企業間の合従連衡・事業再編が加速する中で、業務や情報システムの対応能力の重要性が増している。本稿では、このような「外部環境変化」に対するオペレーション(業務、システム)の変化対応能力(組織知、人材)をどう蓄えるかについて、述べたい。
業務や情報システムが変化に対応できるかどうかは、迅速に事業戦略を実行できるかどうかにかかわる重要事項である。急に、自社の事業再編の話が持ち上がった際に、システムを含めて適応させる計画を作る指示を受けた場合、何をするだろうか?
現状の業務・システムのオペレーション定義を理解し、新たな事業目標に適応させるために、当たり前ではあるが、以下のような手順を踏むであろう。
- 業務の現状を把握する
- システムの現状を把握する
- 何を変えればいいのかの関係者合意を取りながら計画に落とし込む
ここで問題になるのが、トップダウンに行う変化の内容はオペレーション(業務、システム)のごく一部に言及しているに過ぎないため、トップダウンに指示される変更に伴って業務領域やシステムをまたぐ変化が多数発生することである。ここは、実際に計画を詳細化して、実行に落とし込んでいく個々の担当者の活動に委ねられる部分が大きい。個々の担当者は、担当領域の業務全てや、システム機能全てを押さえているかもしれないが、担当者が自律的に活動できない限り、大小さまざまな決め事で都度、立ち止まってしまうことになる。
- どういう理念で、何を変えるのかが方針としてきちんと展開されて共有されている
- 担当領域の周辺の業務・システムが見えている
- 隣の人は何する人ぞ、ではなく、コミュニケーションが取れる文化ができている
- 担当領域の業務・システムをまたぎ、担当間で決断できない事項を決め、展開するメカニズムが企業の中で構築されている
システム部から見た事業再編は突然であることが多く、1年足らずで上記の準備を行うことは難しい。目新しくはないかもしれないが、情報システム部門には日ごろから、システム運用能力、システム人材の育成を提言したい。
- 業務に踏み込み、なぜ、各々のコントロール(例:業務上の統制ポイント、システム上の制御)が必要かを理解し、社内SEとしてユーザに提案していく
※自社の業務は自社の要員が一番よく知っている。 - システムの担当はどうしても固定化しがちであるが、担当領域のみに閉じこもらないよう、キャリアパスも考えながらローテーションを考える
※立場を固定化しないことで、コミュニケーションの改善にもつながる - 外部企業にはできない、長期スパンでのITアーキテクチャを考え、実現に向けて動く
※個別の新技術はいくらでも外部から提案があるが、さっと飛びつかずに自社で適用可能かの見極めることを組織知化することも大切
※アーキテクチャ思考、アーキテクチャの維持の重要性を理解する
蛇足であるが、ここのところ、内製化による情報システムの変化追従性の向上が謳われている。内製化のためのツールを適用する際は、適用領域について、上記の1.~3.がより重要になる。また、失われつつあるデータ設計の能力をつけることも必要であり、その能力が失われている場合、一朝一夕でできるものではなく、日頃からの情報システム部門の能力の維持・向上は重要な課題であることを付け加えたい。