アナウェアラブル

ウェアラブルデバイス

2013年1月の記事に「身近に持ち歩き、使いたい」ガジェットの登場を願っていたが、ようやく今年に入りウェアラブルデバイスが目につくようになってきた。前回のコラムでは指輪型入力デバイス、前々回のコラムではスポーツで活躍するウェアラブルデバイスについて触れられている。

話題となっているウェアラブルデバイスの筆頭はやはりグーグルグラスであろう。眼鏡型のフォルムにスマートフォンの機能を詰め込んだ、まさにドラゴンボールに登場するスカウターを具現化したものが、もうすぐ市販化されようとしているのである。すでにエプソンから「スマートグラス」として販売されているMOVERIOと比較すると、ウェアラブル度が飛躍的に上がっている。

数年前からスマートフォンを腕時計型デバイスに埋め込むことや、スマートフォンと連携できる腕時計型デバイスが発売されており、シェアは大きくないが定着しつつある。ソニーやアップルが新たなウォッチ型デバイスを出すのではないかと話題は多いが、中には手の甲に画像を投影するRitotなどの新たな発想のデバイスも開発されている。

その他には、衣服にデバイスを編み込んで一体化したものが発表されている。ラルフローレンはテニス四大大会の一つ、USオープンにおいてバイオメトリックセンサーを埋め込んだウェアをボールボーイや一部の選手に提供している。センサーから得られたデータはウェアに保存され、クラウドに転送された後に様々な解析が行われ、結果はスマートフォンで確認できる。同様のシステムはNTT、東レによって開発されたhitoeなど、多くのものが発表されている。これらはまさにウェアラブルである。

ウェアラブルシステム

枚挙にいとまのないウェアラブルデバイスだが、スマートフォンのような軽量、小型、省電力な端末がこれほど普及し、まだまだ技術革新は衰えを見せない現状では、ウェアラブルが流行るのは必然と言えよう。

最近のトレンドとして見逃せないこととして、グーグルグラスのようにシステムとして完結するものの他に、それぞれのパーツを分散させて、装着することによる弊害を取り除く工夫がされていることだろう。スマートフォンで音楽を聴きながらトレーニングをする人が多いことから、スマートフォンがウェアラブルのコアとなることは不自然ではない。スマートテニスセンサーはテニスラケットに小さなセンサーを付けるだけでプレーデータを収集し、その場で確認することができる。プレーへの干渉を最小限に抑えつつ、個人レベルでITを駆使したスポーツ分析が可能となっている。テニスだけではなく、ゴルフでも類似の製品が発売されている。

ビジネスの事例ではSociometric SolutionsのSociometric Badgeが挙げられる。今時の会社員は普通に着用している社員証に様々なセンサーを埋め込んで、社員のパフォーマンスやコミュニケーションの状況を分析できるシステムである。仕事を監視されているようで装着に気乗りはしないが、業務に支障をきたすことなく、正確に業務実績が記録・分析されるシステムであれば業務効率化に役立つ仕組みである。

気がつかないウェアラブル

グーグルグラスは確かにそそられるガジェットではあるが、やはり「着けている」感はぬぐえない。それより、眼鏡を掛けている人が多いことから、多くの眼鏡にアドオンできるウェアラブルガジェットのほうが浸透するのではないか。新たなデバイスには尖った機能やルックスが必要であることは分かるが、気軽に持ち運べることのほうが重要であるように思える。録音やオートリバースが当たり前の時代に、機能を片面再生だけに削いでパスポートサイズに拘った初代ウォークマンのように。

デバイスの「着けている」感はアーリーアダプタには好評であろうが、一般にはなかなか受け入れられないだろう。それより、常に身に着けているアクセサリーと融合できれば、進んで身に着けるようになるのではないか。例えば、ブレスレット型のモバイルバッテリーなどが出てきている。イヤホンケーブルに巻き付けてドレスアップするアクセサリーもある。オシャレとウェアラブルは相性が良さそうだ。

ウェアラブルであることが気付かない、あるいは意識しない、unawareable(アナウェアラブル)が今後のトレンドになる予感がする。