設計大進化!ビルディングインフォメーションモデリング

昨今の都市開発や土木プロジェクトは環境への配慮や、災害対応などの建築後の維持管理までを想定した設計や施工が強く求められている。
そのような背景のもと、ビルディングインフォメーションモデリング(BIM:ビム)という設計手法を大きく変革させる技術が注目されている。

仮想的に建築物をまるごと作って設計を試行錯誤できるBIM

BIMとは、建築物の資材の形状や素材や価格など様々な属性の情報を組み合わせたデータ表現モデルを用い、設計や施工そのものをシミュレーションすることができる建築手法である。

旧来の設計手法に用いられていた3DCADデータが図面のデジタル表現に留まるのに対し、BIMは仮想空間上で壁や扉といった建築資材を組み立てるモデル表現だ。その上であらゆる観点からの可視化や特殊環境下における建物のシミュレーションを行う。もちろんBIMで作り上げた統合モデルから図面をアウトプットすることも可能だ。

BIMの凄さは、本来莫大な枚数の個別設計図や建築資材情報で管理するところを、一つの統合モデルで全て管理し、かつ設計変更時の整合性を自動でとってしまうところだ。これによって早い段階から、具体的な設計からモックアップの目視確認・修正といったサイクルを極めて迅速に回すことが可能になっている。

BIMの効果を端的に表す最近の事例として、スペインのサグラダファミリア(1882年着工)の工期短縮が挙げられる。今まで手作業かつ試行錯誤に時間のかかっていた構造解析を、仮想空間上の作業に置き換え、300年はかかるとされていた工期を半減させたのである。現在では2026年の完成を目指し、建設が急ピッチで進められている(BIMと連携した3DプリンタやCNC工作機械の技術も工期短縮に貢献)。

海外に追いつき追い越せのBIM活用

BIMの活用は海外で先行している。2007年ごろから、欧米で公的機関や民間企業がBIMによる建築モデルデータの納品を要求するようになった。特にアメリカではBIMの普及スピードは早く、McGraw Hill Constraction社が行った北米建築関係者向けのBIM活用実態調査では、2007年に3割程度だったBIM導入率が、2012には7割に達していると報告されている。また同社の調査では建築分野以外の土木分野においてもBIM活用が5割に達しているとのことだ。

アジアにおいてはシンガポールでの導入がいち早く進んでいる。建設局がBIMガイドラインを策定し、2015年度には、定以上の大きさの建物について全てBIMを用いた電子申請を義務化する。また、BIM導入企業やプロジェクトについて多額の補助金の交付をおこなっている。

日本では、2009年に官庁営繕事業にBIM導入プロジェクトが開始され、2014年にはBIMガイドラインが策定された。今後、公共発注機関に広く周知される見込みとなっている。また民間企業もBIMを本格的に導入している。既に大手ゼネコンはBIMを活用した国内・海外建築プロジェクトを多数実施しており、中小企業においても廉価版BIMツールの普及により導入が進んでいる。最近の事例としては、羽田空港のICT化プロジェクトの一環でBIMを保守管理や新サービスに活用することが明らかとなった。

人材面・情報連携面の課題解決が必要

以上のように活用の裾野が広まるBIMだが、その進展の速さゆえの課題も生じている。

特に、国内のBIM活用の進展には人材教育面の充実化が必要だ。国内においてBIM技術者はまだまだ少なく、教員自体の数が不足している現状もある。今後大規模な社会インフラ整備を控える日本にとっては、BIM関連のITスキルを備えた人材育成が急務である。また、国内においてはBIM教育を提供できているところ自体が少なく、教育講座がある場合でもシミュレーション等のBIM特有の応用操作までは教えきれていないことが多い。具体的なOJT型の教育ケースを整備するなど産学の連携が今後必要だろう。(先行事例–日本工学院八王子専門学校)

また、建物に関連するシミュレーションの自由度が高まったことで、多種多様な環境情報との連携ニーズも増している。特に、震災時・津波時の建物の構造変化、火災時の避難安全策のシミュレーションの事例は研究事例がいくつか報告されているが、その際連携する自然シミュレーションシステムとの入出力方式は個別対応となっており、統一的な基準があるわけではない。研究レベルの底上げを行うためにも、基本的なデータについては共通的な連携方式等の検討が必要である。

伝統工法や仮想空間技術との連携を期待

IT技術によって格段に既存の建設プロセスが効率化したBIMだが、さらなる高度化を期待したい。

特に、取り入れて欲しいのが日本の伝統工法だ。湿気が多く木材が豊富な環境で発展したいわゆる匠の技術は、日本人としては失いたくないものだし、やっぱり木材が取り入れられた建造物は心地よいものだ。木材を始めとした和の資材とコンクリートといった属性の異なる素材をどう組み合わせればよいのか、伝統工法の知見とBIMのシミュレーション技術で新しい調和の形を見てみたい。

また、これから立てられる建造物を「まさにそこにいる感覚」で見てみたい。実際、UE4ArchUnity 5 Archvizなどといった3Dゲームエンジンから端を発した仮想空間技術やOculus Riftといった広視野角HMDは親和性が高そうだ。これらの技術とBIMを連携させれば、素人でも建設後のイメージがより一層つけやすくなるのではないか。設計段階での認識齟齬もさらに防止することが出来る。

モデリングや物理演算といったIT技術が、人の暮らしに大きく貢献しようとしている。一層の技術進展と既存技術との融合が望まれる。