情報社会の歩き方

現在まで、 「高度情報化社会の実現」といった旗印の下に情報技術開発は進められてきた。 現状、‘高度’な情報化社会が実現されているかどうかの評価はさておき、 たかだか10年前と比較しても、 情報の概念を遥かに身近なものとして感じる社会になったことは確かといえよう。

情報氾濫の時代 〜多チャンネルデジタル放送〜

一般家庭で身近な情報源といえば、まずテレビ放送に言及しないわけにいかない。 旧来の地上波放送(VHF/UHFといった、 いわゆる普通のテレビで受信できる放送)に加え、 BS や CS といった衛星放送、それにケーブルテレビも、 以前に比べてぐんと身近な存在になった。 これらの技術によって地上波放送の難視聴地域を解消することもさることながら、 いよいよ多チャンネル時代に突入したインパクトは大きい。 なにしろ番組の選択肢は、地上波の数チャンネルから、 一気に数百チャンネルにまで広がったのだから。

では、面白い番組を探してみよう。 数チャンネルの地上波放送ならば、 リモコンの選局ボタンをアトランダムに押しては番組を確かめる、 いわゆるザッピングという方法で十分、いける。

一方、数百ものチャンネルを持つ衛星放送では、 番組表なしでは探しているだけで番組が終わってしまう。 そもそも、必要なチャンネルは事前に契約が必要な場合が多い。 番組探しの手助けとして、電子番組ガイド(EPG, Electronic Program Guide) といった技術が提供されている(EPG の例: DIRECTV の「MY番組表」)。多チャンネルを上手に楽しむためには、 EPG や番組紹介雑誌の活用が欠かせない。

情報氾濫の時代 〜インターネット〜

ところで、家庭に入ってきた新しいメディアの代表に、インターネットがある。 通信インフラにまだ難点も残るものの、確実にユーザー層を拡げている。 一般的な使われ方としては、電子メールと Web のブラウジングが主なところだろう。 ここでは Web による情報提供・情報収集に焦点をあててみたい。 World Wide Web は、自己組織的に成長を遂げている広域分散データベースだ。 米国 Netcraft 社の調査 によると、1999年4月の時点で、インターネット上を全数探索して反応があった Web サーバの数は500万台にのぼるという。

Web による情報提供の特徴は、内容がまさに玉石混淆であることだ。 プロが製作した番組を提供しているテレビ放送と対称的に、 素人が安易な情報提供を簡単に行なえるからである。 しかし情報提供者が裾野まで拡がっていることの利点を活用しない手はない。 うまく検索すると「一般的ではないがまさに求めていたとおりの情報」、 つまり、非常にマニアックな情報でも入手することが可能である。

情報リテラシとしての検索能力

「情報リテラシ」… gooinfoseek などの Web 検索エンジンでこの言葉をキーワードに検索すると、 約500件からのページが報告される。 ざっと眺めると、教育現場、あるいは企業内情報システム管理者などの立場から、 ずいぶん関心のある言葉ということがうかがえる。 そういえば本コラムでも昨年12月29日に 「年賀状で情報リテラシ」(澤部) という記事があった。

しかし、リテラシ(literacy = 読み書き能力)の語感からか、 ワープロでの文書作成や表集計ソフトの使い方といった、 旧来の情報処理教育に主眼が置かれているケースが多い。 目新しいところでも、プレゼンテーションソフトの使い方や、 最近の流行を取り入れて「ホームページを作りましょう」というぐあい。 一方で、インターネット関連の雑誌では、「検索の達人になろう」 といった特集が組まれていることも多く、 インターネット上の情報検索がいかに有用であるかがわかる。 ここはひとつ、氾濫する情報源から必要な情報を最小のコストで取捨選択し、 最大の効果を得るための技術も、「情報リテラシ」の一環としてとらえたい。

付加価値の創造へ

本当に大切なことは、こうして集めた情報が新たな情報を生む、ということだ。 新たな情報を産み出す能力もまた「情報リテラシ」のひとつではある。 だが、より良い情報を生産するには新鮮なネタが必要だ。 これだけ雑多な情報にあふれた社会になると、 ノイズに埋もれた貴重な情報源を発掘する作業は、 砂漠でコンタクトレンズを探す作業に近くなっていく。 それだけに、情報の取捨選択を手伝ってくれるツールは望まれるところであるし、 情報社会の一員として、情報を検索する能力はこれからますます重要になろう。 情報の取捨選択だけで疲労困憊して、新たな情報を産み出せないのでは本末転倒だ。

これを読んでいるあなた、無用な情報に振り回されてはいませんか ?

  • 衛星放送・CATVに関する情報を集めたページ: 次世代テレビの情報通になるには必見。
  • 衛星放送各社のページ: WOWOW SKY PerfecTV!, DIRECTVなど。
  • ケーブルテレビに関する情報はここ: 日本の CATV in Japan
  • 米国 Netcraft 社の調査:Web サーバの種別ごとの統計が出ている。 最近流行のオープンソースソフトウェアである Apache が半数以上を占めているなど、なかなか興味深いデータだ。
  • 各種インターネット検索やそれらへのリンクを集めたページ: 最強の検索
  • インターネット検索エンジンいろいろ。
    • Yahoo! JAPAN: いわずと知れた老舗中の老舗。
    • Infoseek Japan: 一時、自然言語検索を売り物にしていたけれど…
    • goo: 「人名検索」がわりと便利。
    • AltaVista: 上級者には Advanced Search が、かなり、使える。
    • LYCOS: マルチメディア検索機能がユニーク。
    • フレッシュアイ: 最近1ヶ月以内の新しい情報に限っている。実はそれで十分なことが多い。