ITコストの構造は見えているか?

企業情報システムを所管、統括する部署や、経営企画部門から見て、自社のITコストの実態はどれだけ把握できているだろうか?

「ITに関する案件の審査や、予算、実績の管理をきちんとやっている」という企業でも、過去から維持保守してきた基幹システムや、大型の投資に起因して、運用・保守コストが硬直化し、ユーザ部門の要求にこたえるだけの戦略的な投資枠を確保できていないという実態を多く目にする。実際、今年度の一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)のプレスリリース『「企業 IT 動向調査 2015」(IT 予算の速報値)』によれば、全体としてIT予算は微増傾向にあるものの、「IT 投資で解決したい中期的な経営課題」の設問に対して、「IT開発・運用のコスト削減」がTOP5に入っており、依然として、ITコストに対する経営サイドからの問題意識は高いと考えられる。

では、なぜ、一見ITガバナンスが効いている状況であっても、ITに関して必ずしも有効にリソース(ヒト・モノ・カネ)を使えていないという評価につながってしまうのであろうか。

繰り返される「ITコスト削減」の号令

経営やユーザ部門から見て主要な関心事の一つである、戦略的な投資の枠を確保し続けるためには、数年先まで何を原因としてコストが発生するかを明確にとらえて、投資管理を行うとともに、維持コストにメスを入れ続ける必要がある。しかしながら、多くの企業で、その状況には至っていない。
その結果、事業環境の変化などを契機に問題が噴出した後に、数年に一度の「ITコスト削減」の大号令がかかることになる。その場合、多少、強引な手法を用いてでもコストを圧縮することが至上命題とされ、結果的に、中長期的な観点で見て必要なシステム更改が遅れてしまったりする副作用を生むこともある。

IT資産とコストの関係を管理できていない

維持コストを含めたITコストを適正化しようとする際に実施可能な施策を明らかにするためには、IT資産と支出の関係を正しく捉えることから取り組む必要がある。そこで明らかになるのが、ITに関する管理の標準的な手法として案件管理や予算実績管理が浸透していても、IT資産と支出の関係が必ずしも明確になっていないという実態である。つまり、「ITコストの構造が見えていない」のである。
これでは、ITコストが、何の目的で何をしたから発生しているのか、それが個別の判断としての経緯だけでなく、全体としてバランスよく適正なものとして考えられるのか、判断ができない。


IT資産とコストの管理の実情
図:IT資産とコストの管理の実情(イメージ)

そこで、「コスト削減」の号令がかかると、できる範囲で紐づけを行い、なぜそのような費用が発生しているのかを調べ始めることになる。時間が足りなかったり、必要な情報が欠落していたりする場合、そのまま全体での削減金額の目標値を示して、ビジネスパートナーに相談しているケースも散見される。特に、ビジネスパートナーへの運用や保守の委託費などは、適正化が難しい費目の代表である。急に取り組もうとしても、一朝一夕にできることではないのである。

基本に忠実に台帳管理を実践して継続的なITコスト適正化を

コスト適正化を一過性の取り組みとして終わらせてしまわないための第一歩として、また、維持コストにもメスを入れ続けるために、どうすればいいのだろうか。
ITコストが発生する理由がわかるよう、ITにまつわる有形・無形の各種資産(システム、機器、その他の構成要素)と、支出の関係を把握するよう、基本に忠実に台帳管理を行うことをお勧めする。その際に、重要なのは、過重な負荷をかけることなく、情報を集めておくことである。

こういった管理が機能するためには、毎期の予算策定プロセスや、案件審査・開発プロセスにおいて、確実にIT資産とコスト発生や支出予定の紐づけを行うようにすることが有効である。
また、こうして蓄積したデータを活用したIT投資・経費の調整プロセスに基づいて、各種の判断・合意形成を行うことで、運用維持コストをできるだけ無理なく抑制しながら戦略的IT投資にも一定の枠を確保することが可能になるのである。