情報システム部門こそシステム化しよう ~ 開発保守の業務プロセス改善のススメ ~

「保守」の位置付けの変化

保守業務というと、現行システムを「保って守る」業務のイメージがあるかもしれない。経営環境の変化に素早く対応して厳しい競争を勝ち抜くためには、今まで以上に新しいビジネスやサービスを素早く生み出すことが求められる。システム開発においては、何も無い状態から全く新しいシステムを開発するということは殆ど無く、多くの場合、現行システムをベースに新しい機能を追加・改修する。追加開発を含めた保守業務が新しいビジネスを創造していくという、守りから攻めの保守業務への変革が重要だ。

また、IT投資の6割を占めると言われる追加開発含めた保守業務にかかる工数・コストが削減できれば、その分戦略的な投資に回すことができる。では、守りから攻めの保守業務への変革を実現しつつ、工数・コストを削減するにはどうしたら良いのか。

リバースエンジニアリングツールによる保守業務プロセス改善

保守業務プロセスは、大きく要件調査・影響範囲分析・見積・改修(開発)・テストという流れで作業が行われる。この中で特に要件調査・影響範囲分析に多くの工数を費やすことが多い。現行システムについてどれだけその内容が把握・可視化できているかによって大きくこの工数がぶれる。この現行システムを把握する作業は従来手作業で行っていたものであるが、システム構造やその修正に伴う影響範囲の分析をデータ項目レベルまで可能に出来るリバースエンジニアリングツールを使って機械的に解析することにより、大幅な工数削減及び作業品質向上に貢献できる。

また、システム障害はシステム間連携部分で発生することが多いが、縦割りに個別開発されたシステムの連携情報もツールで可視化できるため、個別システムに留まらない全体を俯瞰した保守業務が行えるメリットは大きい。

リバースエンジニアリング技術による構造分析と影響分析
リバースエンジニアリング技術による構造分析と影響分析

可視化された情報は常に最新化する必要があり、日々アプリケーションの改修が入る状況下では手作業での更新では追いつかない。従来はドキュメントが更新されていない、担当者に聞かないと詳細が分からないといった状況のために保守業務に必要な詳細情報の把握に時間を要し、情報の精度もバラツキがあった。この原因は人手の作業による抜け漏れ、ナレッジの分散(いわゆる属人化)によるものである。

可視化された情報を自動更新する仕組みを取り入れることで変更履歴の管理も含め日々の運用に耐えられる状況になる。リバースエンジニアリングツールを活用し、システム構造情報の一元管理・調査分析方法の標準化ができれば、保守業務に係わる作業の効率化の実現が可能だ。

図2
図2

期待効果

1)保守業務の開発生産性向上 ツールの管理情報と調査・分析機能を使うことにより、保守業務に係わる作業(要件調査・影響範囲分析・見積等)の時間短縮を実現できる。

2)保守業務担当者の人材育成時間の短縮 ツールが自動生成するドキュメントや各種情報を使って作業することにより、新人でも開発担当者に頼ることなくシステム構造の把握や調査ができ、複雑になっているシステムに関する理解を早めることができる。

3)保守業務の作業品質向上 保守業務担当者のスキルレベルを問わず、誰でも同じ手順で同じ結果を出すことができるようになるとともに調査範囲の過不足が無くなり、より正確かつ漏れの無い作業が行えるようになる。

情報システム部門のプレゼンス向上と保守業務の内製化志向の流れ

開発後の保守をベンダに委託することでコスト削減を図ろうとする企業も多い。しかし、発注する企業として主体性を持った作業の役割分担が出来ていないと、ベンダ依存=ブラックボックス化に繋がり、逆にコスト高にもなり、そもそもコストが高いのかどうかも見極められないことにもなりかねない。これを避けるためには、自社のシステムがどのような状態になっているのかを把握できるようにしておくことが重要である。そのためには、保守業務の「内製化」ということを意識せざるを得ない。ここでいう「内製化」とは、従来の手作業・個人のスキルに依存したやり方ではなく、ツールを活用し、システム構造情報の一元管理・調査分析手法の標準化による保守作業の効率化を実現した上での「内製化」を指している。

効率化を実現した上での「内製化」を指している。 保守業務の内製化を図ることで環境変化に対する素早い対応が可能となり、設計や開発の手戻りのリスクが減らせる。システム障害時も情報システム部門が先頭に立って社内関連部署やベンダへの対応指示を出せる。利用部門や経営層への障害状況や復旧見込みの説明を「自分の言葉」で説明できるので迫力が違うし、信頼感も増し、情報システム部門のプレゼンスが向上する。

効率化・合理化に加え、品質向上や顧客満足度向上といった価値を創造する方向に情報システムを使う。そのための戦略的な投資に注力するための工数・コストを捻出することが出来るかどうかが今後のビジネスの競争に勝つカギを握っている。