少子化による高校生の減少から、大学の生き残りをかけた競争が激化してきている。 私立大学では、定員割れをおこす大学が47.1%に上るなど、大学経営の実態は 一層厳しい状況になってきている。 また、国立大学でも、2010年に運営費交付金が、大学の評価に従って配分されることとなっており、 独立法人化を迎えて5年が経った現在、大きな転換期にきているといえる。
一般企業と同様に、大学においても、情報システムの導入は大きな投資となっているが、 このような厳しい状況を迎えて、今後の情報化投資は厳しくなっていくであろう。 すでに、「変わりつつある大学の情報化」のコラムで、大学における情報化投資の評価について書いたが、 今回は更に突っ込んだ内容について述べてみたいと思う。
情報システム導入と大学評価の関係
情報システムの導入に伴うメリットして、情報を集約し一元管理することにより、 学内の各種情報が容易に取得できるようになることが挙げられる。 これにより、無駄な情報機器を把握し、経費節減に活用できることは前回の コラムでも述べた。しかし、今後、大学競争が激化していく中で、それだけでなく、 大学の評価を意識した情報収集の手段としても、情報システムが担う役割は大きくなるであろう。 具体的には、以下の内容である。
- 大学評価の指標に対応したデータを集約することにより、より高い評価を得るための方策が分析できるようになる。
- 実際の大学評価に際して、成果があがったことを説明するための説得力のあるエビデンスデータを収集することが可能となる。
また、より教職員の負担を軽減するためには、BIなどの仕組みを活用した、 学内の情報システムからデータを収集してくる仕組みの構築も必要となる。 アメリカでは、マイアミ大学にてBIの取り組みが見られるが、日本では、 まだそのような事例はない。今後の動向に注目したい。
情報システムを導入する目的を明確にする
ここまでは、情報システムによる情報活用の効率化について述べてきた。 しかし、情報システムがもたらす効果としては、ICTを活用した業務効率の向上、 授業の支援、学生のサポートなど、他にも様々なものがある。
今後、大学経営が厳しくなる状況を考えると、システム費用の予算化に対する風向きも、当然、 厳しくなってくる。一般的に、事務システムなどの費用対効果が図りやすいものを除けば、 情報システムへの投資は、経営層レベルの目標と関連付けて行われることが少ない。 その為、予算の状況が厳しい環境下では、経営層を説得しづらいというのが実態だ。 これは、経営という側面では私立大学と状況が異なる国立大学についても、 運用費交付金が毎年1%づつ削減されている実態を考えれば、同様である。
そのような背景から、今後は、情報システムの導入目的を、 大学評価の基準と関連付けて整理することが重要になるのではないだろうか。 授業の支援や学生のサポートなど、教育活動に関わる情報システムの導入は、 何に貢献するかを万人に説明するのが難しい。 そこで、情報システムの導入が、大学の客観的評価の視点から見た場合にどの項目に該当しているのかを 明確に示すことができれば、今後の大学戦略の中での真に効果の高い情報システムの導入が より容易になり、大学の競争力向上に貢献することが可能となる。 また、大学で実現すべきことを、情報システムの活用によって解決できるかどうかの チェックリストとしても活用が可能であろう。今後、このような検討が進むことを期待したい。
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