インタフェースで新感覚・能力開発

人工ハンド

が、1999年10月13日から15日まで東京ビッグサイトで開催された 国際福祉機器展 で参考出品されていた。

説明員(健常者)が腕に貼り付けた電極で捉えた筋電を使い、 人工ハンドの五指の動きをコントロールしていた。 来場者が恐る恐る握手を交わす光景なども見られ、 映画『ターミネーター』や『スター・ウォーズ』の中での 特殊効果シーンの一つが早くも現実化してしまった。 不慮の事故などで手を失った方々にとっては朗報だろうが、 製品化した場合の価格はまだポルシェやフェラーリ並みになって しまうそうだ。

しかし、いろいろ使い道が増えてきたら価格はぐっと下がるのだろうか。 たとえば無人作業ロボットのマニュピレータをこの人工ハンドにして、 遠隔で操作する時の入力インタフェースにできたらいいと思う。 自由な場所に第三の手を設置して操作できることになると 人々にはいったいどんな新発想、新感覚が生まれてくるのだろうか。

以前、VRの遠隔操作の応用を考えろと言われ、 背後に設置したマニュピレータを操作して自分の肩を自分で揉む 「VRモミモミ」という製品を思いついた。 あまりのくだらなさを絶賛されたけれど、それきりになってしまった。 この人工ハンドがあれば実用化できそうだが、孫の手100万本が買えそうだ。


念波を送ると

応えてくれるコンピュータがあったら…。同じく国際福祉機器展で見つけた KOTOBAXは、額に押し当てて取り付ける 脳波スイッチを使うことで、重度障害者でもコミュニケーションを 行うことができる製品だ。

といっても「のどが乾いた」と念じるとその意思が伝わるというわけではなく、 スイッチを押す感覚でONにするトリガーを出すという単純な伝達方法である。 それでも左下写真のように、各メニューボタンのコントラストを 順番にゆっくり変えていき、指示したいところにきたタイミングで念じると さまざまな意思伝達や操作が可能になる。

右下写真は、来場者がβ波を使ってライトスタンドの明かりのON/OFFを 自分の意思でコントロールしようとしているところだ。 やはり思ったとおりに指示するためには一定の訓練が必要であるようだが、 たしかにあるタイミングでライトが付いたり消えたりしていた。

使用する生体信号は障害の状況により、次のようなものを選ぶことができる。
●筋電信号(EMG):目を強くつぶる。眉毛を動かす。奥歯を強く噛む。
●眼電信号(EOG):眼球を左右又は上下に動かす。
●脳波(β波)(EEG):頭で強く念じる。意識を集中させる。興奮する又は怒る。
私自身、以前「視覚誘発脳波を用いた注視点検出」研究の 被験者になったことがあるが、 怪しげな電極を頭に付けてきれいな脳波を出すのは一苦労だった。

そこで会場にいた説明員にβ波を出すコツを聞いてみた。
「山びこで、『ヤッホーッ!!』と言った後に出やすいと言われる ので、心でヤッホーと叫ぶとうまくいきますよ。」

新しい感覚、能力開発とは、実は自然な感覚への回帰なのかもしれない。



参照リンク

国際福祉機器展

KOTOBAX

脳波スイッチ

指も言葉もいらない?足踏みから脳波インタフェースまで?
(Take IT Easy 1999.07.27号)