アーカイブ大変でも取り組む博物館

昭和41年に放映されたドラマ「氷点」

(三浦綾子原作)の ビデオが結構売れているそうだ。 何でも、南極・昭和基地で当時越冬隊員の娯楽用に用意されたフィルム
がたまたま残っていて、それをビデオ化して大当たりしたそうだ。

昨年12月1日に 「アド・ミュージアム東京」、 そして今月1日には 「NHKアーカイブス」という映像アーカイブを閲覧できる施設が それぞれオープンした。

アド・ミュージアム東京は、東京・汐留の高層ビル街にある 商業施設「カレッタ汐留」にオープンした広告資料館だ。
江戸時代から今日までの広告資料を展示しているが、 なかでも昔の特選CMが無料で見られるコーナーがなかなか好評だ。
埼玉・川口のSKIPシティ内にできたNHKアーカイブスは、 NHKが放送した映像を記録保存していく施設だ。
ここでも無料で昔の秘蔵番組を閲覧することができる。

テレビ放送の黎明期は生放送であったためにほとんど映像記録がない。 またその後も、1960年代の業務用のビデオテープ1本の価格は、
軽自動車一台分に相当し、 このためテープを繰り返し上書きしてしまい、当時の番組ほとんど残っていない。
現存する50年代、60年代の放映番組のフィルムはまさにお宝だ。


魅力的な収蔵品を持っている

東京国立博物館
国立歴史民俗博物館といった
大御所の博物館でも現在力を入れているのは デジタル・アーカイブとwebによるサービスだ。

両博物館で共通しているのは、収蔵品をまず4X5(インチ) の写真フィルムに記録することだ。
デジタルカメラは研究員が個人的に撮影する以外にはいまだに公式には 使われていないというのが興味深い。

これまで撮影されたフィルムは、たとえば東京国立博物館では、
20万枚にもなる。8年前から毎年1万枚のペース、ドラムスキャナによって
1000dpi(4X5サイズで2,000万画素)でデジタル化している。
記録するそばから記録メディアのバックアップや劣化、陳腐化などで発生する
マイグレーション(記録媒体の移行)の問題も同時並行で対応していく。 大変なコストと労力だ。

何でこんな大変なデジタル・アーカイブ事業に各博物館が取り組み始めているのか。


それは価値の再構築と利用者サービス

のためである。一般的な博物館においては、 収蔵庫に厳重かつ慎重に保管されている収蔵品は資料番号で一元管理されている。
この資料番号に対して分類が付けられていくが、 途中で分類の見直しが必要となることも少なくない。
そこで資料番号は通しで振っておくのが最も効率がよいということになる。 これは博物館に限らず、往往にあることである。

複数の図書館間で図書の相互貸借を行う際に 所蔵館を調べるために利用する総合目録(目録データベース)と同様に、
博物館や美術館の世界にも共通分類を整備しようという動きがある。 博物館業界では、文化庁が進めている 共通索引や、
ANSI/NISOのZ39.50などをベースとした分類の策定も数年は掛かるだろうとの見方が強い。
なぜなら、それぞれの博物館はコレクションの方向性や地域性、専門性など性格が異なるため、
博物館業界自身では最終的には決められず、たとえば商業ベースや政治的な判断を 伴わざるを得ないとの予想からだ。

しかしながら、どの博物館もネットミュージアム化やアーカイブの資産化が 迫っているのはわかっている。
それらに乗り遅れないようにと、所蔵品情報を公開するための準備として、 資料のデジタル・アーカイブとデータベース整備を進めている。
すでに東京国立博物館においても、来館者数よりもホームページを訪れる数が多いという。
社会へ貢献するという使命によれば、来館案内のためのページとは別に、
インターネット専用のサービスのためのページを分けて作る必要があると考えているそうだ。

いま独立行政法人化や行政評価の対象となっている博物館は、収蔵品とその情報に対して “編集”による価値の再構築を行い、
利用者満足度をあげる新しいサービスを行うためにデジタル・アーカイブに取り組み始めている。



参照

ドラマ「氷点」ビデオ

アド・ミュージアム東京

NHKアーカイブス

東京国立博物館

国立歴史民俗博物館

文化庁による共通索引についてのページ

ANSI/NISOによるZ39.50についてのページ

2000.5.16「アーカイブとワインの関係」
(Take IT Easyバックナンバーより)