音声コミュニケーション再び

スマートフォンの普及などユーザの利用環境の変化に伴い、ユーザ間のコミュニケーションツールが変わりつつある。mixiやFacebook等の各種SNSやTwitterなどの比較的オープンな形でのコミュニケーションの活用が最近の大きな流れではあるが、LINEなどより親しい関係の中でのコミュニケーションツールも増えている。音声やチャットなどリアルタイムに近いコミュニケーションであり、従来の音声通話や携帯メールと同じ位置づけと考えられる。

モバイルでの音声通話の実態

これまで日本の携帯電話は、基本的に音声通話が従量課金であり、通話無料で利用できる時間帯や同じ通信事業者間、1通話当たりの時間などの制限がある。実際、携帯電話事業では、MoU(Minutes of Usage)という音声通話時間の数値が公表されており、例えば、ドコモでは、2005年には約150分だったが、2008年には138分、2012年には126分と減少している。そうした料金体系や電車内での通話利用マナーの理由から、絵文字を含む文字でのコミュニケーションが中心となっていったと考えられる。

一方で、海外を見ると、米国のように音声通話が基本料金に含まれている場合には、米国FCC(連邦通信委員会)の調査によると、事業者によって異なるが、2009年に約700~1000分という数値となっている。また、欧州では、2011年のGSMAによる調査では平均144分、多い国としてはオーストリアやフィンランドでは約250分になっている。電車の中でも電話をしている人をよく見かけるスペインは147分、イタリアでは128分となっている。
中国の場合には、最大手のChina Mobileの場合には2011年で約517分となっている。

サービス開始当初「ホワイトプラン」でユーザを集めたソフトバンクモバイルはMoUを公開していない。これらの事例を見る限り、通信事業者が設定している通話料金制度の影響が大きいことがわかる。無料になると利用時間が5倍程度に増加といわれている。

OTTサービスの台頭

前述のように音声通話そのものは国内外でやや減少傾向にあるのも事実である。代わりにデータ通信量が増えている、つまりデータ通信を使う時間が増えている分、音声通話の時間が減っている。日本では、音声通話の方が相対的に高かったことから、定額のデータ通信を使うケースが増えた時期が早かったと考えられる。

近年、通信事業者を限定せずに、例えば、GoogleやFacebook、Appleなど通信事業者が定額で提供するデータ通信を使ってサービスを提供する事業者が台頭してきている。これらの事業者は、通信事業者のインフラ上でサービスのみを提供することで大きな利益を得ており、OTT(Over the top)と呼ばれている。例えば、これまで通信事業者が提供してきた従量課金の音声通話サービスと同等の機能を提供するLINEやSkypeなどがあり、大部分を無料でサービスを提供する流れは止まらないだろう。もちろん、通信事業者にとっても各ユーザのデータ通信料が高くなるためメリットがあるが、定額制であることやインフラとして巨額な設備投資が必要なことから、OTT事業者とは利益率の面で大きな差がある。

今後、通信事業者としては、各種サービスを垂直統合してOTTと同様のサービス提供を目指すのか、土管として通信インフラを提供するのか、今後通信事業者としてのビジネスモデル自体の選択を迫られることになる。このあたりについては別の機会に議論したい。

音声活用シーン

ところで、音声通話を利用する機会が減っている中で、通信事業者各社だけではなく、AppleやGoogleなどのCMでも、音声を利用したサービスの活用シーンが使われている。スマートフォンを単なる音声通話やデータ通信に使うだけではなく、新たなサービスとして利用できることを提案している。実際、音声認識技術によりキー操作による入力をなくすことで、歩きながらや運転しながらなど操作がしにくいシーンにおいて新しいユーザインタフェースを提供している。また、コミュニケーションという面では、音声を使うことでより親密なコミュニケーションができるという効果もある。具体的な例を挙げれば、LINEなど新しいサービスはスタンプと呼ばれる絵文字に相当する機能が利用者に受け入れられている面もあるが、文字と音声のコミュニケーションを一緒に扱えるようにした新しい利用方法がうけているのではないだろうか。音声によるSNSのように、文字だけではなく新たなコミュニケーションとして音声を活用したサービスが今後も期待される。

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