先週、家電やエレクトロニクス業界の見本市であるCEATEC JAPANが幕張メッセで開催され、入場者15万人を集めた。しかしながら、既に報道されているように、ソニーが出展しなかったり、昨年から引き続き日立製作所やKDDI等が出展しなかったことからも、一般消費者向けの効果にあまりつながっていないとする考え方が見受けられる。
今年の目玉は?
昨年は、4Kテレビが各社から大々的に展示されていた。一方で、今年は目玉となるような統一されたテーマがあまりなかったため、各社とも様々な展示がされていた。技術力をアピールする目的として、オムロンの卓球ロボットや村田製作所のチアリーダー部などの展示もあった。その中でも目立っていたのは、昨年から展示されている自動車関連とヘルスケア関連の展示だろう。ヘルスケアに関連する装置として、活動量計等の様々なウェアラブル端末が展示されていた。めがね型のウェアラブル端末であるスマートグラスも、東芝やセイコーエプソンなど複数の会社から展示されていた。こうしたスマートグラスは製品としては実用化の域に達しているが、一般消費者が屋外で使うには抵抗感が強いため、CEATECのツアーにも使われていたように、当面は特定ビジネス用途での利用が現実的だろう。
自動車向け技術
CEATECは家電メーカーだけではなく、自動車部品メーカーの展示も展示会場の面積の1/3を占めている。家電メーカーほど派手さはないが、車両のメーター等に使う自由形状の液晶パネルやヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)、透明ディスプレイなどに、ナビや各種情報等を表示する展示が多数見られた。また、パーソナルモビリティと呼ばれるホンダのUNI-CUBとセイコーエプソンのメガネ型ウェアラブルデバイスMOVERIOを使ったツアーが行われていた。これらは、ヘッドマウントディスプレイの具体的な活用方法を提案したものである。ただし、Google Glassが既に市販されている米国では、自動車の運転中の装着は認められていない。 自動車業界のプレイヤーの出展が増えていることからもわかるように、自動車を構成する部品が家電化しつつあり、自動車内の環境を快適にするためには、家の中と同様の環境を提供する必要があることを示している。家電業界にとっては、海外に多数輸出される自動車向けの製品を提供することは、一般消費者向け製品と比較すると性能や品質が評価されて価格競争が少ないため、有望な市場でもある。今後もこの傾向は続くだろう。
家電業界の行方
テレビは家電業界にとっても売上も大きく非常に重要な製品であり、4Kや8Kテレビに力を入れるのも理解できる。しかしながら、2011年の地上デジタル放送への移行やエコポイントに伴う国内特需でテレビを大量生産していた家電メーカーは、工場に大型投資をしたものの、それ以降需要が急激に減少し、大量在庫が発生し、各社のテレビ事業は赤字に転落している。買い替えが8年程度の耐久消費財であることを考えると、国内需要は当面期待できないが、2020年のオリンピックに合わせた4Kテレビへの買い替え需要が発生する可能性は十分考えられる。各社はそれまで持ちこたえられるだろうか。
また、ヘルスケア関連商品は、一般消費者向けにどのように利用できるのかをアピールしたものが多い。高度な技術を示して、モノを売るだけではなく、実際に使ってもらって利点があることを示すことが求められていることをメーカー各社は認識する必要があるだろう。そういう意味では、昔からあまり売れていない「インターネット家電」から形を変えたHEMS対応家電も、単に使用状況が見られたり外部からON/OFFできる程度では魅力に乏しく、別の魅力ある使い方を示さない限りは普及しないだろう。
家電業界全般では成熟しているが、掃除機や炊飯器など高額にも関わらず付加価値の高いプレミアム家電と呼ばれる商品が売れている。また、ルンバも掃除にかかる手間や時間を削減するということで、年間出荷台数が30万台を超え、掃除機市場の5%にもなるヒットにつながっている。ダイソンやレイコップの掃除機も新規市場を切り開いている。こうした事例からも、国内メーカーは他社製品と多機能で差別化するのではなく、利用者の明確なメリットにつながる技術をアピールする家電を出すべきだ。