テキスト、データ、画像、音声(音楽)、動画(ビデオ)・・・さまざまなコンテンツがインターネットで手に入れられるようになってきた。これらのコンテンツを総称し、ここでは「e資産」と呼ぼう。最近では音楽配信、iアプリなどに代表される有料コンテンツも増えてきた。インターネット決済で手軽に購入でき、とても便利である。
e資産は簡単に失われるもの
だが、e資産は結局のところ電子データである。ちょっとしたはずみで消えてしまうこともある。先日もネットワークウォークマンに入れておいたメモリースティックが突如、何の前触れもなく認識されなくなった。一部のデータが回復不能になってしまったのである。たまたまCDから録音した音楽データだったため、幸い実害はなかった。でも、もしその曲が音楽配信によって購入したものであったらと考えると心中穏やかではない。「メモリに入れておけば大丈夫」ではないのだ。
メモリースティックだけではない。携帯電話に蓄積しておいた画像データなど、メモリ障害によってデータを紛失した例は枚挙にいとまがない。メモリ障害だけでなく、アプリケーションや機器の不具合でもe資産は失われる。最近では携帯電話のiアプリやデータが損なわれる不具合が見つかり、回収騒ぎになった。有料コンテンツにも被害が及ぶ可能性があり、ことは深刻である。
e資産を守ろう!
e資産をデータ損失から守る最も有効な手段はバックアップである。携帯電話なら、電話帳や着信メロディーをパソコンに保存すればよい。パソコン用ならバックアップソフトやバックアップ機器は星の数ほどある。
インターネット経由でパソコンのバックアップを行うサービスもある。初回のバックアップにはすべてのデータを転送するが、その後は変更分だけバックアップされるのである。ユーザ側にはバックアップ用の機器など一切不要となる。万一データを損失したときには、ネットワークからデータを復元させたり、データをCD-ROMに焼いて送ってくれるようだ。e資産はネットワークで守ろう!と言うわけだ。
著作権の厚い壁
しかし、バックアップにも課題がある。e資産のバックアップとは一種の複製であり、著作権に抵触する場合がある。さらに、著作権保護機能により、複製が不可能であったり、複製を作っても意味のない場合もある。前述のネットワークウォークマンでは、音楽データを転送する際に著作権保護のため暗号化する。暗号化された音楽データは、他のコンピュータはおろか、同じコンピュータであっても再インストールしたら認識されなくなる。ソニーから正式にバックアップ手段は提供されているが、全ての音楽データの一括バックアップしか取れないのである。しかも、バックアップから復元する度に特定のホームページにアクセスして暗号キーをもらわなくてはならない。かなり使い勝手が悪い。音楽データが増えてきて、一括バックアップに1日がかりとなっては現実的とはいえない。
しかし、これというのも著作権保護機構(SDMI)に準拠した仕様だからだ。一概にソニーばかり責める訳にもいかない。他のSDMIに準拠しているメーカも似たようなものだ。曲がりなりにもバックアップ手段が提供されているだけ、ソニーはまだましかもしれない。
携帯電話の不具合による機種交換では、送受信メール、着信メロディ、画像データ、画面メモ、iアプリなどのデータは、旧機種から新機種への転送は行われないのである。著作権上の制限であるとの説明である。
e資産の著作権保護は大切である。大部分のユーザは理解しているだろうし、それで多少使い勝手が悪くても受け入れる。ただし、著作権保護ばかり優先して、ユーザをないがしろにしてはいないか。せめて我々自身が自分の資産を守れるようにして欲しいものだ。
本文中のリンク・関連リンク:
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