人工知能は早い者勝ち

営業のAさんは出社するとPCを起動した。営業支援システムを開くと、

「今日はまず△△さんのアポを取りましょう。△△さんは信頼関係を重視しますので、拙速に提案せずしっかり話を聞く時間を確保すると良いですよ」

という案内が出た。

これは未来の話ではない。現在の人工知能の技術で実現できる仕組みだ。

Pepperや自動運転自動車など、人工知能が日常生活を変える可能性が消費者にも見えてきた。
しかし、不特定多数の利用者やあらゆる事態に対処しなくてはならない日常生活への応用は、実用化へのハードルが高いのも事実だ。
一方、業務利用は消費者向けよりもスコープが限られているため、人工知能を応用しやすい。Watsonがコールセンターへ導入されていることもその一例だ。

今回は人工知能の業務利用、とくに収益拡大に直結する営業・マーケティングへの応用を考えたい。

人工知能によるさらなるマーケティングの自動化

マーケティング業務は自動化が活発だ。
「マーケティングオートメーション(MA)」や「キャンペーン管理」と呼ばれるシステムのカテゴリもある。
MAは、指定した条件に合致する顧客に対して、指定したタイミングやイベント発生時に自動的にアプローチする仕組みを提供してくれるが、使いこなすのが難しいシステムでもある。
一番の問題は「指定した」の部分をどうするかである。
通常は、「30代・女性、かつ、○○に住んでいて過去1年に○円以上購買した顧客」といった条件を人が指定する必要がある。
この条件はデータを分析して有望なセグメントを導く(=手間がかかる)か、経験・勘で設定する(=精度が悪いかもしれない)。
さらに、人間が考え、設定する必要があるため、あまり複雑な条件は設定できない。

人工知能を使えば、最新の機械学習手法を用いて自動的にターゲット顧客やタイミングを設定できるようになる。
その結果、個別の施策の精度が高まることはもちろんのこと、人間は施策テーマや、Webページ・DM等の制作物の検討に注力できるようになるため、一層の効果向上が見込める。

精度とブラックボックスのトレードオフ問題

マーケティングに人工知能を活用する際に気をつけたいのが「ブラックボックス化」だ。
人工知能は、最適なターゲット顧客を導くのは得意だが、それがどんな人なのかをわかりやすく人間に示すのは苦手だ。
とくにディープラーニング等、最新の機械学習手法になればなるほどその構造はわからなくなる。

しかし、相手がどんな人なのかわからなければ、適切な制作物は作れない。
人工知能導入の際には精度向上を図るだけでなく、ブラックボックス化を防ぐ手立ても必要なことを忘れてはならない。

営業への応用 ~ 営業社員と顧客マッチングの最適化

営業も人工知能を適用しやすい分野だ。
①誰にいつ何を、②どの営業社員が、③どのようにアプローチすべきか。
これをすべて人工知能が最適化してくれる。

①は人工知能が最も得意とする分野だ。機械学習によって過去の類似の実績データから商品ごとの顧客の購買確率(あるいは離反確率)を予測できる。
ただし、営業はそう単純ではない。
相手は生身の人間であるため、顧客と営業担当の相性も重要なため、②・③も考慮する必要がある。

たとえば次のような方法がある。まず、各営業社員の営業スタイルやスキルをCRM(顧客管理システム)に蓄積したデータやアンケート
等で定量化するとともに、 顧客の志向性を過去の履歴や営業社員からのヒアリングにより特定する。その上で、営業社員特性と顧客志向性の組み合わせと購買確率を学習させることにより、各顧客に最適な営業社員を割り当てることができる。

冒頭に示した営業支援システムは、こうした仕組みを作りこむことにより実現できる。

優れた人工知能もデータがあってこそ

問題はいつ着手すべきか、という点である。
人工知能の導入は、実装だけでなく営業・マーケティング業務の大幅な変更も伴う。
そのため二の足を踏む、あるいは、競合他社の動向を見ながら、という企業もあるだろう。
人工知能に早期に取り組むことで得られるメリットは何だろうか。
前述のように部分的に人工知能を活用して営業効率を高め、競争力を強化できる点はもちろんだが、もう一点、活用を通じて人工知能の高度化に必要なデータ(※)を見極め、蓄積を始められるという点もある。

※たとえば対面営業なら、ウェアラブルデバイスを身に着けて顧客の表情・音声や営業職員の心拍・汗といった情報を活用するようになるかもしれない

優秀な人工知能が登場したとしてもデータがなければすぐには活用できない。
当面の競争力強化だけでなく長期的な目線からも、早期に人工知能を活用し始めた方がよいといえるだろう。

さあ、あなたの会社も人工知能に取り組みませんか?