ワークアウト製品の進化に役立つ運動の先延ばし

年に一度の健康診断の結果で、何らか運動を続けなければと認めざるを得ず、手始めに活動量計を筆者は購入した。リストバンド型で心拍数等を取れ、データをスマートフォンにBluetoothで送れる優れものである。もっとも、これだけで運動不足という問題が解決するかというとやや疑問ではあり、果たして疑った通りにはなっている。しかし、こうした不安を抱える運動不足な層が、ワークアウト分野の進化を支えているのではないか。次の3方面におけるワークアウト製品の特徴的な動向から、そう前向きに捉えている:
①ソーシャルサービスと連動する製品
②将来の見通しを与えてくれる製品
③将来の見通しを与えてくれはしないが、予感をさせてくれる製品

①ソーシャルサービスと連動する製品

傘までシェアをする(UmbraCity)ような、シェアやソーシャルが隆盛このご時世、こうしたソーシャルサービスによる運動不足への解はあると予想される。その中で尖った印象のあるサービスに、アパレルブランドのBjörn Borgによる“Sprinter”がある。Sprinterでは、ワークアウトを一緒にする相手を探し出せる。同ブランドのセンサー付きのウェアを身にまとい、似たトレーニングをしている人や似た好みを持つ人と、Sprinterの中で知り合い、日取りを決めてワークアウトをする。ただし、こうしたメッセージを送るためには、トレーニングをしてポイントをためておかなければいけない、というものである。スマートフォンのアプリのパーソナルトレーナーではやがて飽き、フィットネスクラブのパーソナルトレーナーには営業時間に行けない、そもそも敷居が高いという一般に予想される状況を考えると、同ブランドの宣伝効果以上の価値があるのかもしれない。ただ、実際のところFacebookのIDを登録してとなると二の足を踏んでしまう。

②将来の見通しを与えてくれる製品

そこで、別の付加価値を考えると、将来の見通しを与えてくれることではないか。筆者のように買ったそばから続くか不安な人たちもいるはずだ。それに対して、活動データを集めた後、および集めるのを止めた後を狙ったデバイスに注目したい。

まず、『買った製品の将来』としては、データを取るのをやめたときに不燃物のゴミ袋にそのまま行くのかどうかである。例えば、筆者が買った活動量計は、忘れ物防止タグにもできる(参考: “The O”。)。一定距離離れるとBluetoothの通知によりスマートフォンが鳴動する。心拍数をとれる活動量計でも、心拍をとらずに電力消費を抑えた省エネモードを持つ製品は、先見の明があると感じてしまう。もちろん無駄が多いのだが、月々お金を取られるわけでは無いので長く使えた方が良い。

次に、『買った人の将来』がある。例えば、運動をサボっている時、このままだとこうなりますよ、という姿を鏡に映し出す“Future Self Mirror”というコンセプト作品がある。グリム童話の白雪姫で、意地悪な王妃の問いかけに答える魔法の鏡があるが、こちらの鏡も一部機能を再現しており実に恐ろしい。仕組みとしては、活動量計等のデータを分析し、モーションセンサー等を活用して鏡像を映し出す、拡張現実(Augumented Reality)の活用例でもある。そこには、半年・1年後の自分の予測体型が映し出される。まだコンセプト作品であり、実用化はしていないものの、収集したデータをグラフ以外の形で活用するという方向性は期待できるように思う。なお、まじめに運動している人には良い姿を映すとのことではある。

③将来の見通しを与えはしないが、予感をさせる製品

さらなる付加価値としては、予感をさせてくれることだろう。例えば、筆者は次の一手として、日本国内への発送がまだ無い、米国のみで販売されている、速く走るためのコーチングをしてくれるアプリと連動したセンサー付きウェアを買おうとしている。これが来たらやろう、良くなるだろう、という腹積もりである。いわゆる先延ばしであるが、「意義ある先延ばし理論」によると、「何かを先延ばしをする代わりに他の多くのことを成し遂げる」らしい。

こういう先延ばしをしたい層がKickstarterのワークアウト用製品の進展を支えているのではないかと感じている。Kickstarterでは、表紙の15カテゴリーに入っていないものの、執筆時点で、”workout”の検索結果は246件で、多少の誤判定はあるかもしれないが、実は表紙の15カテゴリー中、6カテゴリーの件数よりも数が多い、隠れた一大勢力になっている。

運動を始められない、続かないとお悩みの読者の方も、まずはこの手のデバイスを調達しようとすることをお勧めする。結果、自分が健康にはならなくても、他がはかどり、一部の市場が活性化し、世の中が健全になる。そして、もしも運動まで続けば言うこと無しだ。

なお、「意義ある先延ばし理論」は2011年のイグノーベル賞を受賞したことを最後にお伝えしておく。