デジタルネイティブの定義は複数あるが、ここでは現在の20歳代を「デジタルネイティブ第一世代」、10歳代以下を「第二世代」と呼ぶこととする。いずれも物心ついた時からインターネットを介してコミュニケーションを行ってきており、新しいサービスへの順応が早いとされる。またSNS「炎上」トラブルもこの世代であることが多い。大学入試試験を質問サイトへ投稿した事件もまさに第一世代の学生だった。
写メから始まった第一世代のコミュニケーション
筆者は第一世代のど真ん中である。中高時代はカメラ付きガラケー(ガラパゴス携帯電話)で友人と写メ(写真付メール)を送りあい、大学でmixiを始め、スマホに乗り換え、twitter、Facebook(以下FB)、LINE等の複数のSNSを使い分けるようになった。とくにLINEはSNSというよりは主力コミュニケーションツールである。気軽な会話から連絡事項まで幅広い内容を小さなコミュニティで共有している。FBは知人全体へ伝えたい内容を投稿する場であり、知人からの反応を期待しているため多少推敲している場合が多い。Twitterは最も重要度の低い他愛のない内容を投稿する場である。見ず知らずのアカウントにフォローされている自覚があるため、個人情報を出し過ぎないよう気を使っている。とはいえ友人同士のリプ(リプライ、返信)の応酬時には会話が公開されていることを忘れ、不用意な発言をすることもあるのだが。このようにSNSを使い分けるようになった背景としては、数々の炎上事件によるリスクの認知度が上がったこと、またコミュニティ数が増えるにつれ、コミュニティに応じた内容を投稿する必要性が出てきたことがある。
Twitter とLINEに併せて動画サービスの利用が進む第二世代
第二世代も第一世代と同様に複数のSNSを利用している。ただし、その傾向は少し異なるようである。「主要SNS利用に関する実態調査」によると、20代ではFB、Twitter、LINEどれも利用頻度に大きな差はないが、10代の半数はtwitterを最も頻度高く利用しており、次いで4割がLINEである。20代の6割は複数のSNSに同じ内容の投稿をしないが、10代はtwitterとLINEに同内容を投稿する割合が3割を超える。このように、第一世代はLINE、FB、twitterを利用しながら、使い分けを意識している人が多いと言える。一方で、第二世代はLINEとtwitterを同じような目的で利用する割合が多いのだろう。
また、第二世代ほど新しいサービスを利用していることが多い。Vine、ツイキャスはSNSと親和性の高い動画投稿サービスである。これらのサービスは投稿動画へコメントを簡単に付けることが可能である。投稿動画へのコメントはニコニコ動画(以下ニコ動)が有名だが、ニコ動以上にスマホでの利用に特化している点が強みである。このサービスの認知度は、20代では2割程度だが10代では約4割になる(リビジェン)。2014年初にVineで人気となった動画も女子高生による投稿であった。第一世代は10代の頃から写メを送り、画像を扱うことには非常に慣れている。しかし動画の撮影が日常に入り始めたのはそれから10年たった比較的最近のことであり、まだ動画をコミュニケーションの一部に持ち込めていない。一方で小さいころからニコ動の動画上を流れるコメントに慣れた第二世代は、コンテンツをただ視聴するよりも、動画やコメントを発信し、フィードバックを受けることを楽しむ。友人同士でskype等を利用してお互いの動画を送りながらリモート勉強会を行う。
リア友だけではない第二世代の交友関係
10代のtwitter等への投稿を見ると、学校内のコミュニティ内に閉じた内容が多い。LINEの感覚でtwitterに投稿していると、普段から見知らぬ人へ公開している意識をあまり持たないのかもしれない。すると突然知らないアカウントから内輪ネタにリプライを受け、戸惑ったり不快を感じるのではないか。と第一世代としては心配をする。しかし第二世代にとっては見ず知らずの人とSNS上でコミュニケーションすることへの抵抗感が第一世代よりも低く、ネット上で知り合った人と直接会うこともままあるようだ(デジタルアーツ)。ネット上で知り合った人についてSNSからかなりの情報量を事前に集めることが可能、と言う理由もあるだろう。ネットとリアルの融合は第二世代の方が進んでいると言える。
リスクを避けるのではなく、適切な対処法を身に付けたい
第二世代は、新しいサービスの利用や柔軟なコミュニケーションスタイルを強みに、今後よりネット上で存在感を発揮することとなるだろう。ネット上での活動が盛んになればなるほど、炎上やフィッシングサイトへの誘導、なりすましアカウント、個人情報漏えいといったトラブルに出会う確率は上がる。しかし、第二世代のトラブル経験者は比較的情報リテラシが高いという結果もある(「平成25年度青少年のインターネット・リテラシー指標等」)。小さなトラブルにあったことで、リスクを認識し、対処方法を身に付けていることがうかがえる。第一世代の比較的慎重な姿勢と第二世代の柔軟なコミュニケーションスタイル。デジタルネイティブの危うさを指摘するのではなく、各世代が持つ強みや特徴に沿った情報リテラシを考えることが必要だろう。