情報システムの運営状態は見えているか?

「情報システムの運営状態」という言葉から、皆様はどのようなことを想起されるだろうか。
日頃のシステム運用を担っている立場であれば、システム停止等の時間やシステム障害の件数などが、CIO的な立場であれば、投資の効率や運営の効率性が挙がるのではないだろうか。

また、経営層から自組織の情報システムの運営状態に対する漠とした質問(例:当社のシステムは他社よりもうまくいっているのか?)を受けて困るシステム部門の管理者や、システム部門からの報告内容がしっくり来ないために悩んでおられる経営層の方に出会うことがよくある。

立場によって異なる情報システム運営への「視点」「興味」

情報システムの運営に対しては立場によって以下に例示するように、様々な視点と興味がある。

立場 視点・興味
経営層(トップ) システム経費水準、システム投資水準、情報システムによる業務の効率性、戦略的なIT活用による競合との差別化、など
CIOもしくはシステム部門管掌役員 システム経費水準、システム投資水準、投資配分、システム運用の安定性・安全性、ユーザ部門のニーズへの対応の迅速性・柔軟性、など
開発リーダ システム品質、開発案件の納期遵守率、開発効率、新技術の採用、など
運用リーダ システム運用の安定性・安全性、運用経費の低減、災害対策の状況、など
ユーザ部門長 システム経費水準、自部門のシステム投資案件の状況、など
ユーザ部門実務リーダ システムサービスレベル、ユーザニーズとの合致度合い、開発案件の取上げ状況、など

立場の違いによる認識のズレ・感情的な対立

興味の対象は同じ「情報システム」もしくは「情報システム全体」であるにも関わらず、その認識は経営、ユーザ部門、システム部門で大いに異なることが珍しくない。その背景には、同じ基準や尺度で話をしていなかったり、お互いに方針や計画が共有されていなかったり、などの原因があることが多い。

認識のズレの例 問題の所在の例
経営部門 情報システムに対する支出水準が高すぎる 経営環境、投資余力の認識共有がない/情報システムにかかるコスト構造が明確に報告されていない/比較対照する業界・他社データが不十分
システム部門 コスト削減努力は十分に実施している
ユーザ部門 自社・自組織のシステム部門に相談しても案件が進まない 業務要件として固めるべき内容の粒度や深度の共通認識がない/投資対効果に対するハードル設定や算定方法の基準が不明確/他社動向やベンダ各社が提供しているソリューションなどの情報収集が不十分で付き合いの深いベンダのいいなりになっている(モノの導入が目的化している)
システム部門 ユーザ部門は何をやりたいのかはっきりさせてもらいたい/いつも高額の投資をしようとする
経営部門 システム投資が重要なのは理解しているが所期の効果が上がらないケースばかり/効果がわからない システム投資に対する効果の種類、算定方法、判断の基準が不明確/一度作ったシステムに対する評価・改善がなされていない
ユーザ部門 経営はなかなか投資してくれない

基礎データ、基準・尺度の設定、共有された計画の重要性

当たり前のことであるが、前項に上げたような対立を紐解くためには、その背景にある問題にアプローチする必要がある。中でも、共通理解を得られるデータと、その評価に用いる基準・尺度、行動や提案を照らし合わせるべき共有された計画があるのかどうか、という点が重要である。

費用と効果のデータ
特に、費用と効果に関するデータは重要だ。しかし残念ながら、システム別に「何にいくら費用をかけているのか」、「その効果はどうか」がきちんと整理されている企業は稀である。
費用の把握は難しい。たとえ社内端末で使う情報システムであっても、端末側・サーバ側にそれぞれ共通の基盤があれば、各システムの費用がどこにかかっているのかを識別することは難しい。
効果についても同様に、投資段階で何を測定するのか、定常的に稼働している情報システムに対して何を測定するのかが不明確な組織が多い。
事業や情報システムに関する計画
重点的な対応を行う領域(例:コスト削減を徹底的に図るシステム領域、積極的な開発投資を行うシステム領域、など)の認識が部門間でずれていて、個別案件の検討の際に対立を生むこともある。

息の長い取り組みでベクトルを合わせよう

結論は非常にシンプルだが、共通理解を得られるデータ、その評価に用いる基準・尺度、行動や提案を照らし合わせるべき共有された計画を作っていくためには、息の長い取り組みが必要だ。

特に、前項で上げた2点「効果と費用のデータ」「事業や情報システムに関する計画」に関連して、それぞれ以下のポイントをあげたい。

  • 異なる立場であっても共通認識を得られるような、基礎データをきちんと収集・蓄積することは、情報システム部門、ユーザ部門の責務である。
  • 情報システムに関する全体に対する計画を経営、ユーザ部門、情報システム部門で共通認識として持てるような検討が必要となる。