最新ITを取り込むクレジットカード業界

「ピピッ」と支払できる電子マネーと比べるとアナログな印象が強いクレジットカード。
派手さはないが、スマホ、仮想化、クラウド、ソーシャルメディアといった最新ITを着実に取り込んでいる。

スマートフォン~どこでも決済

一般的に決済端末は10万円近くするため、とくに中小の店舗では負担が大きくクレジットカードを扱わない店舗が多い一因となっている。また、端末は据え置き型が基本であり、持ち運べたとしても宅配業者など一部を除き店内の移動が精一杯であった。

こうした課題に対応すべく、スマートフォンの普及と前後してスマートフォンを決済端末にしてしまうサービスが続々登場している。数万円のスマートフォンに無料または数千円のクレジットカードリーダーを取り付けるだけでよいため、高価な端末に二の足を踏んでいた中小や個人商店、あるいは、保険販売員のように外出先で決済を行う業界での採用が見込まれている。

決済のたびに支払う手数料率は5%程度に設定されていたが、2013年5月にスクエアが3%台前半という低率で参入したことから各社は追随して手数料を引き下げた。
今後導入店舗の増加に弾みがつくのは間違いない。

仮想化~カード自体がなくなる

ネットショッピング用に物理的なカードを発行しないサービスもある。
VISAの「VISAバーチャルプリペイドカード」ではカード番号だけが発行される。「プリペイドカード」と名称にあるように、あらかじめ一定の金額がチャージされている(後からチャージすることもできる)。プリペイドの特性上、利用金額に限度があるため、カード番号漏洩等の危険を恐れてネットショッピングを控えている層の利用や、子どもへのお小遣いとしての利用が想定されている。

「バーチャル」ゆえにイメージしにくいこともあり、知名度向上が課題となっているが、VISAバーチャルプリペイドカードの一種であるVプリカはコンビニの店頭やマルチメディア端末で購入できるようにし、利用の敷居を下げる努力をしている。

クラウド&シンクライアント~安く、早く、安全に

クレジットカード決済の場合、店員にカードを渡してから10~20秒待たされ、その後暗証番号入力やサインをするのが通常である(サインレスの場合を除く)。この待ち時間を敬遠して、少額の場合にはクレジットカードを使わないという人も多いだろう。J-Mupsは待ち時間がほぼゼロとなる端末である。

J-Mupsは、端末にはカードを読み込む機能だけを持たせ、決済関連の様々な処理はインターネット上のサーバで処理する仕組みとなっている。サーバ側にはクレジットカード決済以外にも各種電子マネー決済機能を持たせているため、端末側の機能はシンプルなまま、各種電子マネーにも対応している。
このため、端末価格も従来端末よりも安価であるとともに、カードの情報を端末に残さないことからカード番号漏洩のリスクも削減され、加盟店にとってもうれしい端末である。

ソーシャルメディア~「ファン」への還元

ソーシャルメディアを使った宣伝・広報は各社行っているが、米国ではソーシャルメディアを決済そのものに使う動きもある。
AMEXはTwitterで特定のハッシュタグをつけてつぶやくだけでAMEXギフトカードやXbox等が通常より安く購入できるサービスを開始した。ソーシャルメディアでAMEXとつながっている会員、すなわちAMEXを愛用している会員へのお礼ともいえる。

現金市場の取り込みを狙うクレジットカード業界

このように各種サービスが登場してきている背景には、クレジットカード決済の市場を拡大したいという思惑がある。
2010年に開始された貸金業法の総量規制により、クレジットカード業界はキャッシングで収益を上げにくくなったためショッピングでのカード利用により収益を確保する必要に迫られた。しかし、デフレと高齢化の中、日本市場はこのままでは縮小傾向である。一方で、日本は欧米や韓国と比べると「現金社会」であり、現金決済からクレジットカード決済に転換できれば、市場はまだまだあるのだ。

このような観点から上記取り組みを見ると、「スマートフォン」は中小・個人商店、「仮想化」はクレジットカードを使わない(使えない)ネットショッピング利用者層、「クラウド&シンクライアント」は小口決済と、いずれも現在は現金や電子マネーが主流の市場を取り込もうとしていることがわかる。最後の「ソーシャルメディア」は多少毛色が違うがショッピングによる手数料収入という面では変わらない。ソーシャルメディアを通じて加盟店の商品やサービスの販促に協力することで加盟店からプラスアルファの手数料(送客フィー)を獲得しようとしているのだ。

「安心」「信頼」も忘れずに

上記のような事情はあるにせよ、いずれもカード利用者や加盟店にとっては利益のあることばかりであり、我々としては歓迎すべきことである。一点気を付けるとすれば、支払いのほとんどをクレジットカードにしたり、カード会社とソーシャルメディアでつながることにより、カード会社に日常生活が筒抜けになるかもしれないということである。TポイントやPonta等のポイントカードでも言えることだが、「信頼出来る運営会社かどうか」はクレジットカードを選択する上での判断基準のひとつに含めたい。