1分間で500文字読み、50文字書く時代
「昨日、スマホでニュースを何時間見たか思い出せない」、「資料を書くのに思った以上に時間がかかってしまった」という人は多いのではないだろうか。情報が溢れる昨今では、「文章を飛ばし読みする」、「文章を書かない」という大胆な文書術が実現できる、人工知能による自然言語処理技術に注目が集まっている。そうした自然言語処理技術が現在、また将来どれくらい使えるようになるのか、本稿で改めて考えてみる。
深層学習とIT企業が加速させる自然言語処理技術の発展
自然言語処理技術の研究開発は従来から行われてきたが、近年では深層学習の進歩と共に目覚ましい発展を遂げている。そうした発展を強力にバックアップするのは、ITビッグ4に代表される先進的なIT企業である。自然言語処理技術は実サービスへ応用しやすいため、それらのIT企業からの研究開発支援が手厚い。実際、自然言語処理関連の国際学会のスポンサーは、世界的なIT企業が務めていることが多い。
文章要約技術で時短読み
「文章を飛ばし読みする」ための文章要約サービスは、2013年に既にサービス化されている。ニュース要約サービスの SLICE NEWSは、1,000文字程度の記事を僅か数行に要約する。短時間で多くのニュース要約文を閲覧することが可能になったため、朝の短い時間でも社会情勢やホットトピックを十分に把握出来るようになった。一方で、現在の文章要約サービスは、学習に利用するデータセットが少ないため、要約精度があまり高くない。今後、学習データセットの整備と要約精度の改善が期待される。
文章自動生成サービスで作文代行
「文章を書かない」ための技術としては、今後身近になりそうなサービスに、文章自動生成サービスがある。文章自動生成とは、既存の文章を基に目的の文章を自動的に生成することを指す。記事自動生成サービスのarticooloを用いれば、キーワードを入力するだけで、記事を自動生成することが出来る。しかし、深層学習だけで文章生成を全自動化することはまだ難しい。生成された記事は、人間の作成した記事に比べると内容が不十分であることが多い。また、誤字、細かな表記ゆれ、読みやすさの改善は、日本語の書式ルールを用いた添削処理を必要とする。技術課題は多いものの、文章自動生成が高度化すれば、人間の作成する文章と遜色ない文章を自動生成できるようになる日も近いだろう。
文章を「書く」から「選ぶ」時代へ
文章自動生成は、まだ人手によるチェックを必要とするものの、私たちの文章作成プロセスを大きく変えるかもしれない。電通は、人工知能による広告コピー生成システムAICOを発表した。AICOは、キーワードを入力するだけで複数のキャッチコピー案を提案してくれるため、提案されたキャッチコピーの中から商品に最適なキャッチコピーを選択するだけで、誰でもコピーライターになることができる。人間は、文章を「書く」速度よりも「読む」速度のほうが早いため、案の中から「選ぶ」ほうが時間がかからないのである。私たちが日々作成する資料も、いくつかの候補案から選択するだけで作成出来るようになるかもしれない。
人間の文章1割、人工知能の文章9割
自然言語処理技術を応用したサービスは、今後ますます増えていくだろう。私たちの生活やコミュニケーションの中に、人工知能が生成した文章が入ってくることは間違いない。単純な文章作成を人工知能が代替してくれるならば、私たちの生産性は飛躍的に向上するだろう。数年後には、私たちが日常で目にする定型的な文書の多くは、人間が書いていない可能性がある。Take IT Easyのコラムも数年後には自動生成される日がくるかもしれない。