プライベートDMP (Data Management Platform) をご存知だろうか?直訳すると「データ管理基盤 」。デジタルマーケティング分野のバズワードだが、このままでは何のことだかさっぱりわからない。
「プライベートDMP」≒「ビッグデータ時代のCRMシステム」
プライベートDMPは、CRMシステムの拡張版、あるいは、ビッグデータ基盤のマーケティング版と考えるとわかりやすい。 CRMシステムは、顧客が自社の製品・サービスを使った履歴を蓄積し、顧客満足度を高めるために顧客ごとに個別対応できる仕組みを提供するシステムである。 一方、プライベートDMPではCRMシステムが蓄積している社内情報だけでなく、ソーシャルメディアに代表されるインターネット上の情報、第三者から購入したデータ、オープンデータなど社外の情報も取り込むのが特徴だ。
これらの情報を分析することにより、顧客理解を深められる。たとえば、社内の情報のみでは属性(性・年齢・居住地等)と自社の取り扱う製品カテゴリの好みしかわからない場合でも、ソーシャルメディアの情報を組み合わせれば他の趣味・嗜好や活動範囲等も予想できるようになる。
ただし、社外の情報は全顧客について得られるものではない。たとえば、ソーシャルメディアの情報を収集するためにはソーシャルメディアのIDを取得する必要があるが、IDを教えてくれる顧客は一部に限られるし、そもそもソーシャルメディアを使っていない顧客もいる。データを第三者から購入する場合には個人が特定できるデータは削除されており、そのままでは顧客に紐付けることはできない。したがって、顧客と購入データの間で似た属性の顧客を紐付け、趣味・嗜好等を割り当てるという類推が必要となる。
外部データを活用する際にはプライバシーの問題がつきまとうが、本稿では触れない。
これらの結果は、単なる顧客理解に留まらず、商品開発、キャンペーン設計、ダイレクトマーケティング、マス広告等、様々なマーケティング活動に活用できる。
「導入ありき」は失敗の元
プライベートDMPはマーケティングの活動に活用できるとはいえ、その構築にあたっては注意が必要だ。ビッグデータへの投資との共通点も多いが、特に留意すべき点を挙げたい。
- プライベートDMPの活用目的は明確か? プライベートDMPの活用方法と必要なデータの取得方法(自社で獲得、他社から購入等)を明確にする。成果が不透明であれば、IT投資の前に小規模なテストマーケティングをしてみる。
- 社内で活用できていないデータはないか?
有用なデータが実は周辺システム、あるいは、MS ExcelやMS Accessのファイルとして存在している、ということは多々ある。流行に乗って外部データを取り込むのも良いが、まずは足元(社内)に転がっているデータを再確認したい。 -
外部データは柔軟に取り込めるか?
外部データ、とくにインターネット上のデータは変化が激しい。FacebookやTwitterが数年後も今の人気を誇っているかはわからない。一方、ウェアラブル端末を使ったサービス等、現在は影も形もない新しいサービスが登場する可能性も大いにある。世の中の動向に応じてデータを柔軟に取り込める設計にすべきである。 -
システムを活用できる人材がいるか?
ユーザフレンドリーな分析ツールが登場してきているとはいえ、まだまだ分析ツールの敷居は高い。マーケティングのアイディア・仮説に基づいてデータ分析できる人材が必要である。 -
戦略的な活動ができる体制か?
データ分析からわかることは事実のみ。将来はあくまで予測であり、百発百中のマーケティングができる訳ではない。試行錯誤を繰り返して精度を上げていくプロセスが不可欠である。 いきなり効果を求めず、じっくり取り組めるよう組織的な支援が必要である。
山のようにデータを蓄積しても活用できなければ「ただのハコ」。「データがあれば何でもできる」という妄想に陥らず、しっかりとビジョンを持って取り組みたい。