4年前、スマートフォン×センサに焦点を当ててセンサで広がるサービスについて投稿した(前回記事:「個性的なサービスが続々、センサで広がるサービス」)。スマートフォン×センサというモデルは今も同じだが、センサの種類や機能、デバイス技術はそれから大きく向上しており、新しい形のセンサやウェアラブルデバイス、そして、それを活用したサービスが登場している。
2025年の生活
ランニング中、ピピピと音が鳴った。スマホが、「あと30分後にトイレに行きたくなります」と教えてくれる。これは大変。さっそく方向転換をし、家に向けて急ぐ。家の前につくと、指輪を付けた人差し指を一振り。ドアのロックが外れる。そして、難なくトイレへ。 トイレを出て一安心すると、次はリビングで今日のランニングの結果をスマホでチェック。記録されているランニング中の心拍数をチェックし、今までより体力が強化されてきていることがわかってもう一安心。ピピピピ。またスマホに通知がきた。我が家のスマートなトイレから、「ちょっと血糖値が上がっているよ」というアドバイス。そうか…ランニングのご褒美のアイスはお預けか。
こうしたシーンが2025年には普通になっているかもしれない。このシーンで挙げた技術はすべて現状で提供されているサービスであり、今でも実現可能なシーンだ。
新たなウェアラブルデバイスの形
ランニングの心拍数はウェアが計測してくれる。ゴールドウインが2014年12月に発売したトレーニングウェア「C3fit IN-pulse」は、着るだけで心拍数がわかる「トレーニングウェア」だ。ランニングに邪魔になるような機器をつける必要はなく、着るものなので持って行くのを忘れることもない。「自然な」ウェアラブルセンサである。
こういった衣服型ウェアラブルセンサは、他にも多くの企業が取り組んでおり、ウェアに留まらず靴下までもがウェアラブルセンサ化されている製品もある。ウォッチやメガネなどのデバイスの次の本命候補といえるだろう。
自然な」ウェアラブルセンサとして、使い捨て型の貼り付けシールのようなセンサもある。Vital Connect社のウェアラブルセンサ「ヘルスパッチMD」は、心電図や心拍数、呼吸状態、姿勢、体表面温度などを収集でき、胸部に貼り付けて使用する使い捨て型センサだ。まだランニングに使えるほど安価にはなっていないものの、ちょっと使いたいときにぺたっとつけて使用できるほど安価になれば、ウェアラブル利用の敷居が大きく下がるかもしれない。
今までのウェアラブルデバイスは、ウォッチにしてもメガネにしても多少なりとも自然ではなく、装着する煩わしさがあった。今までのデバイスより「自然」に身に着けられるということは、今後の普及の大きなポイントとなりそうだ。
センサからのデータ解析能力も向上
センサの計測技術の進歩に伴い、計測できるデータも大きく増えているし、また解析してわかる情報も増えている。
上記であげたスマートなトイレ。サイマックスというベンチャーが小型・低価格のトイレに後付けできるセンサの開発を進めている。そのセンサをつけると、自動で排泄物の分析を行ってくれて、糖尿病、痛風、高血圧・心疾患リスク、感染症などのモニタリングをしてくれるという。
これは変わり種ではあるが、内蔵された超音波センサで体内の動きをモニタリングして、排尿、排便のタイミングを教えてくれる、排尿、排便でお困りの方々向け排泄予知ウェアラブル「DFree」も開発が進められている。
自然なウェアラブルによるさりげない健康管理
取得できるデータが増えて、今まではわからなかったような情報もわかるようになってきている。人工知能技術の発展もあり、そういったデータから何か傾向を読み取ろうという風潮もまた強くなっている。デバイスも、衣服型から使い捨て型のセンサまで技術革新が進んでおり、自然なウェアラブルデバイスの普及が近い。
今後、自然なウェアラブルデバイスが中心になれば、もっと気軽に生体情報を取得し、スマートに、かつ意識していないと忘れるぐらいさりげなく健康を日々管理する。そういった新しい生活、そしてそれを支えるサービスの波が近づきつつある。
本文中のリンク・関連リンク:
- 過去のコラム:「個性的なサービスが続々、センサで広がるサービス」(2012年2月28日)
- 国内初の“着る”ウェアラブルセンサ「C3fit IN-pulse」
- 「足を計測する、ウェアラブルデバイス CES2016レポート」:インソールや靴下から靴までがウェアラブル化
- Vital Connect社のウェアラブルセンサ「ヘルスパッチMD」
- 指輪型デバイスを発売しているLogbar
- クラウドファンディングを実施した排泄予知ウェアラブル「DFree」
- 医療カンファレンス「Health 2.0」でトイレに装着する小型デバイス「SYMAX」が優勝