スマホ時代のポータルを目指すキュレーションアプリ
スマートフォンで手軽にニュースを読める、キュレーションアプリが注目を浴びている。最近は、テレビCMも流れており、電車でニュースアプリを使っている人もよくみかけるようになった。キュレーションアプリとは、日々生産される、新聞やニュースサイトのニュース記事、ブログ、ツイートまでを、インターネットサイトを渡りあるくことなく、一つのアプリでまとめて読めるようにしたアプリである。
特に最近、この分野のアプリとして存在感を高めている一つが、スマートニュース(SmartNews)である。スマートニュースでは、注目されているニュース記事を自動的に選定し、「政治」「経済」「国内」「国債」「テクノロジー」といったカテゴリーに分けて配信する。表示には、「Smartモード」と呼ばれる軽くコンテンツを表示する仕組みがある。記事を読み込むときに、Smartモードに切り替えると、主要なグラフィックとテキストがすぐに表示され、ネットへの接続状況が悪い時でも、記事を読むことができる等、スマホアプリとしての独自の工夫も盛り込まれている。
もう一つが、「グノシー(Gunosy)」である。グノシーは、スマートニュース同様、注目記事をカテゴリ分類して配信してくれるほか、FacebookやTwitter、”はてな”のアカウントと連動させることで、ユーザの投稿内容から、趣味・趣向に合う記事を配信してくれる。また、配信は、朝刊と夕刊という位置付けで一日2回。インターネット上の「新聞」を標榜する。
キュレーションアプリの付加価値は?
そもそもキュレーションとは何か。キュレーションとは、元々、博物館や美術館等で、資料に関する鑑定や研究を行い、そこで得た知見から資料を整理し、一般の人にも見やすく展示することをいう。
それが転じて、特にネット上におけるキュレーションとは、インターネット上で情報を収集・整理し他のユーザーに配信するサービスを指す。コンテンツそのものではなく、コンテンツの位置付けやその解釈として付与するメタ情報こそが付加価値であり、ここにキュレーションサービスの存在価値があるといってよいだろう。
インターネット上におけるキュレーションサービスとしては、以前から、「Yahooニュース」や、ソーシャルブックマークの「はてなブックマーク」、ネット上にある様々な情報を、ユーザーが独自でまとめて公開できる「NEVERまとめ」等があった。上述した、スマートニュースや、グノシーは、さらにユーザの購読履歴によって得られる嗜好性をもとに記事を選別するという”機械学習” の要素、記事表示の綺麗さや動作が軽いといったスマホのネイティブアプリならではの優位性を新味として、スマホ時代になって新たに出てきた新興のキュレーションサービスである。
決定的な差別点をつくれるか
これらのキュレーションアプリ事業で一番大きな課題は、収益を生むビジネスモデルを確立できていないことだ。各社が喧伝するダウンロード数こそ、百万オーダー回数と華々しいが、収益につながっていない。今のところ、主たる収益源は広告であるが、キュレーションアプリを提供する企業は、上で紹介した2社以外にも、星の数ほど出現してきており、この分野は早くもレッドオーシャン化の様相を呈する。収益化基盤の確立のためには、配信するコンテンツの質や機能面で差を付けて、独自のポジションを獲得することが必要だ。
一方で、この分野での差別化は容易ではない。配信する記事の情報源は、契約先の新聞社やニュースサイトのコンテンツであり、大本の素材に大きな違いはない。キュレーションアルゴリズムも、ユーザの購読履歴やソーシャルの投稿内容から読者の関心を推測するといったものであり、各社で大きな違いは出しづらい。実際、昨年5月ごろ、グノシーが取り扱うコンテンツと、はてなブックマークが取り扱うコンテンツとの類似性について、ネット上で話題となり、これについて、グノシー社が同社のブログ上で声明を出すという事態も発生している。
こうした中で頭一つ出るためには何が必要か。Google社がRankPageアルゴリズムを引っさげて検索エンジンに参入したときのように、新味のある技術的なイノベーションや大量な計算リソースが必要なのかもしれない。そうでなければ、記事選別を、アルゴリズムで行うのではなく、センスの良い編集者が人手で行うことで、記事構成に独自性を持たせることも考えられる。NewsPics社はこの方向で、コンテンツの有料化も含めたキュレーションサービス事業を展開している。他には、閲覧する記事と関連の深いサービス・物の販売等、他分野のサービスとの連携も考えられる。
いずれにせよ、今は星の数ほど存在するキュレーションアプリ事業会社が、有限で高単価とは言えないスマホ広告費を取り合っている状況であり、今後は、広告主から選ばれる1、2社以外は淘汰されることになるだろう。独自性をアピールできる期間は、ここ1,2年程度であり、キュレーションアプリ各社は勝負の時を迎えているのである。