運用の改善に取り組む

ITコストの適正化を進める上で、運用と保守の領域は手をつけにくい領域として残ってきた。もちろん、改善を行っていないわけではないが、現在の運用の品質を落とさない範囲で、各システム・チームの自助努力の範囲での改善活動を実施してきた組織が多いのではないだろうか。

典型的な運用組織の問題

下図に示すのは、典型的な問題をはらむシステム運用組織の模式例である。
システム別もしくはシステム領域別にチームわけがあり、さらに技術レイヤ別に要員スキルの観点や対応の共通化を狙ってチームを切っている。

運用組織の配置(模式例)図:運用組織の配置(模式例)(出所:三菱総合研究所)

  • 1. システム別のサービスレベル(目標)がレイヤ別に展開されていない
    • 結果として各チームの維持すべきサービスレベルが不明瞭となり、運用品質をチェックするKPIが設定できていない。
  • 2. チーム間の横串機能が弱いもしくは存在しない
    • 個々の現場は「まわっている」が、全体として統一した水準で管理したい領域の管理ができていない。結果として、リスク・セキュリティ、コストの管理や要員の育成・管理が十分になされていない。
  • 3. バラバラのツールの使用により、情報集約がされていない
    • インシデント、資産等々の情報がバラバラのツールで管理されていたり、ツールとEXCELシート併用になっていて、情報集約ができず、結局、関係チームリーダーが集合しないと全貌がつかめない。

クラウドの活用が広がっていることも、さらに運用管理の全貌を見えにくくしている。

運用組織の課題への取り組みの必要性が増している

新規投資の対象として、リリースまでの期間が非常に短いテーマが珍しくなくなってきた。ビジネスイシューに対していかに早く対処できるか、またいかに低コストで仕組みを立上げたり、維持できるのかが本格的に問われることになる。運用側から見ると、新たなサポート業務や仕組みがどんどんやってくる状況が想定される。

運用組織は、更なるコスト低減やリスク対処能力の向上が求められる中で、さらに上記のような新たな運用対象が入ってくる事態に対応する必要があることを強調したい。
しかしながら、このような事態には、これまで、開発後、運用移管された後は粛々と運用を行い、個々の領域の中の個別最適を中心に進めて来た組織運営、(自動化などの)ツール導入のみに頼った改善では、とても対処しきれない。

ぜひ、自社の運用態勢をチェックして、適正な運用の単位に切り直したり、運用に関するKPIを見ながら改善を図るなど、運用上の課題に抜本的に対応することをお勧めしたい。

  • スキルと運用品質の両面から見て適正な運用単位の検討・・・運用引継ぎを受けた単位ではなく、スキルや運用品質を一定に保つべき領域ごとに単位を見直すなど。
  • 運用KPIの設定・・・一気にすべてを設定しようとしても挫折してしまう。まずは、今もっている目標をきちんと明文化することと、その目標がシステム全体のSLA等と整合しているのかをチェックすることから始める必要がある。
  • 上記を可能にする基盤の整備・・・バラバラのツール、EXCELで各チーム内に閉じている情報があれば可能な限り、一元的に管理可能な基盤を整備。突き詰めていくと職人芸ともいわれている運用の世界を少しでも、組織だったものにする第一歩でもある。
  • 運用企画機能の確立・・・上記のような施策を企画推進する機能を確立。運用品質・コスト等を横串をさして管理・改善を図るとともに、技術的に解決することが可能な課題について情報収集と積極的な検討を行う。

取り組み上の留意事項

ほとんどすべての組織で、運用は自社内だけでは完結せず、継続的に自組織のコアなシステムを見てきたパートナーや、ネットワークベンダ、クラウドベンダが関係してくる。これらのパートナー、ベンダとの責任分界や役割分担を適正な状態に置くことが求められる。また、自組織の成り立ち(合併会社など)や、人材スキルセット・年齢構成といった側面にも十分に留意をして、幅広く現状把握をしたうえで、ITガバナンス全般に目を向けた目標設定をする必要がある。

これらの取り組みを進める上では、運用領域ではこれまであまり重視をされてこなかった企画機能が十分に機能を発揮できるよう態勢を作る必要があると考えている。ITILの適用を目論んで「力尽きてしまう」例もあり、自組織の「身の丈」にあった改善を狙う必要がある。中長期的には更なるシステム要員の不足が予測される中、ぜひ、運用領域の改善にも取り組んでいただきたい。