こんなものにもサイバー攻撃!?トイレからクルマ、医療機器まで広がる脅威。

近年、サイバー攻撃の脅威が身近に存在する機器にも広がっている。サイバー攻撃というと、官公庁や大手企業のウェブサイトがダウンしただとか、企業の持つ機密情報や個人情報が漏えいしただとか、そういった企業関係の事例をまず思い浮かべるだろう。しかしながら、その脅威は普通の生活空間にありふれて存在する情報家電や自動車、そして医療機器まで広がりつつある。今回はそれらの恐ろしい脅威について一つずつ紹介したい。

自動車が勝手に急加速!?

恐ろしいことに、サイバー攻撃により自動車の急加速や急ブレーキ、さらにはハンドル操作まで可能だという。当然運転手の意思とは関係なくである。世界のホワイトハッカーが集まる国際会議「DEFCON」で、今年、そのような自動車へのサイバー攻撃に成功したという研究が発表されている。

その研究では、トヨタのプリウスとフォードのエスケープを対象として、操作に成功しており、その際のデータやツール、100ページにも渡る報告書が公開されている。実験は、実際に乗車しながらノートPCを自動車のネットワークに直接接続して行われたということで、遠隔にそのようなことがすぐ可能というわけではない。しかしながら、以前から自動車のBluetoothの脆弱性をついた遠隔接続などが発表されており、組み合わせれば現実に起こりうる恐ろしい問題といえる。

今後自動運転するクルマが登場すれば、ネットワークとの接続は現在より増えることが予想され、そのような脅威がさらに増加すると考えられる。

トイレ中も油断は大敵?

トイレもまたハッキングされ、遠隔操作される可能性がある。個室にこもって油断しているところを、急にフタが閉まってきたり、ビデから水が発射されたりといった嫌がらせができるという。これも今年、トイレのリモコン代わりにスマートフォンを利用するトイレ操作アプリの脆弱性をつくことにより、こういった遠隔操作が可能になるという報告がなされている。

生活家電もネットワークに繋がるものが増えてきており、トイレだけでなく、インターネット接続型テレビへのハッキングや、スマートであるはずのスマートハウスへのハッキングも発表されており、身のまわりの家電に対してもサイバー攻撃の脅威が迫っている。

命を守る医療機器も

セキュリティがしっかりしていそうに思える医療機器もまたサイバー攻撃による遠隔操作の可能性が指摘されている。糖尿病患者にインスリンを持続的に注入するコンピュータ制御の携帯型医療機器であるインスリンポンプや、体内に植え込んで使うペースメーカー・ICD(植え込み型除細動器)について、そのリスクが報告されている。

これらの機器もまた無線機能の脆弱性により、インスリンポンプを停止に追いやったり、投与するインスリンの量を外部から操作し致死量まで増やすことができるという研究が発表されている。ICDに関しては、遠隔から830ボルトの電流を流すことなどに成功したという。

ネットワーク化の進展に伴う脅威の高まり

有線無線問わず身の回りの機器がネットワークに繋がることにより、確実に生活は便利になりつつある。しかし、その反面、サイバー攻撃の脅威は加速度的に高まっている。ここまでいくつかの機器を紹介してきたが、ネットワークに繋がるものであればハッキングできないものはない!と言ってしまえそうなほどの近年のハッキングぶりである。これらの多くはホワイトハッカーにより現在の脆弱性を持つ危うい製品の開発者に対して警鐘を鳴らす目的で発表されてきており、今後の意識の高まりとともに対策が進むことを期待したい。

最後に、変わり種を一つ紹介したい。BBC Newsによると、中国から輸入された電気式アイロンに無線LAN経由でウイルスをまき散らすチップが内蔵されていたという。将来は身の回りの家電が攻撃されるだけでなく、身の回りの家電から攻撃されることもあるかも。