博物館のアーカイブ〜本物があるからこそ

博物館のデジタルアーカイブが進められている。 その背景と行き着く先はなんだろうか?

博物館アーカイブの歴史

デジタルアーカイブの近年のTOPICは、 アメリカ議会図書館の American Memory であろう。
「アメリカ議会図書館の蔵書はすべてのアメリカ国民に属する。 米国の歴史上価値ある資料を自由にアクセスできるようにし、
どこにいてもアメリカの歴史を共有できるようにする。」という目標のもと1994年より開始された
電子図書館プロジェクトの中核をなすのが、American Memory である。 アメリカ史に関する現在、約100万点以上、
デジタルアーカイブ資料(写真,手稿,楽譜,映画,録音,図書)がWeb公開されている。

当初は、アーカイブして何になる?という話もあったそうだが、
教育、研究者はもとより、ヨーロッパ系、メキシコ系など、自分のルーツがたどれるなどの理由により、
相当なアクセス数があり、国民の一体感の醸成に大いに役立ったとのことである。 欧州や日本は、このAmerican
Memoryの成功を追っているというのが現状である。
欧州では、EUが中心となり、1996年にスタートした欧州内の有力美術館・博物館が保有する数10万点の
文化遺産をデジタル映像化し、通信網を介して学校や図書館などで自由に利用できる環境を構築する 産学協同プロジェクト Electronic
Art Gallery
が実施された。 欧州域内の100以上の有力美術館や博物館、IBM、HP社、
イギリスのBT(ブリティッシュ・テレコム)、Telecom Italyなど、
世界の情報通信、マルチメディア、出版関係企業など45社以上が参加した。

本物の価値

本コラム「アーカイブ大変でも取り組む博物館」 でも取り上げたように、
代表的な日本の博物館はデジタルアーカイブを進めている。 しかし、そこには、「本物をみて欲しいので、インターネットには、
わざと高精細画像は載せない」などのジレンマがあるようだ。

千葉県佐倉市の 国立歴史民俗博物館 では、プラズマディスプレイに 江戸図屏風 を表示し、 手で触った部分が拡大表示される展示を行っている。拡大表示された部分は、
実物を肉眼で見るより詳細に見え、これだけでもとても面白いのだが、
やはり、本物が側にあるからこそ、このような展示物の価値がいっそう増すというのはひとつの事実であろう。
例えば、ディスプレイ展示だけあっても、或いはそれがインターネットで見れても、
本物がなければ、感動は薄れ、リアリティのない世界となってしまうのであろう。

後に残るのは「文化」

Z39.50プロトコルによる共通索引は、米議会図書館で、採用され、ISO規格にもなり、
米国ではかなり普及しているそうだが、日本では国立大学図書館を除き、あまり普及が進んでいない。 その背景には、
コレクションの方向性や地域性、専門性など性格が異なるため統合化が難しい、
こととともに、上のような博物館側の意識もあるのだろう。

筆者は、かつてXML/EDIの標準化に係ったことがある。 この際は、オブジェクト指向技術をベースとした
メーカ主導の手際のよい仕様策定が印象に残った。 これと対比すると、博物館情報の相互利用は、実に腰が据わっているようである。
これは、博物館関係者が、「本物こそが最高のアーカイブであり、
メディアや情報技術は刹那的なツールにすぎない」と考えているからであろう。

ある博物館関係者の以下の言葉が心に残った。 「経済活動は一時的なもの、後世に残るのは文化である」。 全くごもっともである。
加えて筆者は、「文化は後に評価されるもの、人が生きている間の活動こそが価値あるもの」とも思ったのだが。