ネットバンクの収益の鍵はチャネルミックス

昨年、 本コラム
でインターネットバンキングについて取り上げた。今回は、あれから1年経過したこのビジネスの収益性について改めて考えてみたい。

順調に口座数を伸ばすインターネット口座

まず利用者数を見ると、こちらは順調に伸びている。 eコマース専門調査会社ゴメス
によれば、1年間に約150万人以上の新規の利用者を獲得している。
24時間365日稼動、パソコンや携帯電話があればどこからでも銀行取引が行える利便性に加えて、
ネット利用者のために設定された優遇プライス、多様な情報コンテンツなどが、
少なくとも一部顧客のニーズを着実に捉えることに成功しているようだ。

相変わらず厳しいネット専業

しかし、あくまでも問われるのはビジネスの収益性だ。
そこで、まず気になるのはインターネットバンキングの収益力がそのまま会社の業績に現れるネット専業銀行の動向だ。
2002年3月期の決算を見ると、やはり創業投資の負担が重く、
銀行法が義務付ける開業後三年目の黒字化の目途がなお見切れていないのが実情だ。

例えば、ジャパンネット銀行
はフルバンキングサービスを提供し、決済手数料と 預金の運用益の両方で収益モデルを組み立てている。同行の場合、「Yahoo!
JAPAN」等との提携で目標口座数はクリアし、決済手数料による収益も
計画を上回るペースで伸ばしたが、収益の足枷となっているのは貸出等の運用益の不足である。運用益を上げる新たなビジネスを
検討するか、採算の目安となる口座数の目標をもう一段引き上げる必要がありそうだ。 一方、ソニー銀行の場合は、個人ローン商品導入の遅れもあって、集めた預金のごく僅かしか貸出に回っていない状況だ。
同行は、今年4月に住宅業者との提携住宅ローンの販売を開始したが、この販売チャネルはインターネットではない。
住宅業者がソニー銀行に繋ぐという業者チャネルを使っている。インターネットで預金は集まるが、貸出となると話はそう簡単ではないようだ。

苦戦する金融ポータル・BtoC総合ポータルサイト

それでは、既存銀行は収益力強化にインターネットをうまく活用できているのか。
ここで問われるのは、インターネットの利便性で囲い込んだ顧客に高収益商品を販売する戦略の是非である。

まず大手行が取り組んだのは、金融商品をクロスセルする金融ポータルやインターネットショッピングの決済等で手数料を稼ぐBtoC総合ポータルサイト
である。しかし、結論から言うとこれらは必ずしも魅力的な収益基盤とはなり得ていないようだ。
金融ポータルは金融情報を欲する新規ユーザーの絶対数が伸びていないこともあり、利用は進んでおらず、このままではグループや提携、
親密関係を知らしめる広告塔のような役割に終わってしまう可能性もある。
既存銀行等が独自に立ち上げるBtoC総合ポータルサイトも、例えば「ミックスキューブ」が事業停止に追い込まれるなど
苦戦を強いられている例が多い。

既存チャネルとのチャネルミックス戦略

そこで筆者が注目したいのは、既存銀行がインターネットを活用して個人ローンや中小企業向けローンを拡販することだ。
大企業向けの貸出が伸びないなか、既存銀行は新たな小口先貸出市場を開拓したいところだが、従来通り、渉外担当者を動かしているだけでは採算に合わない
ビジネスだからだ。しかし、ソニー銀行の例のとおり、インターネットで貸出を伸ばすのは簡単ではない。成功の鍵は、
店舗や渉外といった既存チャネルとうまく連携させることではないか。

例えば、あさひ銀行の「住まいの計画応援サイト」は、
返済シミュレーションなど充実したサービスを提供しているが、同サイトだけで販売量が増えるという訳ではないようだ。しかし、
店舗の相談窓口や渉外が顧客相談のなかで同サイトを使っていくことで、顧客を囲い込み、販売の成功率を高めるには大いに貢献している。
また、米国の地銀フリートボストン・ファイナンシャルは、企業貸出による収益の約2割を中小企業向けローンで稼ぎ出すトップバンクであるが、
やはり、インターネットを顧客の囲い込みに活用している。営業店やスモールビジネスセンターとインターネットのチャネルミックス戦略をとっているのが特長だ。
同行の場合、インターネットのオンラインサービスを利用している顧客は全体の約4割であるが、この顧客は明らかに貸出残高が高く、離脱率も低く抑えられているという。

インターネットは本当に収益の源泉となり得るのか?ネット専業銀行にとっても、既存銀行にとっても、いよいよ正念場となる時期を迎えている。