パソコンのハードディスクには大切な情報がたくさん入っている。OS
やアプリケーションプログラムもそうだが、自分で作ったワープロ文書やデジカメの画像、住所録などのオリジナルデータは特に大切だ。パソコンが壊れたら二度と復元できないか、あるいは復元するのにとても時間がかかる。
今回は、パソコンのデータ保障について考えてみる。
データの保障と費用対効果
データを保障する手段はさまざまだ。バックアップを取る、システムの信頼性を上げる、保険をかけるなどの方法を組み合わせることができる。しかし、これらの方法はそれなりの費用が必要になる。データそのものの価値を検討した上で、それに見合ったデータ保障手段を選択する必要がある。
データ保障はいざというときのものなので、起こらないかもしれないと考えると少々高価に思える。しかし、いつかは必ず起こると考えれば、案外妥当な金額である場合が多い。
バックアップを取る
データ保障手段の一番手はバックアップである。昔から磁気テープやフロッピーディスクにバックアップを取るのが定番だった。最近はさまざまな大容量記憶メディアが開発されているので、バックアップ方法も多様化してきた。
デスクトップレベルでバックアップを取るのならば MO(1.3GB) や CD-R(640MB) が適当だろう。ドライブやメディアが安価で取り扱いが簡単だ。しかし、最近はハードディスクの大容量化が進み、簡単に 20GB 超のディスクがパソコンに接続できてしまう。そうすると、ディスク全体のバックアップを取ろうとすると、何枚ものメディアが必要になる。
もうすこし容量が大きなメディアには磁気テープ(DAT, 8mmなど)がある。これらはドライブの価格が若干高価になるので、ファイルサーバなどで利用すると費用対効果が向上するだろう。
ネットワーク上の他のマシンにバックアップを取ることも可能だ。LAN で接続されている他のパソコン上にバックアップを取るようにすると、いざというときの復旧も迅速にできる。しかし、オフィス全体が停電した場合などは、バックアップごと壊れてしまう可能性もある。インターネットプロバイダ上のディスクスペースにバックアップを取ることも考えられるが、せいぜい数十MB程度しかないので容量不足だし、セキュリティ上もあまり勧められない。
いずれの方法にしろ、バックアップを取る頻度をどれくらいにするかが重要だ。週に1回程度で十分なケースもあるが、できるだけ頻繁にバックアップできればそれにこしたことはない。バックアップソフトで自動的に取れるようにしておくと間違いがない。
システムの信頼性を上げる
一方、システムの信頼性を上げて、データが壊れにくくするという方法もある。たとえば、次のような方法が有効だろう。
- ハードディスクのミラーリング
1つのデータが必ず複数のハードディスクに同時に書き込まれるようにする。1台のハードディスクが壊れてもデータがなくならない。RAID 1 や RAID 5 と呼ばれる構成方法が代表的。 - 無停電電源装置(UPS)
停電時に一定期間電源を供給してくれるため、その間にシステムの停止が安全に行える。雷などによる瞬電(瞬間的な電圧低下)にも耐えられる。 - 専用ファイルサーバ
汎用の OS を使っていると、ファイルへのアクセス以外の要素(たとえばグラフィックスなどの入出力デバイス関連)でシステムがダウンしてしまうことがあり得る。ファイルサーバ機能のみを持つ OS を使うことにより、システムがより強固なものになる。
システムの信頼性を向上しても、データが壊れなくなるわけではない。これらの手段は、あくまでシステムの可用性を高める目的で使用するべきである。データ保障という意味では、それでもシステムが壊れてしまった場合を想定する必要がある。
保険をかける
コンピュータを対象とした保険が損保各社から提供されている。多くはパソコン保険と呼ばれるハードウェアを保障したものだが、コンピュータ総合保険のようにデータに対する保障を盛り込んだものもある。たとえば、安田火災海上保険のぱそこん軟硬(膏)の保険料例を見てみると、年間保険料 69,000円で3台のパソコンに対して最大 600万円のデータ保険がかけられる。
データ保険の特長は、ハードウェア保険よりも遙かに保障金額が高額な点だ。10万円パソコンのようにハードウェアの低価格化が進む中、そこで取り扱うデータ量は増大しており、各種業務もコンピュータへの依存度を増している。データ保険が高額になるのは当然のことだ。
家庭のパソコンは大丈夫?
上で説明したデータ保障の方法は、残念ながらほとんどが企業向けのものだ。家庭で使っているパソコンは、購入時に販売店で延長保障に加入するのがせいぜいだろう。バックアップやシステムの信頼性の向上を図ろうとすると、パソコンと同じくらいの費用がかかってしまう。損保のデータ保険は企業向けで、家庭のパソコンにはかけられない。
企業で使われるパソコンと比べて、家庭のパソコンのデータが価値が低いということは決してない。それらのデータを作り出すのに要した時間を考えれば大変価値があるはずだ。近い将来、損保各社も家庭のデータ保険を提供するようになるだろう。パソコンが安くなってきているので、浮いたコストをバックアップや保険などのデータ保障にまわせば、きっと後悔しなくて済むだろう。
本文中のリンク・関連リンク:
- バックアップ関連
- アイ・オー・データの MO ドライブ/ CD-R ドライブ
特に CD-R はメディアが1枚100円台と安価なので古いデータのバックアップに適している。 - ニューテックのDAT(DDS4)ドライブ
数十GB のバックアップにはこれくらいの磁気テープが必要。
- アイ・オー・データの MO ドライブ/ CD-R ドライブ
- システム信頼性向上関連
- コンピュータ保険関連
- 三井海上火災保険のネットセキュリティ総合保険
一般企業向け。保障金額も高いがそれなりに保険料も高い。 - 安田火災海上保険のぱそこん軟硬(膏)
こちらは中小・個人事業者向け。データ再入力費用などがまかなえる「データ保険」がついている。 - 興亜火災海上保険のPaSoCon(パソコン)保険
これも中小・個人事業者向け。 - ラオックス延長保障
パソコン本体に対して購入金額の3%で5年間の保障がつけられる。
- 三井海上火災保険のネットセキュリティ総合保険