PDAの花道〜専用端末をめざせ

「携帯電話 v.s. PDA」… 小型モバイル端末の本命を巡る議論でよく取りざたされるテーマだが、昨今はカメラ付きなど高機能携帯電話の普及により、PDA の旗色があまり良くないようだ。 ソニーのバイオ U シリーズに代表される小型ノートパソコンとの棲み分けも曖昧になってきており、中途半端な印象は増すばかりである。

あと一歩使えないPDA、あきらめられる携帯電話

何年かぶりで最新型のPDA を使ってみた。 VoIP 機能や IPv6 プロトコルをサポートした Windows CE.NET 4.1 搭載の PDA だ。 この PDA は無線 LAN 内蔵で、無線 LAN のある会社や自宅、街角のホットスポットなどで使うにはとても快適だ。 しかし、普通のノートパソコンの代わりに使おうと思うといろいろと不自由が出てくる。 特に映像や音声などのリッチコンテンツにアクセスすると、それらの再生に必要なプラグインがなく、残念な結果に終わることがある。

一方、携帯電話で Web にアクセスする場合は事情が異なる。 携帯専用コンテンツを見て満足することがほとんどで、一般のコンテンツが仮に正しく閲覧できなくても「仕方がないか」とあきらめられる。

筆者は日頃、ノートパソコンと携帯電話を持ち歩いて仕事をしているので、とりわけ PDA の中途半端さが気になる。 PDA ではノートパソコンの代替にも、携帯電話の代替にもならないからだ。 確かにパソコンよりも PDA の方が断然携帯性に優れているが、そのために仕事上で必要な機能が使えなくなるのでは困る。 PDA を使うのならば、パソコンにも携帯電話にもない機能がぜひ欲しい。

PDA は歩きながら片手で

それでは、PDA ならではの機能とはどのようなものだろう。 私は「歩きながら片手で使える」という条件が直感的にはしっくりくるように思う。

たとえば、無線 LAN を使ったVoIP端末はどうだろう。 電話の延長だから片手で手軽に使いたいので、パソコンを抱えてヘッドセットをつなぐよりは、PDA の方が明らかにスマートだ。 ハードウェア性能の向上を考えれば、カメラをつけてテレビ電話にするものそれほど難しくはないだろう。

GPS対応のナビゲーション端末も、PDAベースのものが今以上に普及してもおかしくない。 カーナビと同じように、到着地を指定すれば適切な交通機関を選択して、さらに徒歩ルートまで示してくれるとうれしい。

いずれにせよ、こうした機能が実際に使い物になるには、PDA 向けのきめ細かな機能・サービスの提供が不可欠だろう。 ただ単純に VoIP 機能だけを提供したのでは、現在の携帯電話の多彩な機能(アドレス帳、着メロ、カメラなど)に敵わない。 パソコンや携帯電話ユーザを PDA に振り向かせるには、今以上に一工夫必要だ。

PDA の機能を絞り込め

実はパソコンと携帯電話以外に、MP3 プレーヤ(東芝 GIGABEAT)も毎日持ち歩いている。 PDA でも MP3 プレーヤの機能があるが、私は断然専用機派だ。 専用機であるが故に操作性も機能も必要十分なものを備えていることがその理由である。 専用機にすると、機能ごとに複数の装置を持ち歩かないといけないことになるが、それぞれの機器に求められる要件が異なるのだから仕方がないと思っている。

PDA ならではの機能を突き詰めて考えると、現在の万人の望む機能を盛り込んだような汎用機ではなく、機能をもっと絞って操作性や性能を向上させた専用機が望まれているのではないだろうか。 3年前のコラムではパソコンの専用機化に言及しているが、同じことが PDA にもいえる。

個人的には、パソコンと同程度にプラグインなどが整備された Web ブラウザ専用 PDA ならば、パソコン/携帯電話/MP3プレーヤに続く第4の端末として持ち歩いてもよいと思っている。 無線LANホットスポットの普及とともに、活用できる場面がいろいろ想像できて楽しみだ。