昨今のオフィス用PC事情
ここ数年はPCの演算能力の頭打ちが続いており、ホワイトカラーの武器でもあるオフィス用PCやICT機器に目立った変革はない。強いて挙げればスマホやタブレット型端末の導入が一部で進んでいることであろうか。 最近のTVドラマでもタブレットの露出が多くなってきているが、多くのビジネスマンにとってタブレットは補助的なものであって、まだまだノートPCが主力なのではないか。
そもそもデスクトップPCの小型化で、ノートPCと容積差が少なくなってきている。最近のビジネス向けデスクトップPCは液晶ディスプレイの背面に取り付けられるほど小さくなっており、盗難防止用のケンジントンロックを施しているところも多いだろう。東日本大震災から現在まで続く省電力化で、当初はノートPCへの買い替えが推奨されていたが、超小型デスクトップPCでも十分省電力に貢献できるようになった。
PCの性能や仕様の違いが、ビジネスマンの決定的な差でなくなっているのである。
PCの小型化、スマホの大型化
次世代の超小型PCの規格として、IntelはNUCを立ち上げた。他社(BRIX)にも追随の動きがある。従来このようなSmall Form Factor(SFF) と呼ばれる小型PCには、性能を犠牲にした省電力CPUが採用されて性能は一段劣っていたが、Ultra Small Form Factor (USFF、あるいはUltra Compact Form Factor:UCFF) とも呼ばれるNUCは最新の中級程度のCPUが採用されている。最近のCPUのトレンドが性能/電力消費量の効率向上を目指していることから、性能の大幅な向上が見込めない代わりに省電力化が大幅に進んでいる。電力消費量が少ない=熱発生が少ないということで、大掛かりな排熱機構を排除できたことがUSFFの大幅な小型化を可能とした。
もう一つ見逃せないのがIntel Atomプロセッサの飛躍的な性能向上である。 スマホやタブレットに多く採用されている ARMプロセッサに対抗すべくIntelが開発してきたCPUであるが、3700シリーズになり、Windowsがストレスなく使えるようになった。Officeアプリがプリインストールされていることもあり、Windowsタブレットも徐々に広がり始めた。Atom 3700シリーズはオフィスPCはタブレット形態で十分であることを示した。
一方で、スマホやタブレットの性能向上は一昔前のPCのデジャヴのようである。昨年初めにCPUがQuad Coreになって驚いていたら、年末には4コアながら動作周波数が倍に向上していた。性能に余裕が出てきたことで画面の大型化も進んでいる。AppleのiPhoneが採用したことで話題となったretinaディスプレイやフルHD対応も、今年中に発売が予定されている4K対応機によって凌駕されようとしている。さらに、今年にはARMプロセッサが64bit化される見込みであり、性能はPCの領域に達しようとしている。
次世代ビジネスICT
PCとスマホ・タブレットの領域はこれからさらにオーバーラップしていくであろう。そうすると、これまでPCの独壇場だったビジネスICTツールに大きな変革が起こると予想される。
賛否はあるが、業務に必要となるドキュメント作成にキーボード、マウスは当分の間必要不可欠であろう。そうすると、最近流行りのディスプレイがタブレットとして切り離して使える、2in1 PCが業務用PCの形態として有望だ。8型Windowsタブレットが売れているようだが、これでは業務用には画面があまりにも小さい。ディスプレイは大きければ大きいほど作業効率は上がるが、タブレットとして移動して利用することを考えると20インチ程度が適当であろう。重量は社内の移動であれば Ultrabookほどの軽さは必要ない。3kgを切る程度であれば許容範囲内ではないか。以上のことから、大型タブレット端末が企業内ユースとして広まると見るが、どうだろうか。
最近になりモバイルデバイス管理(Mobile Device Management:MDM) が整備されてきて、企業内でスマホ・タブレットの導入の敷居が下がってきている。それにつれて、これまで情報システム部門から敬遠されがちだった個人利用機器の業務利用(Bring Your Own Device:BYOD)にも寛容になってきている。個人のスマホやタブレットを業務に使うことができれば、新たな利用形態が生まれてくる。大小の画面を統合してマルチディスプレイとして利用できたら、このような情報収集をしながら原稿を書く場合などは大変重宝するだろう。
将来のデキるビジネスマンは、自分の使い慣れた機器を、仕事環境に合わせて縦横無尽に使いこなすことが求められる。「仕事が板につく」の板=タブレットとして認知されるようになるのも時間の問題か。