オープンソースを研究する

オープンソースに関する研究といったらどんなものを思い出すだろうか。
世の中には様々な側面からオープンソースを研究している人々がいる。 今回はその一端を紹介しよう。

オープンソースとプロプラエタリソフトウェア

多くの読者はプロプラエタリ(商用)ソフトウェアとの コストやセキュリティの比較を思い出すだろう。
オープンソースソフトウェアと競合プロプラエタリソフトウェアを様々な側面から比較したレポートやMicrosoftによるレポート集などがある。

これらのレポートを読む際には、レポートの内容が中立的に記述されているとは限らない、ということは留意しなくてはならない。
ユーザにとってコストやセキュリティは製品選択の重要な要素であるため、 比較レポートは大きなインパクトを与える。
故意ではなくとも、レポート作成者の立場によって記述に偏りがある可能性があるのだ。
テレビや新聞などの一般的なニュースと同様、読者は妥当性を判断しながらレポートを読まなくてはならない。

オープンソースという開発形態

ソフトウェア開発に関わっている読者は、オープンソース型の開発形態に興味を持っているかも知れない。 たとえば、Eric
Raymondが著した有名な「伽藍とバザール」では、オープンソース型のソフトウェア開発手法を従来型の開発手法と比較、研究している。

オープンソースと社会

さらに欧米では、オープンソースや開発コミュニティが社会に与える影響を研究しようという動きが盛んになってきている。
たとえば、

  • そもそもコミュニティはどのように形成され、成長していくのか。
  • 各地域の事情が開発者やコミュニティにどのような影響を与えているのか。
  • オープンソースやオープンソース的な概念が日常生活にどのような影響を与えうるのか。

といったことである。
「オープンソースのコミュニティはインターネットの普及によってはじめて実現され、従来のコミュニティとは異質なもののようだ」、ということが研究のモチベーションになっている。

オープンソースをわかるには…

残念ながら、このような研究の中心は欧米であり、日本での研究例はほとんどない。
また、日本人はオープンソースの技術面・実用面ばかりに注目し、社会的側面については興味を持ちにくいようだ。
オープンソースの優劣や開発手法に関する研究は日本でも注目されているが、社会との関わりについては注目すらされていない。
我々の調査でも、日本のオープンソース開発者はオープンソースというコミュニティに参加すること自体にはあまり魅力を感じていない。


昨年三菱総研が実施したオープンソース開発者約500名に対するオンラインアンケートでは、
オープンソースやフリーソフトウェアを開発する動機として 「オープンソースやフリーソフトウェア開発の現場に参加したい」
「新しい共同形態に参加したい」を選択した回答者は約20%と約10%だった。
一方、欧米で行われた同様の調査では30%以上の開発者がこれらを動機として挙げている。

オープンソースソフトウェアの性能やその開発手法を研究することはもちろん重要である。
しかし、より深くオープンソースを探求するためには社会的な側面を理解する必要があるだろう。
企業や政府自治体にとっても、コミュニティを知ることはオープンソースソフトウェアのより効率的な発展や利用につながる。
さらに、オープンソースという概念をソフトウェア開発以外に適用する際には社会的側面の理解が重要になるだろう。

今後、日本においてもオープンソース研究が活発になっていくことを期待したい。


筆者はパリで開催されるEASSTと4Sの合同会議(会期:8月26日〜28日)に参加予定である。
この会議では科学技術社会論を扱っており、オープンソースを社会的側面から研究するセッションも用意されている。 後日、オープンソースと政府
のサイトにレポートを掲載予定である。興味のある方はご覧いただきたい。