できていて当たり前と思われがちで、組織としてなかなか「できていません」と言い出せないのがIT契約の管理ではないだろうか。もちろん、内部統制的には問題なく、正式な契約の承認プロセスを経て契約が結ばれているものの、いざとなると必要な情報が出てこない。
IT契約管理の実態
ITに関わる資産やそこから生まれる情報の範囲は広く、狭義のIT資産の情報(システム一覧、HW資産情報、SW資産情報)の他に、IT契約の情報、システム部組織の予算・実績の情報、IT支出の情報、契約に基づく作業の予定・実績の情報、利用状況の情報、各種の設計情報などがある。
これらの情報の中でもシステム維持・保守に直接かかわる狭義のIT資産の情報や設計情報以外は、担当者別にバラバラに管理されていることが多い。その結果「ITに関わる膨大な関連書類や外部委託の支払明細等の精査に多大な工数がかかる」、「事例や過去の経緯が共有されていない」、「契約の見直しなどの実地のアクションに必要な情報がすぐに抽出できない」といった事態が発生する。
ITに関わる情報が担当チームや個人ごとに分断された管理にゆだねられている
ITに対しては、さまざまな役割・視点での管理が必要であることを反映して、情報の発生源・管理者もわかれている。たとえば、IT企画担当が主体的に管理しているのは、組織予算・実績の情報であり、個々の開発案件や保守の情報は開発部門やオーナー部門が、運用に関する情報は運用部門が、契約・支払については別の管理部門が担うなど、管理主体が異なっている。 結果として、たとえば、IT企画担当がシステム全体のコスト精査を行おうとした場合など、必要な契約情報(どのシステム・どの機器・SWに対して、何の目的で、どの企業に、どういった仕様で、どんな期間・金額条件か)を収集できない。
そのため、実務を担う各担当からは、何かあるたびに細かな情報提供を求められて負荷が高いといった苦情が出ることにもつながる。
IT資産管理・IT契約管理を合理的な負荷で実施する
適正なIT資産管理・IT契約管理ができれば、システムの支出を含めた概況を素早く確認でき、予実管理も合理的な負荷で実現できる。また、ITコスト適正化の活動も、一時的なお祭り騒ぎではなく、定期的なプロセスに組み込んで、実行が可能になる。 そのためには、IT資産・契約の情報が発生したところで、無理なく蓄積できるように、システム部門の業務を組むとともに、情報の蓄積・照会が容易な仕組みを用意することが有効である。
皆様の組織でも、狭義のIT資産の管理を行う仕組みは、整ってきていることが多いのではないだろうか。次のステップとして、IT契約や検収・実績管理に係る業務プロセスに、IT契約の管理として必要な情報を登録する作業を埋め込むことをお薦めしたい。その際、(負荷を高めないように)ツールの助けを借りながら、IT契約の管理をしっかり行う(※)ことで、ガバナンスレベルを向上しながらITコストの見直しにも取り組めるようになるだろう。
※IT企画担当がツールの助けを借りながらデータを集約入力することや、協力企業とデータ登録の取り決めを行うことも有効である。
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