自動運転にも「人間らしさ」を

自動運転車の登場やサイドミラーのデジタル化承認など、
最近、自動車の運転支援に関するニュースに事欠かない。
ブレーキアシスト、車線維持・逸脱警報や後方接近車両検知機能といった既存の運転支援機能も低価格化・標準装備化が進んでいる。今回は、運転支援機能の要素技術であるセンシング、認識、表示(インタフェース)について概観した後、今後、自動運転の増加に伴って必要となる運転支援について論じたい。

センシング・認識・表示の3要素が発展

センシングは人間の眼の代わりとなる技術である。
レーダーやソナーなど他のセンサーと組み合わせることもあるが、イメージセンサー(カメラ)が機能の実現に大きく影響を与える。白飛びを防ぐためのダイナミックレンジの拡大、精度向上につながる画素数・フレームレートの増加といった技術の進化とともに、低価格化が運転支援機能の普及を後押しした。

課題は極端な走行環境への対応だ。
先日、テスラの自動車が自動運転中に事故を起こしたが、その原因は明るい場所で白いトレーラーが認識できなかったためとも言われている。テスラはイメージセンサーとレーダーを併用しているが、それでもトレーラーを認識できなかった(センシングと同時に認識技術の課題でもある)。似たような環境として西日やトンネル出入り口が挙げられる。他にも雨雪や霧といった「前が見えない」環境への対応も必要だ。複数のセンサーを組み合わせて多様な環境への適応を図ってはいるものの、極端な環境では機能を停止させドライバーに明示的に通知するといった運用での対応も必要かもしれない。

認識技術は、今話題の「人工知能」だ。
センシングデータから周囲の環境を認識する。
車線維持であれば白線(レーン)の認識が、自動運転ともなれば標識・他車・歩行者等、
周囲のあらゆる状況を認識しなければならない。
人工知能で注目されているディープラーニングが注目されている分野でもある。
課題は市街地などの複雑な環境での誤認識・認識漏れを如何に減らすかだ。
環境が複雑になるほど計算量は膨大になることから、自動車メーカー各社だけでなくGoogle等のIT企業も積極的に取り組んでいる。

表示(インタフェース)には主にディスプレイが該当する。
多くの情報をわかりやすく提示するために大画面のタッチディスプレイを搭載する(テスラ)、
ドライバーの視線の移動を小さくするためにダッシュボード上の透明な板に映像を投影するシースルーディスプレイを搭載する(トヨタ等)、ルームミラーをデジタル化する(日産)といった取組みがなされている。

今後は技術だけでなく見せ方の工夫も必要だろう。
たとえばサイドミラーをデジタル化する場合、
単純にダッシュボード脇にディスプレイを置いただけでは、ドライバーは不自然に感じてしまう。
場所がカメラの位置と一致していないことに加えて、カメラが単眼のため奥行き感を得にくいためだ。
ステレオカメラで撮像した映像を立体ディスプレイに表示するという方法もありそうだが、コスト・技術的に難易度が高い。
逆転の発想で、ミラーとまったく関係ない位置に表示するということも考えられる。
ミラーの位置にディスプレイがあると無意識にミラーの映り具合と比較してしまうが、たとえばハンドルのすぐ脇に表示されれば
ドライバーは別の機能と認識して不自然さを感じないかもしれない。

実際には、国内外の基準でディスプレイはミラーに近い位置に置くことと規定されているため、現在のサイドミラーとまったく異なる位置に置くことは難しい。

自動運転の発展とともに運転支援機能の進化は終わ・・・らない!?

上記のような技術課題の解決により、この先、自動車専用道路では自動運転の実用化が進み、普及価格帯の車にも標準装備されるだろう。
他方、市街地では引き続き人間が運転する必要があるため運転支援に対するニーズは残ると考えられるが、市街地での自動運転も徐々に増えるだろう。そのとき、運転支援に対するニーズは減るだろうか?

筆者は、自動運転車と通常の自動車が混在することにより、逆に新しい運転支援技術が必要となると考えている。自動運転と手動運転の混在下では両者を取り持つ機能が求められるのだ。
たとえば、自動運転車とはアイコンタクトやジェスチャーができないため、譲り合いができなかったり、結果として事故が発生する可能性さえある。他にも感謝の意を伝えるハザードランプや進路を譲るパッシングライトなど、円滑なドライブを実現するために人間が培ってきた「ノウハウ」がある。これらを何かしらの形で実装してほしい。
実装に際しては標準化が課題になるが、互いに運転状況を通知する車車間通信や、ライトの点滅等で外部に「意思」を伝えるといったことが考えられる。少なくとも自動運転中であることを知らせるサインは必要だろう。

自動運転は便利でドライバーの負担を軽減してくれる半面、外部からは意図が読み取れないという欠点がある。
すべての車が自動運転となるまでは、「人間らしさ」を期待したい。