共有データをビジネスに

現在、IT業界ではビッグデータに関連するビジネスの話題が非常に多い。データが従来よりも非常に増えたことや今まで捨てられていたデータを活用することで、ビジネスにつながるというものだ。しかしながら、新たにデータを取ることはコストも分析ノウハウ蓄積にも時間がかかるのは事実であり、すぐに結果が出るとは限らない。一方で、データは共有されており入手可能であったにもかかわらず、単純に使いづらいからという理由からあまり利用されていなかったものもある。このような共有化されるデータに焦点を当てて動向を整理する。

政府・自治体のデータ

政府や自治体などが公開しているデータは意外と多い。例えば、総務省統計局では各種経済情報や業種別の雇用者数、人口推移など基礎的なデータが公開されている。しかしながら、文書を改ざんできないようにする目的もあり、PDFで提供しているケースも多い。さらには、文字としてコピーできないような設定になっていたりと、一般的に活用しやすいとは言いがたい。また、これまでExcelやWordなど特定アプリケーションに依存したファイルで提供されているケースもあり、利用する側に対応するアプリケーションが必要であった。

そうした中で、公開されているデータを利用しやすくする仕組みを整えるオープンデータと呼ばれる動きがある。総務省、内閣官房、経済産業省、農林水産省、国土交通省など有用なデータを有する省庁がデータの提供形式をRDF形式などシステム上扱いやすい形式にして報告書やデータを各サイトで提供することがオープンデータ流通推進コンソーシアムで検討されている。既に海外では、米国Data.gov英国などの取り組みが進んでいる。政府のデータということで、オープンガバメントデータと呼ばれることもある。

個人が持つデータが共有化される

サービスを提供する事業者が利用規約に基づいて収集された各個人に関するデータについても、事業者内外で共有化できる仕組みが検討されている。個人を特定できる情報の削除や情報の粒度を荒くする、いわゆる個人を匿名化した情報については、個人情報保護法でいう個人と特定できる情報には当たらず、2次利用できるようにするために、経済産業省「IT 融合フォーラム パーソナルデータワーキンググループ」においてガイドラインを企業向けに整備している。

規約で収集する情報や利用方法について明示した場合にも、事業者に対する信用やその利用方法に対する不安から疑問や不満が噴出するケースも後を絶たないのが現状である。そのため、データの利用が難しくなっていたのも事実である。収集した個人情報に近いデータの利用については二の足を踏む大手企業が多く、これまでトラブルになりながらもベンチャ企業を中心に活用事例を積み重ねてきた経緯がある。そうした中で、民間企業が集めて処理された、個人情報に当たらないとされるデータの利活用について一定の枠組みが用意されることで、具体的なビジネス化が進むと考えられる。今後、具体的なデータの利用規約などを整備することが計画されている。

具体的なビジネスへ

政府では、こうした取り組みをITによる成長戦略の中核と位置づけており、省庁横断で利用する情報流通連携基盤共通APIを開発し、実証実験を通じて普及させる計画を進めている。確かに、使いやすい形でデータを提供するだけではビジネスに不十分で、提供側や第三者が利活用を支援することが必要である。オープンデータ等入手可能なデータや用意されているAPIを活用して、グラフにしたり、地図上に表示したりするといった可視化を提供するサービスはいろいろと考えられる。しかしながら、データを収集、可視化するだけでは1回見ておもしろいという評価で終わってしまう可能性がある。ビジネスとしては、あくまで分析した結果があってこそ付加価値が生まれるものである。そのため、可視化することで生じる付加価値が何なのかをよく検討する必要がある。気象庁等の気象観測データを活用して、様々な業界向けに予測情報を提供するウェザーニューズのような新しいビジネスが生まれることに期待したい。

本文中のリンク・関連リンク: