ。そのため、古いバージョンの OSを使い続けるケースも多い。OSを供給する側からすると、古いバージョンのメンテナンスを続けていかなくてはならず、コスト的な負担も大きい。特に、最近ではWebブラウザでページを見るだけで感染するウィルスもあり、ユーザ側としても多少なりとも安全な環境で使いたいのも事実である。

管理者権限をやめてみよう

昨今のOSは、複数のユーザで使うことを想定して作られており、ユーザごとに権限を設定できる。しかしながら、インストールの手間やデバイス利用する際には管理者権限が必要になることから、手間を省いて管理者権限で利用しているケースも多い。また、OSを提供する側もPCメーカーもユーザサポートに手間がかかるせいか、あるいは、一人で使用することを想定して、管理者権限について説明するケースは少ない。本来、通常利用の範囲では、「制限ユーザ」で十分である。

ソフトウェアをインストール際には、管理者権限が必要になるが、「別のユーザーとして実行」など一時的に切り替えられる方法が用意されているので、それほど不便ではないはずである。流行っているGumblarウィルスなど、Webブラウザで閲覧するだけで感染するマルウェアなど不正なプログラムがインストールされるリスクを軽減できる。

古いブラウザは限定利用で

次世代Webブラウザを含めて、Webブラウザの互換性については、本コラムでも何度か取り上げているが、Webブラウザのバージョンに依存したアプリケーションが多い。特にライフサイクルの長かったInternet Explorer 6(IE6)に依存した企業向けのアプリケーションが多く、修正・開発コストの負担を考えると新しいブラウザに移行するのが難しいようだ。

また、通常使用するブラウザについては、脆弱性が発見された場合の対応を考慮しても、最近のブラウザを使用する方が安全だ。実際、Googleを始め古いブラウザに対応しないと宣言するサイトも増えている。企業内のアプリケーションでも対応が確認できたサイトから徐々に切り替えていく方法もあるだろう。 IE6に依存したサイトに関しても、既に、多くの場合はパターン化されているので、移行するノウハウも徐々に蓄積されて効率的に移行できるはずである。マルチプラットフォームに対応することが開発コストの負担増になるだけではなく、実は、運用・維持コストを削減できる可能性があるという認識を持つ必要があるだろう。

ユーザにも新しいバージョンのブラウザを使ってもらうように促すことも必要だ。広告モデルに収入を依存するWebサービスで、一部とは言え、古い環境のユーザを切り捨てることは、自ら広告効果を否定することになりかねない。もちろん、開発やメンテナンスのコストを考慮して、購買力のある新しいユーザをターゲットにしているとも言え、今後こうしたサイトが増えるだろう。

特定用途向けデスクトップも

IEをはじめ、いくつかのクライアントでは複数のバージョンを共存することが難しい場合がある。その場合には、仮想化したOSを複数動かし、デスクトップごとに切り替えて使う、デスクトップを仮想化して利用する方法がある。IE6専用のデスクトップや特定のアプリケーション用デスクトップといった特定用途向けデスクトップも実現可能だ。実際に、Windows7では、XP modeで仮想化したデスクトップ上で古いソフトウェアを動かす方法を提供している。OSを仮想化することで、CPUやメモリ等のリソースが十分に必要なことを除けば、互いのOSは干渉することもなく実行可能である。仮想化したデスクトップを利用することで、古いバージョンのソフトウェアも比較的安全に利用できる。 Gumblarウィルスも、Web管理用デスクトップということで用意しておけば、感染を免れたはずである。ただし、OSが2つ動かすことになるので、ユーザ側のメンテナンスにかかる手間が2倍になる可能性がある。

また、クラウド環境用として、WebOSと呼ばれるOSが注目されている。つまり、ユーザがデスクトップ環境を維持するのではなく、ブラウザからクラウド側で動くデスクトップを動かすことで、ユーザはデスクトップ環境をメンテナンスしなくて済むというメリットがある。企業で導入が進むシンクライアントも同様のメリットがあるが、クライアントを選ばないという利点がある。

ユーザにとっては、デスクトップ環境はPCを利用するための手段であるなかでも、Webブラウザが大きな役割を担っている。実際に、Windowsでは、IEとOSのGUIがほぼ不可分な状態で提供されていることもわかる。今後、クラウド環境が普及するにつれて、デスクトップ環境もWebブラウザと同様に競争環境になる可能性が高い。また、古いOSをそのまま使い続けたいというユーザ、特に企業ユーザのニーズも理解できるが、提供者側が古いOSのサポート費用が高くすることで、半強制的に移行させる方法も考えられるだろう。