新年度に入り、日本は4つの金融グループが競い合う本格的な金融競争時代に 突入した。こうしたなか、異業種からの参入組も交え、ネット銀行ビジネスに向け た競争も活発である。しかし、こうしたネット銀行ビジネスは、どう控え目に見て も、まだ成功したと言える段階にはない。確かに、顧客利便性を高めるインターネッ トバンキングは次第に顧客の支持を集め始めたかに見えるが、さらに、そこで収益 性を高め得るビジネスになったか、となると採算面の見通しがなかなか見えてこな いのが実態だ。
厳しいネット専業銀行
まず、ネット上だけで事業展開を狙うネット専業銀行であるが、「ジャパンネット銀行」 の口座獲得件数が思ったほど伸びないなど、苦戦が伝えられている。先行した 米国の状況を見ても、セキュリ ティ・ファースト・ネットワーク・バンクや CompuBank などは、既存顧客を 中心にインターネット口座の獲得を進める既存銀行に口座獲得数で大きく水をあけ られ、加えて採算面でも大きな課題を抱えている。
第一に、インターネット専業銀行の経費率は予想以上に高い。インターネット利用顧客を獲得するには、利便性を追求する競争はある程度避けられない。その結果、コールセンターの二十四時間対応、携帯電話対応などの対策を次々と迫られ、システム投資が拡大する。加えて、一般にネット・ビジネスでは欠かせないブランド戦略のための広告宣伝費用もかさむ。
収益性の問題も大きい。インターネット利用顧客は「利便性」や「情報量」の 観点を除けば、手数料の安さを期待する「価格感応型」が少なくない。一般に優良 顧客が多いと言われるインターネット利用顧客であるが、注意深くアプローチをし ないと、「価格感応型」の顧客を中心に取込んでしまい、スケールメリットで採算 ラインをクリアするしかない低収益ビジネスの罠に陥る危険性が高い。
電子商取引を含む総合金融ポータルを目指す
そこで次に注目したいのが、新たな収益源としてネットショッピングや金融商 品の販売を想定する「総合金融ポータル」を目指す動きである。例えば、「みずほ ファイナンシャルグループ」の「エムタウン」などがそうだ。ここには、ネット専用のネット支店も併設され ている。ただ、現状だけを見るとこうしたサイトが真の「ポータル」として認知さ れるかどうかは不透明である。「いろいろあるように見えるけど本当に利用したい と思わない」と、一昔前のネットショップについて抱いたのと同じ感想を、こうし た「総合金融ポータル」について漏らす人は少なくない。
「銀行は何をしてくれるのだろう?」
多数乱立する競合企業なかで、同一のビジネスモデルで成功できるのは良くて 3番目まで、というのがネットビジネスの厳しい現実である。スケールメリットを 追求するビジネスモデルの勝者の席は、4大金融グループを中心に競われるだろう。 そうなると、ネット銀行ビジネスに参入している多くの金融機関は、結局、「新た な収益源は得られず、むしろ経費をかけて顧客利便性を高めただけの参入に終わる」 という厳しい結果も覚悟しておく必要があるだろう。
顧客チャネルとしてのインターネットは、当たり前のものと割り切るべきなの かもしれない。さらに新たな収益源を探ろうとする銀行には、インターネットを使っ て「銀行は何をしてくれるのだろう?」という顧客の疑問と期待に答えるような商 品・サービスを準備することが求められている。