公共施設のデジキャラ戦略

2001年度 グッドデザイン大賞

を受賞したせんだいメディアテーク(以下 smt)も先月1周年を迎え、 年間100万人が訪れる仙台市屈指の人気スポットとなった。 開館1周年記念イベントとして、メディアアーティスト 岩井俊雄氏を迎えた公開ワークショップ 『映像のふしぎ ?自分のキャラクターを動かそう!?』 が1月27日に開催された。 ワークショップでは、参加した小学生たちが赤と青の2色のペンで 自分のオリジナルキャラクターを描き、 それを一定周期で回転させた赤色と青色の円盤型フィルターを通して ビデオカメラで映し出すことでキャラクターが2コマのアニメーションとなって動き出していく。 子どもたちのユニークな発想がより一層 会場 を熱くしていた。


実はsmtはオリジナルキャラクター

を持っている。 岩井俊雄さんとイラストレーターのばばかよさんがsmtの活動をイメージして作った3デジタルキャラクターだ。 開館とほぼ同時に産声を上げた。これらキャラクターの使用権はsmtが持ち、 活動のために自由に使用することができる。

わたしたち(岩井俊雄+ばばかよ)は、せんだいメディアテークでの人々の活動を、
  • A (見る・聴く・感じる)
  • B(考える・ひらめく)
  • C(作る・表現する)
と大きく3つにとらえ、それぞれの特徴を持った3人のキャラクターを考えました。
  • A:『サーチくん』は頭の上の双眼鏡で、いろいろなものを見つけては、観察するのが大好き。好奇心旺盛で冒険好き。
  • B:『アンテナくん』はいつもいろんな事を考えたり、想像したりしている。新しいアイデアがひらめくと、頭の後ろのアンテナが光る。
  • C:『ブルームちゃん』は花のような手のような頭をしていて、何かを作り出したり、いろいろなことを表現するのが得意。
3キャラクターの主目的は、子どもたちにとって一見わかりにくいsmtへの親近感やなごみを与え、 具体的な機能やサービスをやさしく紹介する役だ。 しかし、これらのキャラクターは子どもたちのためだけではない。
施設の活動とともに

キャラクターもゆっくり大きく育っていってくれたらと願う。 小学生にはクレイアニメーション(粘土によるコマ撮りアニメ)やグラフィックデザインの題材として、 中学生や高校生には3次元CG化やムービー編集の教材として、子どもたちのメディアリテラシーや創造性を高めていく。

それから社会人には、smtキャラクターを使ってキャラクター商品化の模擬スタディや、 それらを手本として自分たちの商品やサービスに合うキャラクタを新たに作り出すワークショップなど 生涯学習の素材として是非活用してほしい。

ビジネスの世界でも、キャラクターの助けを借りて顧客の心を掴もうとしている。 ソニーコミュニケーションネットワークの電子メールソフトPostPetに出てくる「モモ」や、 Harbotというホームページの住人もその一例だ。 Javaアプレットでできたエージェントキャラクターがアクセスカウンターやゲストブックの機能を実現してくれる。 彼らによってインターネットサービスプロバイダのブランドや価値がアピールされる。

最近は明治製菓のマーブルチョコやアポロチョコ、 チョコベビーといった定番小粒菓子のパッケージにもキャラクターが配置されているのをお気付きだろうか。 子どもが初めて接するお菓子をより身近にする戦略のようだが、 アポロチョコキャラの ファンサイト があるのを見ると、キャラクターにウケているのは子どもだけではなさそうだ。

キャラクターは、夢の世界に生きている架空の生き物でしかない。 しかし人々が自己表現として彼らにストーリー性を与えていくことによって、 限りなく現実世界とデジタル世界が近づいていく「新しいリアルワールド」で、 心温まり、ある時は頼もしいパートナーのひとりとして成長していくのかもしれない。

参照

2001年度グッドデザイン大賞

せんだいメディアテーク(smt)

岩井俊雄ワークショップ
『映像のふしぎ ?自分のキャラクターを動かそう!?』

ワークショップ会場

ソニーコミュニケーションネットワーク
Harbot

明治製菓

アポロチョコの個人ファンサイト

2001.03.20「メディアテークの挑戦」
(Take IT Easyバックナンバーより)