されると、その実の品種や土地、その年の出来具合によって、 どのようなワインになり得るかがほぼ決まってしまうと言われる。
デジタルアーカイブ(digital archive)は「貯めることに意味がある」と 言われることもあるが、実は収蔵されるデータはワインの葡萄によく似ていて、 出来上がるワインや飲み手をあらかじめ想定しておかないと うまく行かないのではないかと最近思う。
やはり適した葡萄を見つけて長い年月( 30年、 60年)取っておけるワインを作らないと始まらない。 ワインに適している葡萄は、最適な樽で熟成され、さらに瓶熟成されて 長い年月を経て複雑な深みのある味、香りを持つ ヴィンテージワインとなる。ゆえに、慎重な剪定によって 一つ一つの葡萄の実に十分な栄養を行き渡らせることも大切な作業だ。
マルチメディアデータベース
としてのデジタルアーカイブは、 公共施設や教育機関のインターネット接続率の向上も促進要因となって、 いくつかの 事業や実験として進められているが、 まだまだ試行錯誤を繰り返している状態である。
難しくしているのにはいくつか理由があるが、 その中でも特に次の2つが大きい。
まず1つ目は、デジタル化された資料に対する著作権の問題である。 まだ事例も少ないこともあり、著作権をめぐって許諾処理や利害調整が難航することが多く、 デジタルアーカイブ推進協議会 の権利問題研究委員会においても、 結局のところ適宜「契約書を交わす」ことが重要との ガイドライン(案) を示している状態だ。
地域センター (地域の情報センターが推進している一例)や 市民活動においても、博物館や美術館に引けを取らないような デジタルアーカイブも立ち上がり始めてきたが、 初めから著作権の部分がどうもすっきりしないものが多い。
自ら著作権を所有している対象 (あるいは著作権が発生しないもの)について、 標準的な入力デバイスやでデータフォーマットを用いて 自らで撮影などの入力作業を行って得た1次資料データに限った 「手作りデジタルアーカイブ」を思い切って作ってみてはどうか。
ワインを熟成している間、
ずっと続けられる樽の管理はとても大変そうである。 2週間に1回のトッピング(常に樽をいっぱいにしておく)、 2年間で数回行われるラッキング(澱引き、不純物を取り除く)など 醸造責任者は常に樽とその中身に気を配る。
難しくしている理由の2つ目は、 デジタルアーカイブの運営者が、運営作業のほとんどは 「入力と情報提供」作業だと考えていることだ。 実はデジタルアーカイブでは、紙よりもずっと早く劣化していく 記録メディアとそのデバイス機器の更新や、記録再生環境としてのマシンやソフトウェアを 維持していく「システム維持管理作業」がかなりの量となることを きちんと認識しておかないといけない。 もちろん、何を残していくべきかデータの価値を 判断していくことが必要なのはいうまでもないが。
100年後も見られるようにしておくことは どれほど大変なことなのか想像もつかないけれど。
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